フットボールチャンネル

安部裕葵、バルセロナBで初ゴールも淡々と「やっと決まったという感情は特にない」

text by 編集部 photo by Getty Images

安部裕葵
安部裕葵がバルセロナBで加入後初ゴールを挙げた【写真:Getty Images】

 スペイン2部B(3部相当)の第13節が現地17日に行われ、バルセロナBはコルネジャと3-3で引き分けた。

 この試合にバルセロナBのFW安部裕葵は4-3-3の1トップで先発出場。そして1点リードで迎えた22分に、加入後初ゴールを決めた。背番号12の日本代表はその後、78分までプレーして交代し、チームは後半アディショナルタイムに劇的なPKで同点ゴールを奪って乱打戦を3-3のドローに持ち込んだ。

 記念すべき瞬間は突然にやってきた。中盤で相手を1人かわして顔を上げたMFリキ・プッチが、斜めのランニングで相手ディフェンスの間に走り込んだFWカルラス・ペレスの動きを見てロングパスを供給する。

 すぐ後ろにいた安部は、その動き出しに並走しながらゴール前へ。するとカルラス・ペレスはGKと交錯し、こぼれ球が安部の目の前に転がる。瞬時に反応した20歳の日本人アタッカーは左足で冷静にシュートを流し込んだ。

 今季のリーグ戦10試合目の出場で“やっと”決まった1点かと思いきや、安部は淡々と「何も考えていなかったので、やっと決まったなとか、そういう感情も特にないです」と初ゴールを振り返った。鹿島アントラーズ時代から並外れていた落ち着きは、バルセロナでも変わらなかった。

 リキ・プッチのパスに対する動き出しで「ペレスがオフサイドだと思って、だから僕が行こうとした」と走るコースが若干カルラス・ペレスと被ったようにも見えたが、「副審を見た時にオフサイドはなさそうだったので、後ろについていこうかな」と瞬時にプレーの判断を変えてこぼれ球に備えたことでゴールにつながった。

 常にフラットな目線で戦況を見つめながら、臨機応変に動いて、かつ自分の強みを生かす。開幕当初は左ウィングでの起用がメインだった安部だが、最近では1トップに入ってバルセロナBにひしめく個性の強いアタッカーたちと共存する道を見い出しつつある。

「みんな我が強いので、うまくバランスを取る選手がいないと難しいのかなと思います。スペースを空けてあげたり、そういうのが大事だと思いますし、そういった動きをスタッフは見てくれていて、評価して(試合に)出してくれていると思います。スペースを空ける動きだったり、周りが見えることも僕らしさですし、そういったこともやりながら自分の良さも出せればいいかなと思います」

 先日の親善試合ではトップチームデビューも果たしたが、「Bチームの選手はみんな出ているから、何で騒いでいるのかな? という感じ」と特別な感慨もない。浮かれず騒がず、安部はブレない心とともに名門バルセロナで飛躍のチャンスを掴むために一歩ずつ前に進んでいる。

(取材・文:舩木渉【バルセロナ】)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top