フットボールチャンネル

リーグ1の“異端児”ビエルサ、突然の辞任はなぜ? フランス流に染まらない傍若無人なエゴイスト

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

クラブに広がる動揺。怒りに震えるサポーターも

 開幕の3日前の8月5日の水曜日、ペレス氏と彼のアシスタント、そしてオーナーのマルガリータ・ルイ・ドレイフュス氏の代理人である弁護士を交えて行なわれたミーティングで契約内容についての変更が伝えられたというのだ。

 それがいかなる内容だったかにはビエルサは触れていないが、「時間をかけて話し合い、煮詰めてきた契約内容を一方的に変更され、もうここでは続けて行けないと、その夜のうちに心を決めた」と、このミーティング後の夜に辞任を決めたことを明かしている。

 しかし「開幕戦への準備には支障をきたしたくなかったから、この試合だけはつつがなく終えたかった」と、カーン戦だけは通常どおりに指揮をとり、試合後に発表、と相成ったのだった。

 ラブルーヌ会長は、「なぜ水曜夜のただ一回のミーティングの結果だけですぐに辞任などという短絡的な決断に至ってしまうのか。非常に面食らっている…」とショックを隠しきれない様子。

リーグ1の“異端児”ビエルサ、突然の辞任はなぜ? フランス流に染まらない傍若無人なエゴイスト
インタビューに応じる主将のマンダンダ【写真:Getty Images】

 開幕戦の試合後に辞任を伝えられた選手達も「プレシーズン中の様子からも、こんなことが起こると予想させるものは一つもなかった。でも、フットボール界ではコントロール不能なことも頻繁に起こりうる。それぞれ自分のやり方があり、これがあの監督のやり方。

 彼の性質はみな知っているし、個人的には驚きはない。ただ監督がいなくなるだけで、選手もスタッフも変わらない。今までと同じように、勝利を追求して前進していくだけだ」(MFアレッサンドリーニ)

「本当に驚いた。彼の振る舞いからはまったくそのような気配はなかったし、みんな今シーズンは彼と一緒に最後まで戦うものと信じていたからね」(主将 GKマンダンダ)と、複雑な心理状態だ。

 ビエルサを敬愛していたサポーターたちの間では、「これは悪夢だ」という内容のツイッターが飛び交い、彼に心酔していたがゆえに「開幕戦の直後にやめるなんて酷すぎる!」と、その仕打ちに怒りを覚える者もいる。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top