ブラジルに現れた新たな大器・エベルトンとは何者か。栄冠への切り札、その武器と恐ろしさとは【コパ・アメリカ】

コパ・アメリカ2019(南米選手権)でベスト4まで辿り着いたブラジル代表。12年ぶりの優勝へ向け勢いは十分だと言えるが、その強さを支えている選手がいる。FWエベルトンだ。グループリーグ初戦のボリビア戦で衝撃的なゴールを決め世界に名を轟かせた23歳は、現在のセレソンにおける新たな顔になりつつある。そんなエベルトン、一体何がすごいのだろうか。(文:小澤祐作)

2019年07月02日(火)10時20分配信

シリーズ:○○とは何者か?
text by 小澤祐作 photo Getty Images
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エベルトンとは?

エベルトン
コパ・アメリカで印象的な活躍を見せているブラジル代表FWエベルトン【写真:Getty Images】

 コパ・アメリカ2019(南米選手権)もいよいよ準決勝に突入する。グループリーグから力を発揮し、見事ベスト4入りを果たしたのはブラジル代表、アルゼンチン代表、チリ代表、ペルー代表だ。現地時間2日にはブラジル対アルゼンチンの好カードが組まれているなど、まだまだここから盛り上がりは増していくだろう。

 中でもセレソンの戦いぶりには注目だ。ネイマールこそ不在だが、ロベルト・フィルミーノ、リシャルリソン、カゼミーロ、チアゴ・シウバ、アリソンら各ポジションに実力者を揃える同国は、ここまで4試合を終え8得点0失点と抜群の安定感を誇っている。準々決勝のパラグアイ戦では苦戦したものの、緊張感漂うPK戦を見事モノにするなど、チームは12年ぶりの優勝へ向け、勢いは十分だと言えるだろう。

 そんなブラジル代表において、ここまでひと際目立った輝きを放っている選手が存在する。セボリーニャ(ポルトガル語で小さな玉ねぎの意)の愛称を持つFWエベルトンだ。

 ブラジル・セアラー州マラカナウ生まれの同選手は、同国の名門であるグレミオに所属する現在23歳のアタッカーだ。2009年にフォルタレーザECの下部組織に入団し、2012年にグレミオの下部組織へ移籍。その2年後に見事トップチーム昇格を果たしており、現在もグレミオのエースとして国内で印象的な活躍を見せ続けている。

 グレミオのトップチーム昇格1年目こそ芽が出なかったが、2年目にはブラジル全国選手権で14試合に出場し、4得点をマーク。以降、徐々に出場試合数を増やしていき、昨シーズンは28試合で10得点3アシストと自己最高の成績を残した。さらに、ロシアワールドカップメンバーには選出されなかったものの、昨年9月の親善試合・アメリカ代表戦で代表デビューを果たすなど、近年メキメキと力を付け始めているのは明らかだ。

 現在バルセロナに所属するアルトゥールら数多くの名手を輩出してきたグレミオ。もちろん、エベルトンもその仲間入りを果たす可能性が高く、すでに欧州のビッグクラブからオファーが届いているという噂も出ている。同クラブの会長を務めるロミド・ボルザン氏はエベルトンについて以前、「エベルトンは南米で最高の選手の一人だ。そしてそれは、世界でも同じくね」と23歳のアタッカーを大絶賛していたという。

コパ・アメリカで発揮されるその武器

 このように、ブラジル国内で着実に評価を高めているエベルトン。そんな同選手の力がさらに加速して発揮されるようになったのが、このコパ・アメリカである。とくに、エベルトンの同大会における“初陣”は衝撃的なものだった。

 ボリビア戦。エベルトンは3トップの一角に入ることはできず、試合をベンチから見つめることになった。出番が訪れたのは2-0とリードしていた81分。そのわずか4分後だった。左サイドでボールを受けたエベルトンは中へ切り込み、右足で強烈なシュートを枠に飛ばす。GKは一歩も動くことができず、ただボールを見送るしかなかった。これが同選手の代表初ゴールである。

 短い出場時間の中で結果を残したエベルトンは続くベネズエラ戦でも途中出場。結果的にはゴールやアシストこと残せなかったが、随所で違いを生んでおり、試合終了間際に生まれたフィリッペ・コウチーニョの幻のゴールをアシストしたのはエベルトン、その人だった。

 グループリーグ最終節のペルー戦ではチッチ監督の信頼を得てスタメンで起用されたエベルトン。もちろんピッチに立つだけで満足せず、1ゴール1アシストという申し分ない成績を収め5-0の快勝に貢献し、同試合のMOMにも選ばれている。途中出場でもスタメン出場でも変わらず結果を残せるあたりはなんとも魅力的だ。

 そんな同選手の武器は「ドリブル」である。今大会でも随所でその特徴は引き出されており、常に相手の脅威となっている。ここまで4試合を終えた時点でドリブル成功数は16回。これはリオネル・メッシの13回などを上回るコパ・アメリカにおけるトップの数字だ。

 エベルトンのドリブルには、ネイマールのような華麗なテクニックを駆使して相手を抜き去る、といった形はない。どちらかと言えば、ベリッベリッと相手を剥がしていくような緩急をうまく使いこなした突破が特徴的である。エデン・アザールやアリエン・ロッベンもこうしたドリブルが非常にうまいが、彼らと同じく一瞬のスピードと体幹の強さを生かした力強い前進がエベルトンにも兼ね備わっている。

 1対1の強さはもちろん、1対2の状況でも簡単に突破してしまうのもエベルトンの恐ろしいところだ。パラグアイ戦では3人を振り切ってガブリエル・ジェズスの決定機を演出するなど、突破する姿勢を見せたらどこまでも突っ切るのが同選手の怖さを引き立てるもう一つの要素となっている。

セレソンの新たな顔に

エベルトン
エベルトンの武器はドリブル。複数人に囲まれてもお構いなしに仕掛けていく【写真:Getty Images】

 エベルトンの武器はドリブルだけではない。カットインした後のシュートの威力、足の振りの早さも相手ディフェンスにとっては厄介なものとなっている。ボリビア戦、ペルー戦でのゴールはいずれも中へ切り込んでからのシュートがキッカケとなっており、コース、威力ともに言うことなしであった。

 足の振りが早ければ、相手が足を出してくる前にシュートを飛ばすことができ、GKからしてもポジショニングを取るタイミングというものが非常に難しくなるのだ。多くの選手の場合、カットインしてから素早く足を振ってシュートを放つと力んでしまい、シュートがゴールから大きく外れるといったこともあるが、エベルトンはそのあたりの抑え方などが非常にうまい。だからこそ威力は保てたまま、しっかりと枠内に飛ばすことができるのだ。

 ピッチ上で実力を証明している“セボリーニャ”はコパ・アメリカ4試合に出場し2得点1アシストをマーク中。このペースでいけば、大会得点王の座も十分狙えるだろう。

 そんなエベルトンにはチームメイトや指揮官も称賛を送らざるを得ないようだ。チッチ監督はペルー戦後の会見で「エベルトンは個性を持っていた」とスタメン起用に応えた同選手をこう評価しており、チームメイトのコウチーニョは練習後の記者会見で「質があり、常にゴールを求め、非常に鋭い。(エベルトンは)世界のどのチームでもプレーできる準備ができていると思う」とコメントしていたという。彼らの言葉からも分かる通り、エベルトンは現在のセレソンにおける新しい顔になりつつあるのだ。まさに優勝への切り札である。

 コパ・アメリカでの活躍を受け、エベルトンには今夏、様々なクラブからオファーが届くだろう。グレミオを離れるかどうかはわからないが、欧州トップレベルでも通用するだけの実力と才能があるのは明らかだ。

 ブラジルの次の相手は宿敵・アルゼンチン代表。エベルトンはこの大一番でも決定的な仕事を果たし、チームを12年ぶりのファイナルへ導けるだろうか。注目である。

(文:小澤祐作)

【了】

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