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韓国サッカー界を揺るがした「政治」の介入。まさに恥晒し、前代未聞の事件はなぜ起きたのか?

text by キム・ドンヒョン photo by Getty Images, Liberty Korea Party

制止を振り切って場内へ乱入し…

自由韓国党
スタジアム内で遊説を行う自由韓国党のファン・ギョアン党首ら【写真:自由韓国党】

 しかし今回は厚顔無恥な状況が繰り広げられた。複数の慶南FC関係者がゲートで自由韓国党のファン・ギョアン代表らを一度止め、「政治的な活動が禁じられている」と理由を説明するも、彼らは「ふざけるな」「そんな規定がどこにあるといっているんだ」などと暴言を吐き、スタジアムに乱入したという。

 この件が問題となった後の対応も愚かだった。ファン・ギョアン代表は「そんな規定があるとは思ってなかった。努力してきたが、自分たちの足りなさがあらわになった」と発言。謝罪の言葉は一切なかった。

 結局、この事件による被害は慶南FCを直撃した。Kリーグは2日、自由韓国党の場内遊説を阻止できなかった慶南FCに対する懲罰委員会を開き、2000万ウォンの制裁金を決定した。積極的に阻止したことから不幸中の幸い勝ち点10のはく奪はなかったが、政治家の馬鹿げた行動のせいで無駄な罰金を食らってしまったのだ。

 慶南FCはさっそく声明を発表。「クラブの名誉失墜に対し、市民とサポーターに謝罪することを自由韓国党に正式に要請する」とし、「今回の処罰により慶南FCが負担する経済的損失に対して責任ある措置をとることを求める。そうしなければ、あらゆる法的な対応をする予定」と強硬な姿勢を示した。

 自由韓国党はこれに対し「極めて遺憾」としながらも「Kリーグが下した制裁金をどうにか減免してもらいたい」と発表。ただ、罰金に関しては正式な立場を公表してはいない。韓国最大野党に罰金の支払いを肩代わりしてもらうには長く厳しい戦いになるかもしれない。

 さて、ここで選挙の結果が気になる方はいないだろうか。

 3日に行われた補欠選挙では、与党の候補がなんとたったの504票の僅差で勝利している。当初、スタジアムに乱入した野党候補の勝利が予想されたが、番狂わせが起こったのだ。一部では「この乱入事件で選挙の結果が変わった」という見方もある。

 この事件が日本の読者の皆様にどのように映るか。とても恥ずかしい思いもある。だが、スポーツが政治の道具ではないことをしっかりと知らしめた重要なケースでもある。

 一部の無知な政治家たちはまたこのような問題を繰り返すかもしれない。ただこれを機にスポーツ、特にサッカーがどれほど政治と距離を置こうと努力しているかは明らかになっている。Kリーグには、この姿勢をブレずに維持してほしい。

(取材・文:キム・ドンヒョン【韓国】)

【了】

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