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リバプールを勝利に導く魂の男・ヘンダーソン。記録した申し分ないデータ、その貢献度は絶大

プレミアリーグ第18節の順延分、ウェストハム対リバプールが現地時間29日に行われ、0-2でアウェイチームが勝利している。これでリバプールはリーグ戦15連勝。今季プレミアリーグ全チームから勝利を奪うなど、圧倒的な強さを誇っている。そのチームを支えるあの選手は、この日も素晴らしかった(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

勝利も内容には物足りなさが

リバプール
【写真:Getty Images】

 リバプールは現地時間29日、プレミアリーグ第18節の順延分、ウェストハム戦で2-0の勝利を収めた。これで同チームは今季リーグ戦成績23勝1分。1月末の時点で勝ち点70を稼ぐという、圧倒的な強さを見せつけている。

 しかし、このウェストハム戦におけるリバプールの試合内容がそこまで良くなかったのも事実。結果こそ出ているが、これまでのゲームと比べるとどこか物足りなさを感じた。

 それもそのはず、5バックで守りを固めてくるウェストハムに対し、リバプールはなかなか攻撃のテンポが上がらなかった。ボールを保持する時間は多かったものの、自陣に引いてくるホームチームにスペースを与えてもらえず。FWモハメド・サラーなどの走力が生きるシーンも限られていた。

「とくに前半は少し静かになっていたし、ロボットになっていた」。クラブ公式サイトによると、MFアレックス・オックスレイド=チェンバレンは試合後にこうコメントしていたという。その言葉通り、リバプールは全体の勢いを上げられず、敵陣深い位置に侵入してもフィニッシュまで繋げられない。球際の競り合いでは相手に勝っていたものの、30分過ぎまで点を奪うことができなかった。

 リバプールは最終ラインから相手のCBとWBの間を狙ったロングボールを入れるなどし、攻撃のリズムを変えようと試みたが、それもなかなか効果を発揮しなかった。DFアンドリュー・ロバートソンやDFトレント・アレクサンダー=アーノルドのサイドバックがハーフスペースを突いてゴール前に侵入し、そこからクロスを上げるなどしたシーンではチャンスも作ったが、GKウカシュ・ファビアンスキの牙城はなかなか崩れず。どこか苦戦している印象だった。

 ただ、ウェストハムもそこまで前からプレスに来るわけではなく、ボールを動かし続けていればどこか綻びが生まれる。リバプールはその瞬間を狙っていた。ウェストハムは最終ラインと中盤の間にスペースが空くシーンも何度かあり、DF陣のスライドもそこまで素早くはない。ゴール前での対応も少し曖昧な部分はちらほらあった。

 すると33分、FWロベルト・フィルミーノがペナルティエリア内でボールをキープし、中央にいたFWディボック・オリギへパスを出すと、止めに入ったDFイサ・ディオプがたまらずファウル。獲得したPKをサラーが冷静に決め、リバプールが先制に成功した。

後半立ち上がりの一撃で勝負あり

 前半は1-0のまま終了。リバプールはやや苦戦しながらも、良い形で後半へ向かうことができた。前半のスタッツは支配率73%、シュート数6本、被シュート数1本。本来のリバプールに比べると攻撃時の迫力は半減していたが、DF陣はウェストハムにほとんど仕事を与えなかった。

 後半も、守りのウェストハム、攻めのリバプールという構図に変化はなし。ホームチームは1点ビハインドながらそこまで攻撃に重心を置いている印象はなく、後半の立ち上がりは様子見といった感じだった。

 しかし52分、リバプールがカウンターを開始すると、最後はサラーのパスに抜け出したオックスレイド=チェンバレンがファビアンスキとの1対1を制し、追加点を奪取。なんとか1点ビハインドを保ちながら反撃の機会をうかがっていたウェストハムからすると、痛すぎる失点であった。

 その後、リバプールはMFナビ・ケイタやMFファビーニョを投入するなど、試合を締めにかかる。一方のウェストハムは2点ビハインドという状況であったが、デイビッド・モイーズ監督はMFマヌエル・ランシーニに代えMFパブロ・フォルナルスを入れるのみで、その他の交代カードを切る気配を見せなかった。

 リバプールはファビーニョやMFジョルジニオ・ワイナルドゥムの軽率なパスミスを拾われ、そこからピンチを招くシーンもいくつかあったが、GKアリソンの好セーブも光りなんとか無失点に抑える。攻撃時はサイドに人数を集めて相手のWBとCBをつり出し、空いたスペースにインサイドハーフの選手が飛び込み、そこから相手を揺さぶることで守備の綻びを招かせた。78分にはその形からサラーがポスト直撃のシュートを放っている。

 試合は2-0のまま終了。リバプールはこれでリーグ戦15連勝とし、今季プレミアリーグ無敗を維持する結果に。また、今季プレミアリーグ全チームから勝利を奪うという圧巻の成績を残している。

疲れ知らずの主将

ジョーダン・ヘンダーソン
【写真:Getty Images】

 試合後のスタッツを見てみると、支配率は29%:71%、シュート数7本:13本、パス本数332本:828本となっているなど、リバプールが終始ペースを握る展開となった。データサイト『Who Scored』による選手の平均ポジションを見ても、ウェストハムはFWセバスティアン・ハラー以外の9人が自陣、対してリバプールはDFジョー・ゴメスとDFフィルジル・ファン・ダイクの両CBを残した8人が敵陣にいることがわかる。それほどスピーディーなゲーム展開にはならなかったが、これほど如実に差が出るのも珍しい。

 さてこの試合だが、この男のパフォーマンスに触れないわけにはいかないだろう。リバプールの主将であるMFジョーダン・ヘンダーソンだ。

 アンカーに入った背番号14はこの日、ビルドアップの起点としてパスを周りに供給し、素早く味方のサポートに回ってボールを引き取るなど、幅広いエリアに顔を出しては効果的なプレーを見せている。実際、この日最も多くのパスを記録したのがヘンダーソンでその数は139本。成功率は94%と申し分ない数字を残している。

 さらに守備面での貢献度も絶大だった。とにかく攻→守への切り替えが素早く、ボールホルダーにまったく自由を与えないなど、ハードなプレーを継続した。相手のカウンターの芽を摘んでくれるので、最終ラインの選手もラインを整える時間が得られる。高い位置で奪えば今度は自分たちのカウンターに繋がる。ヘンダーソンの攻守における献身性とサポートは絶大な効果を発揮した。

 タックル成功数チームトップの3回を記録したヘンダーソン。インターセプト2回もチーム1位の成績だ。豊富な運動量を生かし、幅広いエリアに顔を出しては攻守において味方のサポートを怠らないヘンダーソン。同選手にとってはこれが通常運転なのかもしれないが、リバプールという高い強度を誇るチームの中、それも疲労の溜まってくるこの時期に継続してそのようなプレーを発揮できるのは、見事としか言いようがない。

 また、この日はアンカーで先発しながら、後半途中にはインサイドハーフ、さらには右サイドバックもこなしたヘンダーソン。この辺りの柔軟性も、特筆すべき同選手の強みだ。

「僕たちにはヘンドのような人がいる。彼は僕たちを動かし続け、プッシュし続けてくれる」

 リバプールの公式サイトによると、オックスレイド=チェンバレンは試合後にこのようにコメントしていたという。魂の主将・ヘンダーソン。背番号14とともに、リバプールはこれからも勝利を積み重ねることだろう。

(文:小澤祐作)

【了】

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