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変貌遂げるチェルシー。驚異のパス数、美しいスタイル。それでも優勝はない? その理由は…【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

プレミア1年目の監督がぶつかる壁とは?

ジョルジーニョ
瞬く間に代役不在の柱になったジョルジーニョ。驚異的なパス本数が注目を集めている【写真:Getty Images】

 さて、サッリ就任後およそ3ヶ月にして、彼のイズムが早くも浸透しようとしている。守りは相手ボールホルダーと味方の位置に基づき、各選手がポジショニングを微調整する。3ラインの間隔は非常に狭く、なおかつ中央に集約する傾向がある。

 一方、攻めはボールの即時奪回を起点とするカウンタープレスと、ポゼッションをしている際は3人目の動きがキーポイントか。「濃密な90分」と世界中のメディアが絶賛したプレミアリーグ第7節のリバプール戦でも、サッリのコンセプトがピンチの芽を未然に摘み取り、いくつかのチャンスを創っていた。攻守ともに機能的で、なおかつすべての動きがゴールをイメージしているかのようだ。

 また、7節終了時点でジョルジーニョが記録したパス総数762本はリーグトップであり、チーム総数の5077本もシティに34本差の2位というハイデータだ。1試合平均は725本になり、コンテ体制下の545本を180本も上回る。サッリ就任後およそ3ヶ月にして、これほどまでに劇的な変化を遂げるとは……。カウンター主体からジャイブリッドへ──。今季のチェルシーは、エンターテインメント性豊かなプレーを目指している。

 しかし、リーグタイトル奪還は至難の業だ。今季の的を絞り、2シーズンぶりの覇権に重きを置いたとしても、選手層が薄すぎる。プレミアリーグの場合、レギュラークラスがケガをせず、揃って終盤戦を迎えられる確率は非常に低い。世界一とも称されるプレー強度に疲弊し、コンディションを崩す選手が続出する。シティのジョゼップ・グアルディオラもリバプールのユルゲン・クロップも、その適応に苦しんだ。

「中3日どころか、1週間のインターバルでも体力が回復しない選手がいる。他のリーグでは考えられないことだ」

 2人の名将は口を揃え、プレミアリーグ初年度の恐ろしさ、難しさに舌を巻いていた。

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