マンチェスター・ユナイテッドの未来は「想像するだけでも恐ろしい」。非常ベルが鳴り響く【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

マンチェスター・ユナイテッドが追い詰められている。今季は開幕6試合を終えて2勝2分け2敗。第6節ではウェストハムに0-2で敗れた上に内容でも最低の出来だった。オーレ・グンナー・スールシャール監督の解雇も現実的となってきたが、彼らに未来はあるのか。(文:粕谷秀樹)

2019年09月27日(Fri)10時10分配信

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断
text by 粕谷秀樹 photo Getty Images
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中心選手が不在も、有効な手は打てず

マンチェスター・ユナイテッド
プレミアリーグ第6節でウェストハムに0-2の完敗を喫したマンチェスター・ユナイテッド【写真:Getty Images】

 前線のスピードを活かしたカウンターなのか。いやいや、チーム全体として縦の意識が薄く、パスの精度も著しく低かった。ポゼッションが基本プランなのか。いやいや、つなげる選手はほとんどいない。アーロン・ワン=ビサカとスコット・マクトミネイはパスミスを繰り返し、頼みのフアン・マタもボールロストを連続した。

 いったい何がしたいのか、まるっきり伝わってこない。0-2……。マンチェスター・ユナイテッドは、成す術なくウェストハムに敗れ去った。

 足首を負傷しているポール・ポグバが使えないのだから、苦戦は覚悟の上だった。

 いい意味でも悪い意味でも、近ごろのユナイテッドは彼しだいである。この、底知れぬポテンシャルを持つMFがやる気になった際は、公式戦8勝2分という快進撃が可能になる。一昨シーズン32節のマンチェスター・ダービーでは、鬼気迫るパフォーマンスで2点のビハインドを逆転した。

 ところが、ポグバのメンタルが低下したり、コンディションを崩したりすると、ユナイテッドは下り坂でも加速する。こうした症状には、オーレ・グンナー・スールシャール監督も気づいていたはずだ。

 攻めたくても攻められない。したがってウェストハム戦は、堅守速攻を基本戦略に用いるべきだった。前線にダニエル・ジェームズを残し、マーカス・ラシュフォードは左サイド。中盤をマクトミネイ、ネマニャ・マティッチ、フレッジで固め、右サイドはジェシー・リンガード。守備重視の4-1-4-1が妥当だった。

 ポグバに加え、アントニー・マルシャルをハムストリング痛で、新星メイソン・グリーンウッドも扁桃炎で欠場する。さらにロメル・ルカクとアレクシス・サンチェスがインテル・ミラノに移籍し、前線の人手不足は明らかだ。当然、中盤か最終ラインの数を増やして対抗するしかない。

ロイ・キーンもモウリーニョも手厳しく…

 それでもスールシャールは、基本フォーメーションと思われる4-2-3-1に、他の選手を当てはめただけだ。クロッサーでもドリブラーでもないアンドレアス・ペレイラをウイングに起用する人選も含め、無策が過ぎる。

 1点のビハインドで後半の半ばを過ぎても、ユナイテッドのギアは上がらなかった。マイボールになってもリアクションが遅く、いや、リアクションすらしない。ボールサイドにいる選手もなんとなく動いているだけで、逆サイドは我関せず。ウェストハムのアンドリー・ヤルモレンコに、バリー・マグァイア、ビクトル・リンデレフ、アシュリー・ヤングが張り付いていることもしばしばあった。ゴールを、チャンスメイクを放棄しているかのようだ。

 また、0-2とされた84分以降も、なぜかマグァイアは最終ラインに位置している。世界屈指のストロングヘッダーを前線に固定し、ロングボールに活路を見いだそうとは考えられなかったのか。マグァイアであれば、ヤングが放つ世界一雑なクロスでも競り勝つ公算が大きい。

 スールシャールは、コーチのミック・フィーラン、マイケル・キャリックは何も指示せず、苦しみもがく選手たちを傍観するだけだった。

「クオリティーも意欲もない個性もない。リーダーはだれなんだ!? この先どこまで落ちぶれるのか、想像するだけでも恐ろしい」(ロイ・キーン)

「現状をふまえると、ウェストハム戦の結果は妥当といえる。スールシャールが建て直せるとは思えない」(ジョゼ・モウリーニョ)

 元キャプテンと前監督も手厳しかった。

 開幕6試合で2勝2分2敗。デイビッド・モイーズ体制下(2013/14シーズン)の2勝1分3敗を辛うじて上まわっている。昨シーズン、チャンピオンズリーグのラウンド16でパリ・サンジェルマンを大逆転した後、公式戦16試合は4勝2分10敗。史上最低といわれた元監督も、16試合で10敗はしていない。

解任倍率は7倍。次節アーセナル戦が正念場

オーレ・グンナー・スールシャール
スールシャール監督の立場も、いよいよ怪しくなってきた【写真:Getty Images】

 非常ベルが鳴っている。

 外様に厳しく、身内に甘いポール・スコールズ、ガリー・ネビルといったOBは、「経験と時間が必要だ」とスールシャールを庇うが、4勝2分10敗は解雇の裏付けにもなるデータだ。10敗のなかにウォルヴァーハンプトン(2回)、エヴァートン、カーディフ、クリスタルパレス、ウェストハムと、勝ってしかるべき相手が5チームもある。

 昨シーズン最終節などは、降格が決まっているカーディフにホームで0-1。歴史に残る大失態だ。直近9試合のアウェーも3分6敗。5得点・18失点。クリーンシートはゼロ。ユナイテッドを牛耳るグレイザー・ファミリーが、厳しい断を下したとしても驚きではない。

 いわゆる格下が相手でも、スールシャールは先手を奪われると浮足立つ。妥当なゲームプランは思いつかず、明らかに落ち着きがなくなる。今シーズンの2勝も先行逃げ切りで、18年12月19日の暫定監督就任以降、逆転勝ちしたケースは一度もない。スールシャールの底が知れた。

 サポートすべきキャリックも監督同様に指導者としてのキャリアは浅く、フィーランは時代後れだ。彼はその昔、サー・アレックス・ファーガソンの隣に座っていたにすぎない。

 マンチェスター・シティやリヴァプールに比べると、首脳陣の質も低い。ポグバのように自尊心が高く、名選手のヒエラルキーに敏感なタイプはコントロールできそうもない。スールシャールとコーチングスタッフは、ポグバに見下されているということだ。

 それでもポグバを軸に据えなければ何もできない。非常ベルの音が大きくなってきた。今後は毎試合が最終テストに位置付けられる。

 次節はホームのアーセナル戦だ。ニコラ・ペペ、アレクサンデル・ラカゼット、ピエール・エメリク=オーバメヤン、ダニ・セバージョスなど、強力なアタッカーを擁している。スールシャールにとっては厳しい相手との厳しいテストになるが、ポグバが間に合いそうもない。マルシャルとグリーンウッドも微妙であり、ラシュフォードはウェストハム戦で左足鼠蹊部に違和感を訴えた。

 アーセナル戦では結果も内容も求められる。改善の余地がみえなかったとしたら、何かを変えなければならない。ボグバはおそらくアンタッチャブルだ。

 スールシャールの立場がいよいよ怪しくなってきた。9月23日現在、イギリス『sky sports』は解雇される倍率を7倍に設定した。やけに現実的な数字である。

(文:粕谷秀樹)

【了】

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