フットボールチャンネル

アーセナル、マンCのお株を奪う鮮やかなパスワークの理由は…。リバプール戦に続く撃破で見えた勝利を手繰り寄せる戦い方【FA杯】

FAカップ準決勝、アーセナル対マンチェスター・シティが現地時間18日に行われ、2-0で勝利したアーセナルが決勝進出を決めた。リーグ戦でリバプールに勝利した勢いそのままにシティを撃破したアーセナルには、強いチームの勝ち方が備わりつつある。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

華麗なパスワークから先制したのは…

0719Arsenal_getty
【写真:Getty Images】

 アーセナルはマンチェスター・シティに対して公式戦7連敗中だった。リーグ戦再開初戦だった前回対戦では前半のうちに2人の負傷者を出し、後半早々にダビド・ルイスが一発退場。アーセナルは0-3の大敗を喫している。

【今シーズンのアーセナルはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 ただ、リーグ戦で10位に沈むアーセナルにとって、この試合は欧州への望みをつなぐ最後のチャンスだった。一方でリーグ3連覇を逃したシティも、カップトレブル(3冠)に照準を合わせてこのFAカップに臨んでいる。

 試合はシティがボールを保持する展開で始まった。最初の10分はシティのボール保持率が80%を越え、アーセナルはなかなかボールを敵陣に運ぶことができなかった。

 アーセナルはピエール=エメリク・オーバメヤンとニコラ・ペペが下がって5-4-1の陣形で守った。ただ、ボールを自陣で持った際は左CBのキーラン・ティアニーと右WBのエクトル・ベジェリンが対になるように4バックの並びになり、シティのプレッシャーを回避。アーセナルは徐々にボールを持つことができるようになっていった。

 16分に訪れたオーバメヤンの決定機はGKエデルソンに阻まれたが、その3分後にスコアが動いた。自陣からパスをつないで相手のプレッシャーをかいくぐると、センターサークル付近でボールを受けたアレクサンドル・ラカゼットが右サイドに展開。ベジェリンからパスを受けたペペが利き足で上げたインスイングのクロスを、ファーサイドでフリーになったオーバメヤンがショートバウンドで右足に当ててゴールネットを揺らした。

 シティのお株を奪うようなパスワークだった。GKのエミリアーノ・マルティネスを含め、アーセナルは10人の選手が18本のパスをつないで決めている。

マンCは押し込んだが…

 シティのビルドアップは4-2-3-1の陣形で、中盤の底にはケビン・デブルイネとイルカイ・ギュンドアンが並んでいた。しかし、アーセナルはグラニト・ジャカがデブルイネをマンツーマン気味でマークし、前向きでプレーさせなかった。ジャカが高い位置を取るとアーセナルのDFラインの前にはスペースが生まれたが、そこにボールが入ったときはダビド・ルイスやティアニーが前に出て対応している。

 しかし、先制された後はデブルイネが一列上がり、ダビド・シルバとインサイドハーフで並ぶ形に変わった。すると、2人に対面するジャカとダニ・セバジョスは低い位置に押し込まれ、再びシティが敵陣でプレーできるようになった。

 アーセナルは身体を張って水際で失点を防いだが、後半に入ってもその展開が続いた。上下動を繰り返すペペとオーバメヤンの足も徐々に止まり、観客のいないウェンブリー・スタジアムには、ミケル・アルテタ監督がフランス語でペペに守備を促す声が響いた。

 シティが攻勢を強める中で、スコアを動かしたのはアーセナルだった。相手のCKを防ぐと、左サイドに流れたペペがティアニーにボールを戻す。ティアニーはダイレクトで縦にロブパスを送ると、オーバメヤンがDFラインを突破。GKの足下を通すシュートで追加点を決めている。

アーセナルに備わりつつある勝ち方

 リードを2点に広げたアーセナルはペペを下げてジョー・ウィロックを投入。78分にはラカゼットに代えてルーカス・トレイラを入れ、ウィロックを最前線に上げる5-3-2の陣形に変えている。88分にはセバジョスを下げてセアド・コラシナツをサイドハーフに入れ、再び5-4-1の形に戻して守りを固めた。

 11人全員がディフェンシブサードに戻って守備をするアーセナルから、シティは最後までゴールを奪えなかった。11本のCKを獲得し、16本のシュートを放ちながら、5本のシュートが相手DFのブロックに阻まれている。枠内に飛ばしたシュートは54分のリャド・マフレズの1本だけだった。

 アーセナルはビッグ6を苦手としていた。これまでであれば、真っ向から立ち向かって木っ端微塵にやられるか、守りを固めても簡単に失点を許していた。しかし、リバプール戦に続いてシティを撃破。この2試合はこれまでのアーセナルとはまったく違う戦いぶりだった。

 相手の激しいプレッシングにひるまずに自陣からパスをつなぎ、リードを奪えば身体を張って強力な攻撃陣を封じた。少しずつではあるが、強豪と呼ぶに相応しい勝利を手繰り寄せる戦い方が備わりつつある。そう思わせる試合だった。

(文:加藤健一)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top