ミラン、突き付けられたのは厳しい現実。CL権をまた逃す…暗いトンネルはどこまで続くのか【18/19シーズン総括(15)】

2018/19シーズンは、これまでスペインが握っていた欧州の覇権がイングランドへ移る結果で幕を閉じた。タイトル獲得や昨季らかの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、その戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回はミランを振り返る。(文:小澤祐作)

2019年07月25日(Thu)10時20分配信

シリーズ:18/19シーズン総括
text by 小澤祐作 photo Getty Images
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レジェンドたちも帰還

ミラン
2018/19シーズンのセリエAを5位で終え、来季のCL出場権を逃したミラン【写真:Getty Images】

 セリエA優勝18回、チャンピオンズリーグ(CL)優勝7回を誇るイタリアの名門・ミラン。バロンドールを受賞した元ブラジル代表のカカ、世界屈指のDFとして名を馳せたパオロ・マルディーニら過去には数多くのスター選手も在籍した、世界屈指のビッグクラブである。

 そんな輝かしい歴史を持つミランだが、近年の成績はミラニスタたちを落胆させるものとなっている。CLへの出場は2013/14シーズン以来なく、2014/15シーズンはリーグ戦で10位に沈むなど低迷。その後も7位や6位でシーズンを終えることが続き、ヨーロッパリーグ(EL)への出場すらギリギリ、という状況が続いた。

 昨季はヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の下、崩壊寸前にまで陥ったミラン。途中就任となったジェンナーロ・ガットゥーゾ監督の手によってなんとか6位に入ったが、またもCL出場権を逃す失敗の1年となった。昨季開幕前に加入したDFレオナルド・ボヌッチ、FWアンドレ・シウバ、FW二コラ・カリニッチらはわずか1年でチームを去るなど、新加入選手もことごとく不発に終わっている。

 迎えた2018/19シーズン、ミランは実に8名もの選手を新たに加え、再びCL出場権を目指しスタートを切った。さらにクラブのレジェンドでもあったレオナルドがスポーツディレクター(SD)として、パオロ・マルディーニがスポーツ戦略及び開発ディレクターとしてクラブに戻ってきた。2013/14シーズン以来遠ざかっているCL出場へ、チームが一丸となった雰囲気は漂っていた。

 ベースとなるフォーメーションは昨季から引き続き4-3-3。基本的には右サイドのスソが崩しの切り札となり、MFフランク・ケシエやMFジャコモ・ボナヴェントゥーラが2列目から飛び出してゴール前に人数を集める。左WGでの出場が多いハカン・チャルハノールはおおむね自由に動き回り、フィニッシャーというよりは司令塔の役割でチームを牽引。トルコ人MFが空けたスペースは、DFリカルド・ロドリゲスが使う。

 守備時はMFルーカス・ビリアがバランスを取り、最終ラインは基本的に後ろでどっしり構える。ただし、ビリアの脇のスペースを使用された際はCBが飛び出してカバーする。これがミランの基本的な戦い方であった。

負傷者が続出。新加入選手も不発

 開幕節のナポリ戦こそ2-3で落としたミランであったが、その後の戦いぶりはまずまずなものとなった。内容面は十分とは言えなかったが、第2節のローマ戦から第8節のキエーボ戦まで負けなしで、順位は4位にまで上昇。第9節のミラノダービーには敗れたが、その後3連勝を果たすなどすぐにチームは立て直った。

 だが、悲劇はすぐにやってきた。主力として攻撃陣を牽引していたボナヴェントゥーラが11月に負傷。全治は7~8ヶ月とされており、早くも同選手のシーズンは終わってしまった。さらにビリア、チャルハノール、マテオ・ムサッキオ、アレッシオ・ロマニョーリ、マッティア・カルダーラらもほぼ同時期に怪我を負い、ピッチに立つことができず。ガットゥーゾ監督にとって負傷者の続出は最大の誤算となり、チームマネジメントは困難を極めた。

 満足いくスタメンを組むことが難しくなったミランは、12月のリーグ戦6試合をわずか2勝で終える。同月には4試合連続無得点を記録してしまうなど、2018年内のリーグ戦をCL出場圏外の5位で終えてしまった。さらにELではまさかのグループリーグ敗退に終わるなど、サポーターに募ったのは不安ばかりであった。

 追い討ちをかけるように、新加入選手もインパクトを残すことができなかった。イバン・ストリニッチは心臓に問題を抱えていたため、シーズンの序盤戦をほぼ棒に振っている。カルダーラは負傷で起用できず、ディエゴ・ラクサール、サム・カスティジェホ、アレン・ハリロビッチも起爆剤とはならない。唯一、ティエムエ・バカヨコのみがチームの新たなオプションとなることができたが、物足りなさはやはり残った。

 主力に負傷者が続出、さらに新加入選手も揃ってインパクトを残せない。ミランは、シーズン序盤戦にして早くも窮地に追い込まれた。

わずか半年で去った“背番号9”

ゴンサロ・イグアイン
わずか半年でミランを去ったゴンサロ・イグアイン【写真:Getty Images】

 まさかのアクシデントに見舞われたミラン。2018年内の結果だけを見れば、来季のCL出場権はほぼ絶望的とも思われた。だが、この男がある意味ミランの運命を変えたかもしれない。FWゴンサロ・イグアインだ。

 過去にナポリやユベントスでゴールを量産するなどセリエA屈指のストライカーである同選手は、ミランの新たなエースとして大きな期待を寄せられていた。その期待通りリーグ戦では開幕から9試合で5得点とまずまずの成績を残したイグアイン。サポーターからの評価も決して悪くはなかった。

 だが、試合の中でフラストレーションを溜め込んでいたのは明らかであった。1トップで出場することがほとんどだったイグアインの下にボールが収まる回数はわずかで、同選手はたまらずパスを呼び込もうと中盤の位置まで下がってきてしまうことも多かった。すると必然的にゴールから遠ざかってしまい、シュートを放つことができない。毎試合その繰り返しだったため、ストレスは溜まっていくばかりだったのだ。

 そのイライラが爆発したのが第12節、古巣・ユベントスとのゲームであった。0-2のビハインドで迎えた83分、イグアインはDFメディ・ベナティアへのファウルでイエローカードを提示されると、主審に向かって激昂。立て続けに警告を受け、退場処分を喰らったのである。

 その後イグアインは2試合ベンチ入りを禁止され、第15節のトリノ戦でリーグ戦先発復帰を果たしたが、以降3試合で得点を奪うことができず。ついにはレオナルドSDから「責任を負う必要がある」と厳しい言葉を受けるなど、クラブ、サポーターからの信頼はすでに薄れていた。

 結果、イグアインはリーグ戦15試合6得点1アシストという結果を残し、チェルシーへ去った。代わりにミランは1月、ジェノアで大ブレイクを果たしていたFWクシシュトフ・ピョンテクを3500万ユーロ(約44億円)で獲得。結果論にはなってしまうが、これがミランにとっては転機となる。

ミランを救った新加入2人組

クシシュトフ・ピョンテク
シーズン途中にミランへ加入し、瞬く間にミラニスタのハートを掴んだクシシュトフ・ピョンテク【写真:Getty Images】

 ミランの一員となったポーランド人FWは第21節のナポリ戦で新天地デビュー。その時はゴールネットを揺らすことができなかったが、コッパ・イタリア準々決勝のナポリ戦でドッピエッタの活躍を見せると、リーグ戦では第22節のローマ戦から4試合連続で得点をマーク。第27節でのキエーボ戦でもゴールネットを揺らすなど、さっそくミランの新たなエースとなり、ミラニスタのハートを見事に打ち抜いた。

 イグアインとは異なり、ピョンテクは我慢強く最前線に留まることができる。ボールが来なくても果敢な動き出しで相手DFを引き付けるなど、オフ・ザ・ボール時も怖さを出し続けることで、得点を奪う以外の仕事もこなしたのだ。

 何よりピョンテクはボールに対する反応が速い。ミランは攻撃が手詰まり状態になるとサイドへ逃げ、そこからシンプルにクロスを上げるといったことを繰り返すが、背番号19はペナルティエリア内で相手より先にボールに触れることができるため、それまで何も怖くなかったミランの攻めがより効果的になってきたのだ。ポストプレーの技術はイグアインより劣るが、多彩なゴールパターンを持つピョンテクはまさに同クラブにとって運命のストライカーだったと言えるだろう。

 そして、ピョンテクと同じく冬に加入したブラジル代表MFルーカス・パケタもさっそく主力としてピッチに立ち、中盤の新たな顔となった。持ち味のテクニックと巧みなボールコントロールで違いを生みだすなど、それまでミランにはなかった可能性をもたらしたのである。

 冬の移籍市場で約70億円の金額を支払ったミランだが、この補強は成功だったと言えるかもしれない。

闘将が退任。再び新たな冒険へ

 ミランはピョンテクやパケタの活躍もあって、2月~3月にかけて5連勝を果たすなど順位をCL出場圏内の4位にまで回復させた。目標であった欧州最高峰の舞台へ。勢いは十分だった。

 だが、ここでミランの勝負弱さが露呈することになる。第28節のインテルとのミラノダービーを2-3で落とすと、翌29節のサンプドリア戦も0-1で落とし連敗。その後のウディネーゼ戦、ユベントス戦でも勝ち切れず、CL出場権獲得が危機的な状況に陥った。スソ頼みの攻撃にはやはり限界があり、ピョンテクも次第にゴールを奪えなくなっていく。攻守ともにシーズン終盤にきて課題が浮き彫りとなった。

 そして、ついに第34節のトリノ戦を0-2で落とし、順位が7位にまで転落。最後は4連勝でシーズンを締めたが、4位・インテルに勝ち点差「1」及ばず、再びCL出場権を逃す形となった。勝ち点68の5位は近年で最も良い成績となっているが、それでも目標に到達できなかった。ミランは厳しい現実を突きつけられた形となった。

 シーズン終了後、ガットゥーゾは指揮官の座を降り、レオナルドSDも辞任。2019/20シーズンからはマルコ・ジャンパオロが監督に就任することが決定している。ミランは再び、新たな冒険のスタートを切るのだ。

 ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)違反により来季ELへの出場を辞退したミランだが、ポジティブに捉えればリーグ戦に集中できるということ。それがCL出場への近道になるというのは甘い考えだが、果たしてどうなるか。暗いトンネルから、いち早く抜け出したい。

(文:小澤祐作)

【了】

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