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「効率的だからドリブルよりパス」は正解なのか。聖和学園高校、打開力を養うための育成論

text by 加見成司 photo by Shidu Murai

2人、3人抜いてこそ、真のドリブラーといえる

聖和学園ではドリブルにこだわった指導をしながらも、パスを否定しているわけではない
聖和学園ではドリブルにこだわった指導をしながらも、パスを否定しているわけではない【写真:Shidu Murai】

 ただ、ドリブラーと言われる選手ならば、相手を1人交わすだけでなく、2人、3人と交わせなければ真のドリブラーとは言えません。相手がわかっていてもドリブルで仕掛けることができないといけません。

「こいつ、ドリブルでしか来ないな」と思われていても、それでもなお相手に仕掛けて、抜き去ることができないといけません。

 例えば、守備の原理原則というものがあり、こちらがドリブルで突破したいと思ったときは、相手守備陣は基本的にチャレンジ&カバーで周到に守ってきます。

 1対1の状況ができるのならばドリブルで勝負したいところですが、相手が2人で守ってくるとなかなか突破するのは難しくなります。それでも、チャレンジ&カバーで守ってくる相手2人を、一気に抜き去ることができれば、瞬く間にビッグチャンスが到来します。

 つまり、守備の原理原則を打ち破れるドリブラーこそが強いのです。相手からすれば、通常は仕掛けてこない局面でドリブルを仕掛け、2人を抜こうと果敢に向ってくる選手こそが最も嫌な相手であり、そういう勝負ができる選手でなければ上のレベルでは通用しません。それは相手の戦術を上回れる存在であり、サッカーとは本来、そういう選手こそが怖い存在なのではないでしょうか。

 相手の守備にカバーの選手がいるのに、そこにドリブルで向かって行くのは、「無謀」と言われるプレーに属するものでしょう。しかし、その局面でこそ選手にチャレンジさせないと、その先が見えてこないのです。

 相手2人が守備者として対峙したとき、タッチを細かくしながらドリブルで2人の間を縫って交わしていける選手と、そこまでのレベルには到達していない選手がいます。

 それは自分自身の技量を見極めて、適切なプレーを選択すればいいのです。また、その局面で横方向に一本パスを入れることによって、相手のカバーが無くなることもあります。ドリブルをより良い状態で仕掛けることを考えれば、うまくパスを交えつつ、タイミングを見極めてドリブルを仕掛けることを考えなければいけません。横方向へのパスによって相手の守備のスライドがちょっとでも遅れれば、相手の守備の逆も取りやすいでしょうから、パスを一本交えてから1対1を仕掛けるのも良いでしょう。

 そういうパスを交える方法論もあるものの、それでもまったくのお構いなしにガンガンとドリブルを仕掛けることができる選手が私は好きです。試合の中でドリブル突破で2人、3人と交わすことができれば圧倒的に優位に立てます。そういう規格外と言える選手が出てくるのが楽しみなのです。聖和学園もまだまだその域までは達していませんが、そうした選手を輩出するためには、何よりも子どもたちにチャレンジを続けてもらうしかありません。

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