イブラヒモビッチが開く名門復活への扉。まさに唯一無二の存在、ミランを変えた男の破壊力

セリエA第35節、サッスオーロ対ミランが現地時間21日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利している。ミランはこれでリーグ再開後9試合負けなし。来季のヨーロッパリーグ出場権獲得を決めた。驚異的なペースで勝ち点と得点を積み上げるミランであるが、やはりあの男の存在が大きいと言わざるを得ない。(文:小澤祐作)

2020年07月22日(Wed)11時26分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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好調ミラン3連勝。EL行きへ

ミラン
【写真:Getty Images】

 ミランが信じられないほど好調だ。セリエA再開後は負けなしを維持しており、レッチェ戦からボローニャ戦までの8試合すべてで複数得点をマークしている。前半戦には考えられなかった強さを、世界中に見せつけていると言えるだろう。

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 そして、現地時間21日に行われたセリエA第35節のサッスオーロ戦でも、ミランはその好調ぶりを存分にアピールしている。

 敵地に乗り込んだミランは立ち上がりからサッスオーロにボールを支配されるものの、カウンターからチャンスをしっかりと作っていた。すると、19分という早い時間にFWズラタン・イブラヒモビッチがゴール。MFハカン・チャルハノールからのクロスをダイビングヘッドで押し込んでの先制弾だった。

 ミランは1点をリードしたことで全体的に落ち着きが見られ、引き続サッスオーロにボールを握られながらも守備が大きく崩されることはなかった。前半のうちにDFアンドレア・コンティとDFアレッシオ・ロマニョーリが負傷交代を余儀なくされたのは誤算だったが、代わりに投入されたDFダビデ・カラブリアとDFマッテオ・ガッビアもうまく試合に入っていた印象だ。

 前半終了間際に不運な形でサッスオーロにPKを献上し、これをFWフランチェスコ・カプートに沈められたものの、ミランはATに再びイブラヒモビッチが得点。前半のうちに勝ち越しに成功して1点リードのまま後半へ向かっている。

 サッスオーロは前半のうちにMFメフディ・ブラビアが退場。その影響もあってか、後半はかなりペースが落ちた印象が強かった。そうなると、リードしているミランも焦る必要がないので、試合はやや落ち着いた展開に。もちろんお互いにゴール前まで迫る場面は何度かあったが、追加点は生まれぬまま1-2で終了のホイッスルを迎えている。

 これでリーグ3連勝としたミランは今季の7位以上が確定。すでに暫定7位のナポリがコッパ・イタリアを制しヨーロッパリーグ(EL)出場権を獲得しているため、ミランも来季のEL行きが確定することとなった。本来の目標であるチャンピオンズリーグ(CL)出場権に届かなかったとはいえ、前半戦の出来を考えれば十分成功と言えるはずだ。

整備された守備

 ミランはこの日も複数得点を挙げている。これで、リーグ再開後9試合で27得点。1試合平均3点をたたき出していることになる。前半戦からは想像もできないほどの爆発力だ。

 だが、守備陣も奮闘している。この日もユベントスから3点を奪ったサッスオーロをPKによる1点に抑えこんでおり、これでリーグ戦3試合連続の最少失点ということになった。驚異的なペースで得点と勝ち点を積み上げているミランであるが、その中において彼らの貢献度は見逃せないポイントと言えるはずだ。

 ミランの守備はステファノ・ピオーリ監督によってうまく整備された印象が強い。最前線のイブラヒモビッチを残した全員が高い守備意識を持っているのはピッチ上でのアクションを見ても明らかで、実際このサッスオーロ戦でもサイドハーフのFWアンテ・レビッチが最終ラインまで下がってボールを刈り取るシーンも見られた。

 中でも中盤の強度は格段に増した。ダブルボランチのMFイスマエル・ベナセルとMFフランク・ケシエの関係性は試合を重ねるごとに着実に良くなっており、ピンチの芽を早い段階で摘み取ることがリーグ再開後はとくに目立っている。彼らの運動量とハードワークの質は確かなものがあると言えるだろう。

 12日に行われたセリエA第32節のナポリ戦では、幅広いエリアをカバーするケシエの空けたスペースを突かれ、ベナセルのサポートが間に合う前に展開されて苦戦を強いられたミラン。しかし、このサッスオーロ戦でピオーリ監督はそうした部分をうまく改善してきた。

 この日もケシエのいないスペースを使われることは何度かあったが、そこをカバーしたのはCBだった。ナポリ戦では思い切って前に出られず深い位置で守ることに徹したが、今度はリスクを冒してでも積極的にプレッシャー。時間をかけさせて守備の人数を増やし、バックパス、あるいはサイドへとボールを追いやった。

 23分の場面が良い例だ。CBのパスコースを切りやや前に出ていたケシエの背後を使おうとカプートが下がってくる。そこに縦パスが通ると、DFシモン・ケアーが猛烈なプレッシャーを与え、ケシエと挟み込んで潰した。結果的にこれはファウルとなってしまったが、ナポリ戦とは明らかに守備の形が変わっていたのは確かだった。ピオーリ監督の対応力は見事と言うべきだろう。

戦術イブラヒモビッチの脅威

ズラタン・イブラヒモビッチ
【写真:Getty Images】

 ここからは個人パフォーマンスに目を向けたい。サッスオーロ戦のヒーローはもちろんイブラヒモビッチだろう。前半のうちに2ゴールを挙げてミランを3連勝へと導いている。

 1点目は見事なダイビングヘッド。クロスの質も良かったが、合わせる技術もまた高かった。そして2点目は、その大柄な体格からは想像できない柔らかいタッチでGKアンドレア・コンシーリをかわして冷静にゴールゲット。レビッチの効果的なランニングを無駄にせず、絶妙なタイミングでボールを引き出した時点で勝負あった。

 その他の場面でもイブラヒモビッチは何度かコンシーリを脅かしている。ハットトリックの可能性も十分あったと言えるだろう。

『戦術イブラヒモビッチ』。元スウェーデン代表FW加入後のミランのスタイルを表すならば、これで十分だろう。言い方を悪くすれば、イブラヒモビッチ次第で結果が変わる。ものすごく単純なものだ。

 ただ、リーグ再開後はこの戦術イブラヒモビッチの破壊力が凄まじい。イブラヒモビッチにボールを収め、そこから攻撃を展開。やり方は非常にシンプルで、リーグ再開後も大きく変わった部分はないが、相手にとって最も苦労するのはイブラヒモビッチを止められないこと。これまで何度もミランのゲームを見てきたが、背番号21個人を封じることができたチームはなかったと記憶している。だからこそ、ナポリなどはイブラヒモビッチの周りの選手に対する守備を厚くしたのである。ただ、それも大きな賭けであったことは事実だ。

 イブラヒモビッチを封じれば攻撃は止まる。どのチームもそんなことは十分に理解している。それでも止められない。ズラタン・イブラヒモビッチという男は、まさに唯一無二の存在なのだ。そして最前線で発揮する圧倒的なカリスマ性。間違いなく、ミランを大きく変えたと言えるだろう。

 サッスオーロ戦後、ミランはピオーリ監督との契約を延長したことを発表している。新監督就任が噂されたラルフ・ラングニックにはテクニカルディレクターとしてのオファーを提示したようだが、これは断られた模様。よって、ラングニックのミラン上陸は消滅したことになる。

 選手からの信頼も厚いというピオーリ監督の契約延長は朗報だ。結果も出ているし、妥当な判断ではないか。また、これでイブラヒモビッチ残留の可能性も高まったと言えるだろう。名門復活への扉は開かれたのかもしれない。

(文:小澤祐作)

【了】

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