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リバプール、アーノルドが演出した3得点。アーセナルが施した対策を上回る右SBのクオリティ

プレミアリーグ第3節、リバプール対アーセナルが現地時間24日に行われ、3-1でリバプールが勝利。守備的なゲームプランを遂行したアーセナルに対し、リバプールが対応して3得点をあげた。20歳の右SB、トレント・アレクサンダー=アーノルドが見せた高いクオリティが、試合の雌雄を決した。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

リバプール対策を施したアーセナル

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先制点をアシストしたトレント・アレクサンダー=アーノルド【写真:Getty Images】

 マンチェスター・シティは第2節でトッテナムに引き分け、チェルシーは開幕戦でマンチェスター・ユナイテッドに大敗。そのユナイテッドもウルバーハンプトンから勝ち点3を得ることができず、早くも全勝チームはリバプールとアーセナルのみ。その両チームが第3節で相見えることになった。

 4-3-3のいつもの布陣で臨むリバプールに対して、アーセナルはこの試合で4-3-1-2の布陣を採用。2トップにはピエール=エメリク・オーバメヤンと、移籍後初先発のニコラ・ペペ、トップ下にはダニ・セバージョスを起用し、その後ろにジョセフ・ウィロック、グラニト・ジャカ、マテオ・ゲンドゥージを並べた。

 アーセナルの戦略は明快。ボールを持たれる展開が予想される中で、4人のDFと4人のMFでブロックを敷き、前線に2人のFWを残すことで、ロングカウンターにチャンスを託した。実際、2トップにボールが渡ると、いくつかのチャンスが生まれていた。

 しかし、システムには長所があれば短所もある。4-3-1-2にはサイドハーフが存在しない。そして、ワイドの位置でアーセナルが対峙するのは、リバプールの攻撃の武器でもある両サイドバック、アンドリュー・ロバートソンと、トレント・アレクサンダー=アーノルドだ。

 ワイドに開くリバプールの両サイドバックにボールが渡ると、アーセナルのサイドバックではなくMFがスライドして対応。空いたスペースをトップ下のセバージョスが埋めて守りを固める。

 それに対してリバプールは、中盤を経由して両サイドバックへとサイドチェンジを繰り返して、相手守備陣のほころびを探した。アーノルドがチーム最多の71本、ファビーニョが70本、ロバートソンが69本という数字にもそれは表れている。

起点になったアレクサンダー=アーノルド

 アーノルドは両チーム最多の13本、ロバートソンも10本のクロスをあげるが、リバプールの3トップは高さでは分が悪い。アーセナルはDFラインを低く設定して、それを跳ね返し続けた。

 高さでは劣るリバプールの攻撃陣だが、セットプレーとなると話は別だ。193㎝のフィルジル・ファン・ダイクと、195㎝のジョエル・マティプがここに加わる。そして、先制点はそのセットプレーから。41分、アーノルドの右CKからジョエル・マティプが頭で合わせて先制した。

 後半、アーノルドがゴール前にグラウンダーのパスをつけると、ロベルト・フィルミーノがワンタッチでモハメド・サラーに。すると、前を向いたサラーのユニフォームを対峙したダビド・ルイスが引っ張ってしまう。これには警告とPKが与えられ、49分にサラーはPKを自ら沈めて追加点を決めた。

 さらにアーノルドは、58分にGKアドリアンからのパスを受けると、オーバメヤンからプレスを受けながらもファビーニョへとつなぐ。これをファビーニョがダイレクトで前線に送ると、ボールを受けたサラーがワンタッチでダビド・ルイスと入れ替わり、ドリブルでゴール前へ。最後は左足でシュートを放ち、試合を決定づける3点目をあげた。

 リバプールの3点はいずれもアーノルドが起点となった。昨季リーグ戦で12アシストをマークし、プレミアリーグにおけるDFのアシスト記録を更新した20歳は、この試合でもリバプールの攻撃を演出していた。

MF出身、多彩なキックを持つ

 6歳からリバプールの育成組織でプレーするアーノルドは、育成年代では中盤でプレーしていた。トップチーム昇格と同時にポジションを右サイドバックへと移したが、攻撃での貢献が求められるリバプールのサイドバックでは、その経験が大きなアドバンテージになっている。

 アーセナル戦はリーグ戦58試合目の出場。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝を2度も経験し、ロシアワールドカップではイングランド代表として28年ぶりのベスト4進出に貢献。20歳らしからぬ経験を積んできた右サイドバックは、驚異的なスピードでリバプールに欠かせない存在へと成長を遂げた。

 開幕節のノリッジ戦では、右サイドからクロスをあげてディボック・オリギのゴールをアシスト。アウト回転がかけられたボールはゴールに向かってカーブがかかり、DFもGKも対応することができなかった。さらに、直接FKもこれまでに何度も決めている。

 様々な質のボールを蹴ることができるサイドバックは、欧州を見渡してもそうは見つけることはできない。破壊力抜群のリバプールの攻撃を支えているのは、21歳の誕生日を約1か月後に控えた生え抜きDFである。

(文:加藤健一)

【了】

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