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長友佑都 6年前

長友佑都、戦術的理由で出番なし。セットプレー対策で優先順位低く。新たなライバル登場

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

激しさ増すポジション争い。“最古参”長友はライバルを励ます

 セットプレーの守備の上でも、インテルは危なげない対応を見せた。ここでもサントンがクリアをしたなどの貢献をしていたわけではなかったのだが、少なくとも身長差を狙われるような穴を作らなかったのは事実。それ以外の守備でも、体を張ってよく守っていた。この試合の勝負所をセットプレーに絞って選手起用を決めた監督の決断は、良い結果を生んだということになる。

 実は今季のデータを見返してみると、スパレッティ監督がそこまで警戒するほどでもなかったのではという数字が浮かび上がる。アタランタのセットプレーからの得点率は32%と昨季と比べて若干低く、逆にセットプレーに強いのはインテルの方だった。25得点中10得点とセットプレーの得点率は40%に及ぶ一方、守備でも1点しか失っていないのである。

 ただ昨季のアタランタの実績から考えれば、やはり油断ならないのも事実。そして試合後の記者会見でスパレッティ監督は「相手が強みとするところを上回りたかった」と語った。今季失点のかさむユベントスは、セットプレーからの失点率が5割に達する。結果を出すために着実なところを抑えるのは、重要なことである。

 スタメン出場の途切れた長友のことを考えれば残念なことにはなったが、インテルでのポジション争いの現実を理解している彼は平然と受け止めていることだろう。60分からアップを命じられるも出場はなく、交代3人目のエデルが出たところでベンチに戻される。その際、試合終了間際にアップに行かされながらも使われず肩を落とすカンセロの背中を軽く叩いて、励ましながら戻っていった。

 セリエAの上位争いは近年になく苛烈で、4位、5位のローマやラツィオも例年なら優勝チーム同様のペースで勝ち点を稼いでいる。落とせない試合が続くなか、結果を出すために現実的に闘う場面は増えてくるだろうし、そのため戦術や選手起用が変わることもあるだろう。それに備えてしっかりと準備をし、チームに貢献できるか。2位に再浮上したインテルの各選手や長友に今後一層求められるのは、そういった部分に違いない。

 試合後、スパレッティ監督はまた地元メディアから「なぜダウベルトではなくサントンだったのか」と振られた。しかし彼は誤魔化さず「これでダウベルトは明日からもっとハードに練習しなければならなくなった」と言い切っていた。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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