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「勇敢であることで、新しいものを生み出せる」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

シリーズ:超攻撃的フットボールの美学 text by 江間慎一郎 photo by Getty Images

勇敢であることに適度な度合いなどない

パコ・ヘメス
16-17シーズンからはグラナダの監督を務めるパコ・ヘメス【写真:Getty Images】

――フットボールの戦術は、もう発明し尽くされたと考えますか?

P そうではないと考えたいね。しかし戦術については、かなり頭を悩ませなくてはならない。現代のフットボール理論は確固たるものであり、どのような事象が起こり得るかがほとんど解明されているからね。

 とはいえ、フットボールは勇敢であることによって、何か新しいものを生み出せる可能性がある。だからこそ私は、ラージョのような規模のチームではあり得ないプレースタイルを実践しているんだ。

――フットボールの革命家になる、という思いはあるのでしょうか?

P 革命家とは考えていない。けれども勇敢さが不足している時代に投げ落とされたという感覚はあるね。自分の考えでは、勇敢であることに適度な度合いなどなく、さらに大胆になれると考えている。私は革命を起こしているのではなく、スモールチームに思い切ったプレーを実践させているだけだ。

 大きなリスクを冒しているとは思うが、フットボールは娯楽であり、人々は楽しい時間を過ごすためにスタジアムを訪れる。彼らは衝動的に自分の席から立つ瞬間を探しているんだよ。人々が目一杯楽しんでスタジアムを後にするならば、それは我々の勝利にほかならない。

――監督という職業は、常に解任の危険にさらされています。勇敢であろうとすることに、迷いは一切ないのでしょうか?

P 気後れしたことなど一切ない。選手たちに対しては、危険な立場に立たされる可能性があるのは私だけであり、ミスを恐れることなく落ち着いてプレーしてくれと伝えている。実際、道端で非難されるのは、クレイジーな采配を振るう私だけのはずだ。解任を免れるためのプレースタイルを実践したとしたら、選手たちは失敗の恐れを感じるだけだろう。

 フットボールには魔法のような解決法が用意されているわけではない。だからこそ自分の考えを貫き通すべきなんだ。自分の職を失うならば、『ああ、そうか』と受け入れるだけだよ。それは恥ずべきことではないし、私から誇りを奪うことには絶対にならない。

(取材・文:江間慎一郎)

【後編へつづく】

『フットボール批評』最新号(issue12)では、パコ・ヘメス監督と元バルセロナのエリック・アビダル氏による対談を掲載しています。こちらもあわせてお楽しみください。

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