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フレンキー・デ・ヨング、そのプレースタイルと能力値、ポジションは? 万能型の逸材が持つ試合を読む“眼”【注目選手分析(2)】

リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドを始め、世界各国には際立った存在感を放つ名手が数多く存在している。そんなワールドクラスのプレイヤーは、一体どのようなスキルを持ち、どのような特徴を発揮しているのか。そのプレースタイルを解説する。第2回はオランダ代表MFのフレンキー・デ・ヨング。(文:編集部)

シリーズ:注目選手分析 text by 編集部 photo by Getty Images

その才能は若き頃から健在

フレンキー・デ・ヨング
今夏にアヤックスからバルセロナへ移籍したMFフレンキー・デ・ヨング【写真:Getty Images】

 2016年の欧州選手権や昨年行われたロシアワールドカップへの出場を逃すなど、ここ数年のオランダ代表は低迷していた。だが、ここ最近は新設されたUEFAネーションズリーグで準優勝を果たすなど、復活への狼煙を上げつつある。中でも著しいのが、若手の成長。今夏ユベントスへ移籍したマタイス・デリフトやアヤックスのドニー・ファン・デ・ベークなど、オランダの未来を担うであろう逸材たちが、確かに力を付け始めているのだ。

 そして、今夏にバルセロナへ移籍したフレンキー・デ・ヨングもオランダの復活を象徴する選手の一人だ。

 1997年5月12日、オランダの南ホラント州アルケルでフレンキー・デ・ヨングは産声を上げた。祖父、父ともに元アマチュアのサッカー選手で、弟ユーリも地元のアマチュアクラブでプレーしていたというサッカー一家に生まれた。当然ながら、フレンキーも幼い頃からフットボールに打ち込み、地元のASKアルケルというチームでそのキャリアをスタートさせている。

 同選手は幼少期から才能の片鱗を発揮し、RKCワールワイクが獲得オファーを出しているなど、そのプレーぶりにはすでに注目が集まっていた。同クラブへの入団は両親が「時期尚早」と判断し断ったものの、8歳でヴィレムIIの下部組織へ加入。同クラブでも順調な日々を送ったデ・ヨングは、確かな成長を果たし、「ヴィレムII史上最高のタレント」と評価されていたという。

 当時のヴィレムII U-15の監督は「ヴィレムIIのWebサイトのインタビューでお気に入りの選手について尋ねられた。ほとんどのコーチはクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシの名を出したが、私はフレンキー・デ・ヨングと答えたよ」と語っていたと言う。ポテンシャルはすでに高かった。

 2015年5月にはトップチームデビューも果たしたフレンキー・デ・ヨング。すでに年代別のオランダ代表にも度々招集を受けるようになるなど、エリート街道をひた走っていた。

 同年にはオランダ屈指の名門・アヤックスへ移籍を果たす。当初はリーグ戦でなかなか出場機会を得ることができなかったデ・ヨングだが、2017/18シーズンにはリーグ戦22試合に出場するなどレギュラーの座を確保。この時、同選手は21歳であったが、世界がその才能に注目するようになったのだ。

 そして、世界中にその名が響き渡ったのが2018/19シーズンだ。アヤックス不動のアンカーとしてリーグ戦やチャンピオンズリーグ(CL)で継続してピッチに立ったデ・ヨングは、20代前半の選手とは思えぬ落ち着きぶりと確かな判断力を生かして大きく躍動。2018年9月にはオランダ代表デビューも果たすなど、自身の価値を証明したのだ。

 そして今年1月、デ・ヨングはバルセロナへの移籍を決断。移籍金の総額は8600万ユーロ(約107億円)とされており、世界中がこのビッグディール成立に沸いたのである。

 シーズン途中にスペインの名門への移籍が決まったデ・ヨングであったが、その後もアヤックスのために汗をかき続け、CLではベスト4進出に、そしてリーグ戦と国内カップ戦の制覇に大きく貢献。そして先月、バルセロナへ正式に加入したのである。

そのプレースタイルは?

フレンキー・デ・ヨング
フレンキー・デ・ヨングの能力値や適性ポジションなど【写真:Getty Images】

 バルセロナが約100億円超の移籍金を支払ってまで手に入れたフレンキー・デ・ヨング。そんな同選手はインサイドハーフ、守備的MF、そしてセンターバックと様々なポジションでプレーできるユーティリティープレイヤーである。

 その中でも中盤底でのアンカーの役割をメインとしているオランダ代表MF。ベテランのような落ち着きぶりとミスの少なさでチームに安定感をもたらすことができる存在で、身体は決して大きくないものの優れた危機察知力を生かしてボールを素早くカットするなど攻守両面でチームにもたらす効果は大きい。敵に囲まれても慌てることなくボールをキープし、簡単に失わないあたりも非常に魅力的だ。

 だが、同選手の最大の武器と言ってもいいのが正確なパススキル。的確にボールを散らしてリズムを変えることができ、鋭い縦パスで相手の守備網を破る能力が非常に高い。視野も広いため味方の動き出しを見逃さず、そこにピンポイントでボールを配給できる。昨季のエールディビジではパス成功率91%を記録。パス成功数2245本は同リーグで2番目に良い数字だ。その中で決定的なパスの本数は47本となっているなど、同選手の特長はデータにもしっかりと反映されている。

 また状況判断にも優れており、前線にスペースがあると見れば果敢にドリブルを仕掛けることもできる。そのドリブルに派手さはないが、常に顔を上げ、周りの状況をしっかり確認しながらボールを運ぶことができるのがデ・ヨングの長所だ。昨季のエールディビジではドリブル回数61回を記録しており、これはチーム内でハキム・ツィエクに次ぐ2番目に多い数字となっていた。

 中盤底からチームに安定感を与え、攻守両面でその輝きを放つことができるデ・ヨング。バルセロナではボランチ、インサイドハーフと様々な起用法が考えられるが、チームにとっては大きな戦力となることは間違いない。試合を読む眼はすでにワールドクラスだ。

 オランダの至宝はスペインの地でどのような活躍を見せるか。22歳の若武者のプレーには要注目である。

(文:編集部)

【了】

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