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セリエA 8年前

ミラン、改革の結果は“失望”。計画性の欠如というあまりにも深い闇【欧州主要クラブ中間査定】

シリーズ:欧州主要クラブ中間査定 text by 編集部 photo by Getty Images

深刻な問題である“計画性”の欠如

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アドリアーノ・ガッリアーニCEO【写真:Getty Images】

 ミランの問題は個々の選手、指揮官といった表面的な要素で語ることのできるレベルを大きく超えている。真の問題といえるのはクラブ経営全体の“計画性の欠如”だ。

 昨季4-3-3と4-2-3-1を併用してセリエAを席巻したミハイロビッチ監督を招聘したものの、シーズン前に指揮官が採用を宣言した布陣は“シルビオ・ベルルスコーニ会長のお気に入り”である4-3-1-2だった。その結果、ステファン・エルシャーラウィ、アレッシオ・チェルチ、スソ、エムバイェ・ニアンらは出場機会を失った。エルシャーラウィに関しては、移籍を決断させる結果となっている。本田にとっては「自らの家」であるトップ下のポジションに復帰する幸運な変更だったのだが…。

 しかしながら、シーズンが進むにつれ4-3-1-2では戦えないと判断したミハイロビッチ監督は、早々に自身が慣れ親しんだ4-3-3へ布陣を変更。その後、攻撃力を強化するために4-4-2を導入するが4-3-1-2から布陣を変更してからの成績は5勝4分1敗と優秀だ。1敗はアウェイのユベントス戦である。

 下位クラブであるカルピ、エラス・ヴェローナに引き分け、コッパ・イタリアでクロトーネに辛勝したことで12月に解任が叫ばれたミハイロビッチ監督だが、布陣変更以降は上述の通り“悪くない”成績を残している。前半戦を終えてのセリエAの順位は5位ローマに勝点4差の6位だ。

 真の問題は指揮官が4-3-1-2という布陣を継続できなかったところにある。振り返れば、この現象はマッシミリアーノ・アッレグリ監督が解任された2013/2014シーズンと全く同じ過ちを繰り返している。

 2012/2013シーズン、ズラタン・イブラヒモビッチ、チアゴ・シウバ、アレッサンドロ・ネスタ、クラレンス・セードルフ、フィリッポ・インザーギ、ジェンナーロ・ガットゥーゾら多くの主力の退団を受けながらも、アッレグリ監督は4-3-3の布陣を採用し、奇跡的なCL出場権確保に成功する。

 しかし、翌夏4-3-1-2の採用をアドリアーノ・ガッリアーニCEOが宣言。結果、チームは深刻な不振に陥り指揮官を解任した。そして、後任であるクラレンス・セードルフ監督は4-3-3を採用している。つまり、クラブの方向性と指揮官の采配、選手の構成が全く一致していないのだ。

 計画性の欠如については、数多くのクラブレジェンドとOBが指摘している。元キャプテンのパオロ・マルディーニ氏、アレッサンドロ・ネスタ氏、ビリー・コスタクルタ氏、ズボニミール・ボバン氏が次々にクラブの強化方針を批判。シルビオ・ベルルスコーニ会長とアドリアーノ・ガッリアーニCEOに対して「クラブ内にサッカーを知る者がいない」と訴えている。

 こうした計画性の欠如が続く限り、どんな選手を獲得しようとも、誰が指揮官を務めようとも、クラブ状況が劇的に好転することはありえないだろう。ミランの問題はあまりにも根深く、闇が深い。

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