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スペイン・トップレベルの監督に必要な資質。分業化進む指導の現場、求められる能力の変化

text by 小澤一郎 photo by Getty Images

バルサ新監督・バルベルデ、成功の鍵

トークイベントに登壇した坪井健太郎氏(右)と筆者(左)
トークイベントに登壇した坪井健太郎氏(右)と筆者(左)【写真:編集部】

 スペインのコーチングスクールでは、実際にチームマネージメントの科目があり、「選手の中にどういうグループが生まれやすいか、育成年代で親のコントロールをどうするのか、プレシーズン最初の段階で何を決めるべきか、選手に何を伝えなければいけないか、といった内容を過去の事例を参考に勉強していきます」と坪井氏は説明する。

 例えば、ラ・リーガ1部で活躍する乾貴士はSDエイバルのメンディリバル監督について「全員に同じことを言える監督」と評することが多いが、選手を平等に扱うことのできる監督は欧州でも意外に少ない。

 約2年前、筆者がビルバオでアスレティック・ビルバオのトレーニングを見学した際、エルネスト・バルベルデ監督は試合前であるにも関わらず主力組みではなく控え組みのミニゲームに入って笛を拭き、ワンプレー毎にプレーへの評価を口にしながら控え選手のモチベーションを上げる熱血指導を行っていた。

 そのバルベルデはバルセロナの新監督に就任したわけだが、坪井氏は「メッシを上手く扱えるかどうか。前任のルイス・エンリケも1年目はメッシとバチバチやりあった時期があり、それを乗り越えて初年度に三冠を獲りました。バルベルデ監督がそこをどうマネージメントできるかが最初のハードルです」とビッグクラブ特有のマネージメントが成功の鍵になるとの見方を示した。

 本稿でもう一つ取り上げるのがラ・リーガでプレーする日本人選手についての坪井氏の評価だ。まず1部で2シーズン戦った乾について坪井氏は「ちょうど最終節カンプ・ノウでのバルセロナ戦を観に行っていて、彼が2ゴールを決めた瞬間を見ることができました。率直な感想としては、守備のタスクを不自由なくこなしている印象を受けました」と意外にも守備面での成長を取り上げた。

「すごくナチュラルに守備の仕事、マークを付くべき相手は誰なのか、プレッシングに行く時に自分のマークを捨てて違うところに行ったりするダイナミズムの中でプレッシングの仕事をそつなくなくこなせていたという部分に関して、ものすごく成長したなと感じました。スペインでサッカーをするためにはそれがすごく大事で、まず守備ができない選手は使われません」

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