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ブラジル代表、大勝の要因は? 見せつけた王国の実力、立役者となった二人の戦士とは【コパ・アメリカ】

コパ・アメリカ2019(南米選手権)・グループリーグA第1節、ブラジル代表対ボリビア代表が現地時間14日に行われた。前半は無得点に終わるなど苦戦を強いられたブラジルだったが、後半は一気に3得点を奪うなど優勝候補の実力を存分に見せつけた。その中で、3-0大勝の立役者となったのは一体誰だったのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

ブラジルの両WGがカギ

ブラジル代表
ブラジル代表はボリビア代表に3-0と快勝を収めている【写真:Getty Images】

 華やかなセレモニーとともに幕を開けたコパ・アメリカ2019(南米選手権)。CONMEBOL(南米サッカー連盟)加盟10ヶ国に加え、カタール、日本の招待国2枠を合わせた12ヶ国で争われるこの同大会は、ここから約1ヶ月間行われる予定となっている。

 開幕カードは開催国のブラジルとボリビア。前者は大会直前の親善試合でエースのネイマールが負傷し、コパ・アメリカには帯同させられないといったアクシデントこそあったものの、メンバーは実力者揃いであり本大会の優勝候補ということに変わりはない。対戦相手のボリビア代表は堅い守備が持ち味のチームだが、開幕戦で白星を奪い取るのはもちろん必須だった。

 そんなブラジル代表を率いるチッチ監督はこの試合で、お馴染みの4-3-3を採用。中盤にはカゼミーロ、フェルナンジーニョ、フィリッペ・コウチーニョが並び、注目された前線の組み合わせは右からリシャルリソン、ロベルト・フィルミーノ、ダビド・ネレスが並ぶ形となった。

 注目は両WG。アヤックスで印象的な活躍を見せたネレスはネイマールの代役としてどれほどの力を発揮できるか大いに期待されていた。利き足が左ということもあり、ネイマールより縦に仕掛けてからのクロスといった部分が多くなるはずで、その推進力をどこまで生かせるかがカギとなった。

 またリシャルリソンはスピードがあり、縦への突破にも絶対の自信を持っているが、圧倒的なパワーを生かしペナルティエリア内で勝負できる選手でもある。そのため、相手DFのマークをうまく振り切り、いかにうまくペナルティエリア内に侵入できるのかといった部分はブラジル代表が得点を奪うために必要な要素になっていた。

堅いボリビアの守備。ブラジルが意識したことは?

 迎えたキックオフの瞬間。やはり試合は立ち上がりから予想通りの展開となった。フィールドプレイヤー10人全員が自陣に戻ってブロックを築くボリビア代表に対し、ブラジル代表はしっかりとボールをキープ。主に右サイドからの攻めを中心に行い、攻略を試みた。

 しかし、ゴール前での守備に絶対の自信を持つボリビア代表のディフェンダーを前に、ブラジルの攻撃陣は手を焼く。フィニッシュまであと一歩というところでボールを弾き返され、自陣に押し戻される。セットプレーからいくつかの決定的な場面を作ることはできたものの、それ以外はほとんどそうした状況が変わらなかった。

 ボリビアは1トップのマルセロ・マルティンスにボールを収めてから攻撃の展開を広げようとしたが、カゼミーロとフェルナンジーニョのプレスは素早く、なかなかシュートまで持ち込むことができない。だが、ブラジル代表にもそれほど多くのカウンターを許したわけではなく、やはり守備面では互角以上に渡り合っていたのだ。

 しかし、ブラジル代表もなんとか均衡を破ろうと工夫を見せる。たとえばCBのマルキーニョスがボールを持った際には、カゼミーロが相手トップ下のラウール・カストロを引き付け、フェルナンジーニョが横に開く動きを見せることでインサイドハーフのフェルナンド・サウセドもそれに合わせてスライド。そうすることで生まれるのがトップ下とインサイドハーフの間のパスコースだ。そしてそこに顔を出すのはフィルミーノ。うまくパスを引き出して、ゴールへ向かった。

 背番号20にボールが入った瞬間、右サイドバックのダニエウ・アウベスはすでに高い位置を取っているため、ブラジル代表の右サイドはリシャルリソン、D・アウベス、そしてフィルミーノが寄ることで3人で崩しにかかることができた。ここで数的優位を作ることでブラジルは相手の左サイドを突破する確率がかなり高くなっていたのである。

 しかし、うまくいっていたのはそこまで。最後のクロスやシュートの質は残念ながら低く、ゴールをこじ開けることができない。結局、前半は0-0で終了。スタジアムからはブーイングが鳴り響いた。

印象的な二人のプレー

ブラジル代表
ボリビア戦で印象的なプレーを見せていたリシャルリソン(左)とフィルミーノ(右)【写真:Getty Images】

 とはいえ、ブラジル代表のサイド攻撃が悪かったわけではない。いくつかのビッグチャンスを迎えており、可能性は十分に秘めていた。確かにクロスやシュートの精度、質は高くなかったが、後半でそうしたあたりを意識して修正すれば得点がすぐにでも生まれるのは明らかだった。

 とくに印象的なプレーを見せていたのはフィルミーノとリシャルリソン。この二人はうまくポジションを入れ替えながら相手の守備をかく乱させており、お互いに自身の役割をしっかり意識したうえでプレーすることができていた。

 リシャルリソンの果敢なドリブル突破はボリビア代表にとって厄介なものとなっていたと言えるだろう。引いた相手に対し、パスで崩すのが難しい状況であのような力強い運びを見せることができるのはブラジル代表にとっても大きい。このドリブルがあることでボリビア代表の最終ラインは深い位置まで下げさせられるので、それに伴ってブラジル代表も全体のラインを高く保つことができていた。そのため、セカンドボールの回収でも上回っていたのはブラジルだ。

 フィルミーノは先述した通り、最終ラインからうまくパスを引き出して攻撃の組み立てに関与。相手がコンパクトに守っているためパスコースもかなり限定されていたが、その狭いエリアにも正確にパスを通し、ネレスやリシャルリソン、コウチーニョやフェルナンジーニョをうまく生かすことができていた。背番号20のボールキープ力、そして展開力はやはりピカイチで、この日もボリビアの守備陣は相当手を焼いていた印象だ。

 そして後半開始早々、フィルミーノのそうしたプレーでブラジルに先制点がもたらされる。46分、フィルミーノからリシャルリソンへボールが渡り、同選手がクロス。これがアドリアン・フシノの手に当たったとしてブラジルにPKがもたらされた。これをコウチーニョがしっかり沈め、1-0。ブラジル代表がなんとしても欲しかった1点をもぎ取った。

ボリビアは意気消沈。優勝候補の実力見せる

 これで勢いに乗ったブラジルはさらにその3分後。フィリペ・ルイスからの縦パスを引き出したリシャルリソンが右サイドのフィルミーノへパスを送る。フリーでボールを受け、しっかり中央を確認した同選手はペナルティエリア内へ飛び込んできたコウチーニョ目がけてピンポイントクロス。これをコウチーニョが頭で合わせ、ブラジルが2-0とボリビアを突き放した。

 この時、重要となっていたのはリシャルリソンだ。縦パスをうまく引き出せたことはもちろん、右サイドへ展開した後にマイナス方向へ留まったことにより、相手CBのルイス・アキンを引き付けたのである。もう一人のCBフシノは完全にボールウォッチャーになっていたため、中へ飛び込んでくるコウチーニョに対しブラインドとなる選手はいなかった。データに残るアシストはフィルミーノだが、影のアシストはリシャルリソンだとも言えるだろう。

 さて、2点のビハインドを負ったボリビア代表。もちろん点を奪いに行かなければならないのだが、ブラジル代表相手に繰り出せる効果的な攻めのオプションは持っていなかった。守備も疲労、2点を失ったショックの影響でプレスの強度が弱まり、相手にパスを繋がれ続ける。この時点で、実質勝負は決まっていた。

 一方ブラジルは85分、途中出場のエヴェルトンが強烈なミドルシュートを沈め、3-0。試合はこのまま終了し、ブラジルが開幕戦を白星で飾ることになった。

 前半は苦戦を強いられながら、最終的には3得点を奪うことができるブラジル。やはり本大会の優勝候補の実力は申し分なかった。まだトロフィーまでの道のりは長いが、果たしてこの先どのようなパフォーマンスを披露してくれるのだろうか。

(文:小澤祐作)

【了】

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