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アジア 8年前

「ベトナムのメッシ」が切り拓く、「日本経由ヨーロッパ行き」モデル

text by 宇佐美淳 photo by Jun Usami

HAGLが描く「日本経由ヨーロッパ行き」の夢

 また、一部ではグエン・コン・フオン以上との評価を受けているグエン・トゥアン・アインも若者を中心に絶大な人気を誇り、特に女性からの受けがいい。ドゥック会長がまず初めに海外に移籍させたかったのは、グエン・トゥアン・アインだったとも言われている。彼の場合は、ユース時代から足を酷使してきたため、最近故障しがちなのが気がかりで、会長としては、一刻も早く国外に避難させたかったのではないかと思われる。

 ここまでクラブ側の意向を列挙してきたが、サッカーを取り巻く環境や施設などは、ベトナムと比べて日本が圧倒的に優れていることから、選手本人にとっても日本移籍は大きな魅力がある。サッカー自体のレベルにしても、J2の方が総合的に見てVリーグに勝っている。また、報酬面についても、プロになって間もない若手の場合、日本に移籍した方が確実にアップする。

 HAGLが描いている未来図は、日本経由ヨーロッパ行きだろう。もともとそのようなコンセプトのもとに設立されたのが、HAGLアーセナルJMGアカデミーだ。会長も選手たちも海外志向が非常に強い。故郷から離れたくないという理由で、国内移籍すら嫌う選手が多いベトナムにおいて、これはかなり珍しい考え方と言える。

 アジアの中でもサッカー後進国のベトナムにとって、それは途方もない夢のような話だが、HAGLが生み出したグエン・コン・フオンら「黄金世代」にその夢を託す者は多い。ベトナムだけでなく、タイやインドネシア、シンガポール、カンボジアなど東南アジア各国の次世代スターが日本移籍に前向きな姿勢を見せている。彼らもまた、同じ夢を見ていることだろう。

【了】

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