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マンU、ミス連発の要因とは? 長所と短所が混ざり合い失った勝ち点2

プレミアリーグ第2節、ウォルバーハンプトン対マンチェスター・ユナイテッドが現地時間19日に行われている。試合はアウェイチームが主導権を握りながら進めるものの、ポグバがPKを失敗するなどし、1-1で終了している。このゲームではユナイテッドの長所と短所が同時に浮き彫りになったと言えるだろう。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

マンUが落とした勝ち点2

マンチェスター・ユナイテッド
ユナイテッドは第2節でウルブスと対戦。1-1で試合を終えている【写真:Getty Images】

「勝ち点3を獲得すべき内容だったと感じていたので、残念な気持ちで去ることになる。これは、ポジティブなサインだ。選手たちも喜んでいない。勝ち点1の獲得に終わったのだから、彼らも満足していない。もっとやれたと感じたし、もっと良い結果を残せたと思っている」

 クラブ公式サイトによると、オーレ・グンナー・スールシャール監督は試合後の会見でこのように話していたと言う。「勝ち点3を獲得すべき内容だった」。この言葉が、この試合のすべてを物語っていると言えるだろう。

 プレミアリーグ第1節でチェルシーと激突したマンチェスター・ユナイテッドは、ライバル相手に4-0で大勝。これ以上ない最高のスタートを切った。そして連勝を狙って挑んだ第2節、ユナイテッドは昨季一度も勝利することができなかったウォルバーハンプトンと対戦。アウェイチームにとっては文字通りの難敵である。

 ユナイテッドは立ち上がりからボールをキープし、ウルブス陣内へ侵入。5バックで守備を固める相手に対し、縦に素早い攻撃で攻略を図った。が、シュートまでは持ち込めない。最後の局面でミスが目立ち、GKルイ・パトリシオの脅威となることはなかった。

 それでも、守備面では相手を圧倒。鋭いプレスでカウンターの芽を摘み、ウルブスの攻撃陣を完全に停滞させる。FWラウール・ヒメネスとFWディオゴ・ジョッタは完全に孤立。ユナイテッドの守備は高い強度を保っていた。

 そして27分には待望の瞬間が訪れる。相手の右サイドを崩し中央でパスを交換しながら突破。最後はFWマーカス・ラッシュフォードのスルーパスに抜け出したFWアントニー・マルシャルが左足で豪快にゴールネットを揺らし、ユナイテッドが先制に成功したのである。

 しかし、その後も試合の主導権を握ったユナイテッドであったが、55分。コーナーキックの流れから最後はMFルベン・ネベスに鮮やかなミドルシュートを沈められ、同点に追いつかれた。その後は押し込まれる時間帯が続き、MFポール・ポグバがPKを失敗するなど波に乗り切れなかったユナイテッド。結果1-1で試合を終えている。

新加入選手2人の存在感

 この試合ではユナイテッドの長所と短所がハッキリと浮き彫りになり、1-1の結果に繋がったと言える。まだリーグ戦2試合を終えたばかりとは言え、早くもそのあたりは明確になりつつある。

 まず評価すべきは守備面の強度だ。この日もウルブスの攻撃陣に対し有利な状況を作れていたのは明らかで、中盤での競り合いではほとんど負けていなかった。事実、デュエルの勝利数はウルブスの41回に対しユナイテッドは67回。相手にボールが入った瞬間に素早く身体を寄せに行き、2人以上で囲んでボールを奪うというチームとしての約束事がしっかりとピッチ上で反映されているようにも思えた。

 とくに大きいのが新加入選手の躍動だろう。DFアーロン・ワン=ビサカ、DFハリー・マグワイアの2人は早くもユナイテッドの守備に強みをもたらしている。

 ワン=ビサカはその長い足と身体能力の高さを生かして最後までボールに食らいついていくことができるので、相手としてはやりづらさを覚える。昨季と比べ明らかに簡単に右サイドを突破される回数は少なくなっているようにも思えるが、それはこのイングランド人DFの存在が大きいだろう。事実、ワン=ビサカはこの日、両チーム合わせて最多となる9回ものタックルを成功させている。その貢献度は確かで、ウルブスは左サイドからのシュートアクションが0%というデータも出ている。

 そして身長194cm体重100kgの体躯を誇る巨漢DFマグワイアの存在も大きく、クロスボールに対して明らかに強くなっている。単純にイングランド代表DFの空中戦の強さやフィジカルの強さも、もちろんその部分をサポートしている要素だ。この日もチームトップとなる6回のクリアを記録し、空中戦勝率も86%と最後の壁となり続けていた。

 だがマグワイアの存在と言うのは、クロスを上げる前から際立つ。たとえばこの日のウルブスはセットプレー時、ほとんど大柄DFのいるゾーンにボールを蹴り込むことがなかった。54分のFKの場面ではDFウィリー・ボニーらターゲットとなり得る選手がファーサイドに構えていたが、そこには当然マグワイアもいるので、MFジョアン・モウチーニョが蹴り込んだのはニアサイドだった。さらに55分のCKではショートコーナーを選択。こうしたプレーからも、マグワイアを避けようとしているのは明らかだった。

 結果、ネベスのゴールはこのショートコーナーから生まれたのだが、存在するだけで相手にとって厄介なものとなることができるマグワイアの加入はユナイテッドにとって大きい。この辺りは、同クラブの長所と言っていいだろう。

やや不安が残る攻撃面

ポール・ポグバ
ポグバ以外にプレーメイカー的存在がいないのはユナイテッドにとって痛い【写真:Getty Images】

 DF面が昨季より明らかに強度を増した一方、やや不安なのが攻撃陣。開幕戦で4得点を奪ったとはいえ、この日はポグバのPK含め枠内シュートはわずか2本となっている。シュート数自体も9本と、こちらは物足りなさが残った。

 スールシャール監督が求める縦に素早い攻撃は、当然ながらハマれば面白い。ラッシュフォード、マルシャル、MFジェシー・リンガードらはどちらかと言えばアタッカータイプなので、彼らを起用するのであればこうした攻めを展開するのは必然とも言えるだろう。FWロメル・ルカクが不在となった今、さらにそうした部分を加速させることも可能となるはずだ。

 しかし、速さを求めるがゆえに、味方に付けるパスが少し雑になっているのも事実。もちろん奪ってから鋭く縦パスをつけることができれば、カウンターに繋がりゴールの可能性はグッと高くなる。ユナイテッドの選手はそこを意識しているのだろうが、正確性はまだ不十分と言わざるを得ないだろう。この日も良い形でボールを奪いながらもすぐにロストしてしまうシーンが目立った。

 そして、昨季から引き続き課題となっているのがゲームを組み立てる選手がポグバのみとなっていること。フランス人MFは長短のパスで違いを生みだすことができる選手だが、同選手にそのすべてを押し付けるのは酷。当然ポグバのようなプレイヤーに対してはマークも厳しくなる。そこで本来であればリンガードあたりがその仕事をこなすことができれば文句はないのだが、イングランド人MFにはまだそうした要素は兼ね備わっていない。縦に素早い攻撃。そこに正確性を求めるならば、そうしたあたりの改善も必要となってくるはずだ。

 そして、このような問題が最も浮き彫りとなる可能性が高くなるのが格下との対戦時。ここまでマッチアップしたチェルシーやウルブスはそれなりに力があるチームで、前に出てくる時間帯も多いためユナイテッドがボールを奪って縦に素早く、といった攻撃を見せる機会も少なからずあったが、下位のクラブは後ろにドンと構えて対応してくるはずだ。そうなるとプレーメイカーがポグバのみとなっているユナイテッドは崩すのに苦戦するはずで、当然ながら縦に鋭い攻めと言うのも発揮しづらくなる。ウルブス戦で見せたようなミスの連発などを再び露呈することになれば、当然勝ち点を落とす可能性は高まるだろう。

 次節はクリスタル・パレス戦。スールシャール監督の手腕に期待だ。

(文:小澤祐作)

【了】

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