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マンCに立ちふさがったマンU鉄壁のディフェンス。なぜスターリングは封じられ、アグエロは孤立したのか?

プレミアリーグ第29節、マンチェスター・ユナイテッド対マンチェスター・シティが現地時間8日に行われた。マンチェスター・ダービーを2-0で勝利したユナイテッドは、10シーズンぶりとなるシティ戦ダブル(2勝)を達成。ケビン・デブルイネをケガで欠き、ラヒーム・スターリングとセルヒオ・アグエロが封じられたシティは、公式戦6試合ぶりに無得点に終わっている。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

マンCはシュートがわずか7本

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【写真:Getty Images】

「全体的には、とてもよいプレーをしていた」

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 公式サイトが伝えたペップ・グアルディオラ監督の試合後のコメントは、嘘も強がりもなかったと思う。「試合の入りは悪くなかったし、失点するまではうまくプレーしていた」というベルナルド・シウバの発言も納得できる。

 しかし、182回目のマンチェスター・ダービーは、ホームのマンチェスター・ユナイテッドに軍配が上がった。30分にブルーノ・フェルナンデスのFKに反応したアントニー・マルシアルがボレーシュートを決め、後半終了間際には相手GKのスローイングを奪ったスコット・マクトミネイがダイレクトで無人のゴールへ流し込んだ。

 先週末にカラバオカップを制覇したシティは、ミッドウィークに行われたFAカップ5回戦にも勝利してマンチェスター・ダービーに臨んでいる。その決勝戦で肩を負傷したケビン・デブルイネの復帰は叶わず、前線にはフィル・フォーデンが起用された。

「こういった試合では、小さなミスが大きな違いを生む」とグアルディオラが語った通り、2失点はともにミスや一瞬の隙から生まれた。しかし、試合全体としてはシティが相手陣内でプレーする時間が長かった。ボール保持率は72%を記録し、相手の倍近い943回のボールタッチ数を叩き出している。しかし、アタッキングサードでのアイデアが足りず、シュート数はわずか7本に終わった。

炸裂したマンUのカウンター

 試合を通してユナイテッドが上手く守っていた。シティがビルドアップを試みると、ユナイテッドは2トップが相手のセンターバック、トップ下のフェルナンデスがロドリに寄せる。サイドに展開されると両ウイングバックが持ち場を離れて対応し、フレッジも機を見て高い位置までプレッシャーをかけた。

 エメリック・ラポルトを欠くシティのDFラインはビルドアップに苦しみ、苦し紛れに前線に蹴ることも少なくなかった。ユナイテッドはそのボールを拾うと、間髪入れずに2トップに当てる。フェルナンデスを含めた3人を中心に、手数をかけずに直線的に相手ゴールを襲った。

 ユナイテッドのシュート数は、相手を上回る12本で、そのうち9本は前線3人が記録したものだった。相手DFのギャップでボールを引き出すフェルナンデス、相手DFの裏を取るダニエル・ジェームズ、相手を背負ってタメを作るマルシアルをシティはまったく捕まえることができなかった。

 後半に入ると、徐々にユナイテッドのハイプレスははまらなくなっていった。必然的に自陣に押し込まれる時間が長くなったが、5バックのDFラインを突破されることはほとんどなかった。

 右ウイングバックを務めたアーロン・ワン=ビサカの活躍は光る試合だった。対峙したラヒーム・スターリングにほとんど仕事をさせることなく守り切った。データサイト『Who Scored』によると、この試合でマークしたタックル数は両軍最多の8で、反対にスターリングのボールロスト数は両軍最多の5を記録した。

 1点のビハインドを追うシティは、77分にオレクサンドル・ジンチェンコを下げてバンジャマン・メンディを投入。同じ左サイドバック同士の交代だが、偽サイドバックと呼ばれるセンターレーンにポジションを取るジンチェンコに対して、メンディは大外のレーンにポジションを取った。ワン=ビサカとのマッチアップを避け、スターリングをより中央でプレーさせるための応急処置のようだった。

 同サイトによれば、シティはユナイテッドの9本に対して31本のクロスを入れている。しかし、通ったのはわずかに2本。ユナイテッドは3バックを中心に、中盤のフレッジやネマニャ・マティッチがスペースを的確に埋めて、クロスを跳ね返し続けた。

 スターリングが封じられ、デブルイネも不在。セルヒオ・アグエロという稀代のスコアラーは前線で孤立し、シュートを放つことができずに59分に退いた。終盤はガブリエウ・ジェズスと同時に投入されたリヤド・マフレズにボールを集めたが、決定的な仕事はできなかった。

ビッグ6に対する圧倒的な強さ

 ユナイテッドがシティを相手にリーグ戦でダブル(2勝)を達成したのは、サー・アレックス・ファーガソン時代の2009/10シーズン以来、10年ぶりだった。最近のチームは7勝3分と無敗を継続し、10試合で8回のクリーンシートを達成するなど好調をキープしている。

 ワン=ビサカはサイドでフィジカル能力をいかんなく発揮し、フレッジやルーク・ショーもより推進力を活かせていた。この冬に加わったフェルナンデスはピッチ上の指揮官として振る舞い、味方はそれに生かされている。

 今季のユナイテッドはビッグクラブを相手に結果を残している。ビッグ6相手の対戦成績は7勝3敗2分と、12試合で勝ち点17を獲得している。にもかかわらず5位という順位にいるのは、下位を相手に取りこぼしているからだろう。

 ユナイテッドは今月中にトッテナム、シェフィールドとの試合が控えているが、その後は最終節のレスター戦まで上位陣との対決がない。下位チームに勝ち続けられるかどうかが、ユナイテッドの復権への第一歩になるだろう。

(文:加藤健一)

【了】

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