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アヤックスが流した涙。運命を変えたトッテナムの采配…若きタレント集団に何が起きたのか

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

運命を変えたジョレンテの投入

フェルナンド・ジョレンテ
ジョレンテの投入が、試合の運命を大きく分けることになった【写真:Getty Images】

 まずは1点を奪いたいトッテナムは後半、やはり動いてきた。ボランチのワニアマを下げ、高さと強さの両方を兼ね備えるフェルナンド・ジョレンテを投入した。そして、マウリシオ・ポチェッティーノ監督のこの采配が運命を大きく分けることになる。

 前線に高さが加わったトッテナムは、サイドからシンプルにクロスを上げ、組み立ての際にもジョレンテにパスを当てそこから素早い展開に持っていくなどスペイン人FWの能力を最大限生かそうと試みた。

 アヤックスからすれば、そこで一つ起点を作られるのは厄介。とはいえジョレンテに対し1人でマークに付くのもかなりのリスクを負うため、同選手に対しては複数人で囲んでボールを奪うという守備で対応した。

 しかし、それでもボールが収まる。そしてそこから飛び出してくるデレ・アリやソン・フンミン、モウラといったあたりもアヤックスの脅威となった。前半とは明らかに違う攻撃を、トッテナムは繰り出せていた。

 相手に流れを持っていかれたアヤックスは、どうにかしてこの状況を打開しようと試みるが最悪の結末が待っていた。55分、カウンターからモウラに得点を許すと、その4分後にもブラジル人FWに点を許し、あっという間に同点に追いつかれてしまったのだ。

 前半のうちに奪った2点のリードが、消えた。それでも2戦合計スコアは3-2。このまま終われば、決勝進出は決まる。その思いがあったのだろうか、試合後、ダレイ・ブリントは「2-2になった後はうまく立て直した」と語っていたそうだが、確かにアヤックスは同点に追いつかれた後、うまく試合をコントロールした。

 ジエクには2度、決定機が訪れた。いずれも決め切ることができなかったが、2点を奪われたからといって全体のテンションが落ちているということはなかった。若いチームゆえ、そうした部分の脆さが出るかに思われたが、そうではなかったのだ。

 そして時間はATに突入。このまま終われば、アヤックスの23年ぶりの決勝進出が決まる。時計の針は、目安の95分に差し掛かろうとしていた。誰もがアヤックスの勝利を確信しただろう。しかし、ドラマは起こる。

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