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セリエA 7年前

「正しい瞬間に正しい場所に」。準スター軍団ナポリ、保守的かつ冒険的な崩しの作法【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

謎の監督に率いられたスーパースターのいない準スター軍団

元銀行員で現在はナポリを率いているマウリツィオ・サッリ監督
元銀行員で現在はナポリを率いているマウリツィオ・サッリ監督【写真:Getty Images】

 昨季最多得点だったナポリの試合平均得点は約2.47だった。今季は4試合で15ゴールなので平均3.75である。もちろんまだ4試合やっただけで強い相手とも対戦していないので数字はこれから変わる。ただ、ナポリは得点力の高いチームであり、点を取りに行くプレーをしていて、そのための作法を身につけている。

 流麗なパスワークと破壊力はレアル・マドリー、バルセロナ、パリ・サンジェルマンに匹敵するレベルといっていいかもしれない。ただ、この3チームとナポリでは予算規模がかなり違う。ナポリにロナウド、メッシ、ネイマールのような選手はいない。イグアインはいたがユベントスに引き抜かれ、苦肉の策が昨季のメルテンスのCF起用だった。

 ナポリはビッグクラブではあるけれども、もっと予算規模の大きなクラブは他にもある。やろうと思えば、たぶん他にも“ナポリ”になれるチームはある。その気がないのか、その方法を知らないのかはわからないが。

 監督はマウリツィオ・サッリ、58歳、元銀行員。ナポリを率いて3シーズンめ。元銀行員のキャリアは異色だが、指導者として30年近いキャリアを積んでいるので銀行員だったのは遠い昔の話だ。ほとんどは下部リーグ、5試合や6試合で解任された経験もある。

 6部リーグからスタートした地味な監督が突然脚光を浴び、指揮下のクラブは華々しいプレーで注目を集めている。元銀行員、カルチョの監督、愛読書がチャールズ・ブコウスキー。人柄はよく知らないが、もうこれだけでも興味をそそられる支離滅裂さである。

 謎の監督に率いられたスーパースターのいない準スター軍団、古くからあるサッカーの文法に則った保守系でありながら冒険的。死ななくてもいいが、ナポリは見ておいて損のないチームだと思う。

(文:西部謙司)

【了】

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