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230億円の値がついた驚異の18歳エムバペ。とびきり速いFWが備える器用さ【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

急加速と急停止。前途洋々、遮るものはなさそう

 エムバペの武器は何といってもスピードである。速いだけでなく緩急を使える。急加速と急停止ができて、その変化における身のこなしが普通ではない。動き自体が対処するDFにとって驚きであり意外性になっている。

 決定力が高い。ゴール前であまり慌てないし、難しいコースも自信満々で狙っていく。パスを引き出すタイミングもよく、そもそも動きが速いのでマークを簡単に外してしまう。

 とびきり速くてシュート力も抜群となれば、ひたすらゴールを目指すプレーになりそうなものだが、エムバペは実はパスも上手い。モナコのときはラダメル・ファルカオ、パリSGにはネイマールとエディソン・カバーニという強烈な先輩がいるので、何でもかんでも自分がシュートというわけにもいかない。もともとパスセンスもあるのだろうが、チームメイトとの関係で覚えたところもあるのではないか。

 モナコ時代はファルカオとの2トップ、パリSGでは3トップの右サイド。エムバペは左サイドのほうが好きなようだが、パリSGの左にはネイマールがいる。右サイドはどうなのかと思っていたが、それも問題なくこなしている。器用なのだ。

 すでにフランス代表にも選出されている。1998年ワールドカップのときには、アンリとダビド・トレゼゲ、ニコラ・アネルカの若手3人のメンバー入りが有力視されながら、アネルカだけが最終メンバーに入らなかった。

 その時点では最も能力があり、アーセナルで活躍もしていたのだが、エメ・ジャケ監督はチームの和を乱す危険があるとみてアネルカを選出しなかったのだ。現在のディディエ・デシャン監督は何の迷いもなくエムバペを選ぶだろう。気むずかしいタイプでも傲慢でもないからだ。前途洋々、遮るものはなさそうにみえる。

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