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民主化デモで結束したライバルクラブのサポーターたち『イスタンブール・ユナイテッド ―サポーター革命―』―東京国際フットボール映画祭上映作品―

2015年2月7日(土)、8日(日)、11日(祝・水)に秋葉原UDXシアターで東京国際フットボール映画祭が開催される。特別上映作品の「イスタンブール・ユナイテッド ―サポーター革命―」(ジャパンプレミア上映)は、犬猿の仲であるはずのガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシュクタシュのサポーターが協力してトルコの民主化デモの先頭に立った様子を描いている。彼らはなぜ手を取り合ったのか?

text by 陣野俊史

相互に敵対心をもつ3大クラブのサポーター

民主化デモで結束したライバルクラブのサポーターたち『イスタンブール・ユナイテッド ―サポーター革命―』―東京国際フットボール映画祭上映作品―
「イスタンブール・ユナイテッド ―サポーター革命―」

 トルコには三つの人気クラブがある。ベジクタシュ、ガラタサライ、フェネルバフチェ。クラブ創設100年を超えているものもある。商業主義のサッカーに反対し、相互に敵対心を持っている。むろん、拮抗するクラブとはどこの国でもそんなものだろう。彼らを撮る映画には、まったくと言っていいほど試合の風景が映らない。選手たちの顔は一度も画面を占領しない。サポにはほぼ男しかいない(後半、女性の姿もちらほら映る程度)。トルコ語がわからない人間には、彼らのチャントの意味がわからない。どうやら「騒ごうぜ、ゴール裏!」とかそんなことらしい。どこも同じ、ということか。ちょっと驚くのは、映画の途中で、3つのクラブのサポーターは、イスタンブールの中では単独行動してはならない、ということが語られるくだりだ。何度も暴力事件が起こっていて、身に迫った危険もあるのだから、複数で行動せよ……。危険きわまりないサポーターの抗争、などと思いながら映画を観ていると、局面が大きく動く。

 2013年6月。トルコで大規模な反政府デモがあった。イスタンブール中心部の公園を取り壊して、ショッピングモールにする、という決定が下ったのだ。この決断をしたのはイスタンブール市長。彼の独断だった。公園に隣接するタクシム広場には人々が集まり、広場に向ってデモ行進をする数は4万を数えた。映画の後半部はこの風景が映し出されている。夜通し音楽を演奏し、踊る人々。楽天的な風景はしかし警察の介入によって一変する。大量の催涙弾が投げ込まれる。タクシム広場を占拠する人々は「ただここにいるだけじゃないか」と怒りをあらわにする。「この国はだんだんひどくなってきている。女性や同性愛者には人権はないの」と、映画の中でインタビューに答えている女性は明言する。政治に対する、純粋な怒りだ。エルドアン首相はテレビで、お好きなようになさい、私たちは決めたことはやりとげる、と挑発とも取れる発言をする。タクシム広場は警察による暴力で混乱を極める……。

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