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韓国の知られざる兵役義務と免除の仕組み。ソン・フンミンには最後のチャンスと裏技も

text by キム・ドンヒョン photo by Getty Images

パク・チュヨンに見る帰化、永住権。ソン・フンミンの選択は

パクチュヨン
「裏技」で兵役を逃れ非難を浴びたパク・チュヨン【写真:Getty Images】

 そして最後の手は帰化、永住権だ。国籍を変更したり、海外に住みながら永住権獲得したりすることで、兵役を最大限に延期する方法だ。海外居住者は36歳を超えると年齢制限に引っかかるため、自動免除となる。ある種の特恵ともいえる。

 極端な話で現実味を帯びないという指摘があるかも知れないが、実際にこの手を試みた選手がいる。パク・チュヨンだ。上述のように、彼は五輪の銅メダルで兵役を免除している。ならば、どういうことなのか。

 パク・チュヨンはASモナコでプレーしていた際に、モナコ王国から10年間認められる居住権を付与された。モナコ王国は永住権制度がないため、実質的にこの居住権が永住権の性格を帯びる。当時彼の年齢は27歳だったため、37歳まで海外に滞在すると現役軍人としての入隊は当然不可能。もし途中で引退するとしても31歳に帰国したら一般部隊ではなく、先ほどチャン・ハギョンの例で説明した通勤制の部隊に配置される。彼をこの制度の巧妙に利用し、兵役を延期していたのだ。

 もちろん軍隊に行きたくない心情を理解できなくはない。また法的には何の問題もない。しかし、義務を不公平な手で免れようとした彼の行動に国民の反発が起こり、非難が殺到した。結局彼はロンドン五輪メンバー選出記者会見で謝罪。3位決定戦の日韓戦で鮮やかなゴールを決めたが、今でも彼を「モナコ人」と揶揄するサッカーファンも少なくない。

 このような”除隊”の恩恵を受ける選択肢の中でソン・フンミンはどれを選ぶのだろうか。今後、おそらく厄介な問題となるはずだ。キャリアに傷ができない選択をすることを祈るのみだ。

(文:キム・ドンヒョン【城南】)

【了】

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