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独4部参戦のU-20中国代表、1試合で怒りの帰国。チベット旗が原因で計画は頓挫

text by 編集部 photo by Getty Images

チベット 中国
チベットの旗(左)と中国国旗(右)【写真:Getty Images】

 国策としてサッカーの強化を推し進める中国は、東京五輪出場の可能性を高めるための計画の一環として今月からU-20代表をドイツ4部リーグに参戦させていた。しかし、その計画はたった1試合で終わりを迎えてしまった。

 原因は今月18日に行われたレギオナル・リーガ・サウスウェスト(独4部相当)に所属するTSVショット・マインツとの試合にあった。独『シュピーゲル』など複数メディアが報じている。

 この試合中、チベット独立運動の活動家がスタジアム内でチベットの旗を掲げたことで、U-20中国代表の選手たちが激怒。プレーを拒否して一時的に試合が中断された。その後、問題となった旗を撤去したことで試合は再開されたが、予定されていた残りの15試合は行われない見込みになった。

 ドイツサッカー連盟(DFB)は観客の表現の自由を取り締まることはできないとして、ひとまず年内に予定されていたU-20中国代表と地元クラブとの3試合を中止とした。一方の中国サッカー協会(CFA)も、チベット旗の掲げられたスタジアムで試合はできないとしてU-20中国代表の帰国を26日に発表した。

 今回スタジアムで行動を起こしたのは「チベット・イニシアチブ・ドイツ」という団体で、チベット難民4人、ドイツ人2人の計6人が問題となったチベット旗を掲げたという。試合は中国国内で放映されており、

 もともとは16試合が予定されていたU-20中国代表のドイツ4部参戦だが、今回の一件を受けて3クラブが対戦を拒否したとのこと。英紙『ガーディアン』によれば、U-20中国代表と対戦するクラブにはそれぞれ1万5000ユーロ(約200万円)が支払われていたとされている。

 チベットはもともと一つの独立国だったが、中国が1950年に侵攻して現在も支配を続けている。その中では様々な弾圧や人権侵害が行われているとされ、チベット内では独立運動が活発に。チベット政府は首長のダライ・ラマ14世とともにインドに亡命している。

 一連の問題で国際社会から非難を浴びているが、中国は「国内での分離主義、反中国、テロ活動は許さない」との主張を曲げず、チベット政策において強硬な姿勢を崩していない。今回のサッカースタジアムでのチベット旗掲示問題はしばらく尾を引きそうだ。

【了】

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