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柴崎岳、バルサ戦鮮烈ゴラッソの衝撃。ヘタフェの新たなアイドル誕生も負傷で解けた魔法【現地記者の目】

text by ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ photo by Getty Images

負傷の瞬間に魔法は解けてしまった

 バルセロナとの試合には、2つの注目すべき瞬間があった。得点と負傷というコインの裏表だ。ゴールを決めた時には観客席も彼とともに喜び、新たなアイドルの誕生を祝った。

 だが負傷した柴崎がピッチを去ることになると、小さなクラブを応援する厳しさを痛感させられた。痛みを分かち合うかのように誰もが自分の左足に手を添えたが、ピッチを出た彼が戻ってくることはなかった。

 ヘタフェが1-0でリードした状況で、柴崎の栄光の時間は終わりを告げた。試合を終えたチームメートたちがロッカールームに戻るまでに状況は一変し、バルサは柴崎のいないヘタフェを逆転していた。バルサの力を考えれば、いずれにしてもそうなっていたかもしれない。だが54分のあの瞬間に魔法が解けてしまったことは間違いない。

 ピッチに立っている間、柴崎は相手のゴールへ向かう以上に後方へと走ることを強いられたが、その役割を謙虚に果たしていた。

 ポジション的に対峙することになった相手はセルヒオ・ブスケッツ。大柄でハードで嫌な相手だ。スペイン代表の成功に欠かせない存在であり、技術も強さもバランスも兼ね備えている。

 彼と1対1では勝負できなかった柴崎は、2度の空中戦に敗れたあと、ヘタフェがボールを持った際には両サイドへ逃げたり相手の裏のスペースを探したりすることを選んだ。ブスケッツよりも速く動き、うまく長所を出していた。

 よく走っていたが、得点の場面のように、他の選手たちが走る場面で我慢して自分の場所を探すこともあった。ラインの間の密集の少ない場所を求め、素早い思考でゲームを理解していた。

 柴崎は新たなスターとして頭角を現しつつあるが、このヘタフェは全員が苦しみながらも奮闘するチームだ。だからこそ彼もうまく順応することができた。極上のゴールをもたらしたプレーを除けば、バルサ戦では攻撃面でそれほど強く目を引いたわけではない。右サイドから良いカウンターを繰り出した場面があり、あとはその姿を常に確認できたくらいだ。

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