ティエリ・アンリの驚異的能力とは? データ算出を凌駕する得点力、現代のプレミアに置き換えると…【アーセナル伝説の2トップ(2)】

アーセナルを特集した9/7発売『フットボール批評issue29』から、アーセナル史上最高の2トップに最新データで迫った結城康平氏の「ティエリ・アンリ&デニス・ベルカンプ」を、発売に先駆けて一部抜粋して全3回で公開する。今回は第2回。(文:結城康平)

2020年08月28日(Fri)10時15分配信

text by 結城康平 photo Getty Images
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データ算出のゴール期待値を大きく上回る能力

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【写真:Getty Images】

 2003/04シーズン、ティエリ・アンリのゴール期待値は0・54。現在のプレミアリーグにおいても上位となる期待値だ。彼を明らかに上回っているのは、ガブリエウ・ジェズス(約0・85)とセルヒオ・アグエロ(約0・65)。

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 マンチェスター・シティのストライカー2人は、ゴール前でのポジショニングに優れている。多くの優秀なパサーからのボールを待つ彼らは、突出した数値を示している。デ・ブライネやマフレズは高精度のスルーパスやグラウンダークロスで好機を創出する技術に優れており、マンチェスター・シティはクラブとしてもデザインされた仕掛けを得意としている。特にグラウンダーのクロスにファーサイドで合わせていく崩しは、グアルディオラがチームに授けた武器でもある。

 このゴール期待値は選手のシュート位置や角度などの情報を分析して数値化した指標であり、運に左右されないアタッカーの実力を評価することを目指すものだ。どれだけゴールの確率が高い状況でシュートを撃てているかというデータは、実際のゴール数と必ずしも一致しない。フットボールが偶然に左右されるスポーツであることを考えれば、1シーズン限定でゴールを量産するストライカーも少なくない。

 そういった選手とコンスタントに得点機を生み出せる実力者を区別することで、トップクラブのスカウトは安定してゴールを決められる選手を発見しようとしている。実際にゴール期待値を活用したスカウティングが注目されているのは、運という要素を可能な限り排除した選手の評価が可能になるからだ。

 彼らに続く第二グループとなるのが、モハメド・サラー(リヴァプール)、サディオ・マネ(リヴァプール)、ジェイミー・ヴァーディ(レスター・シティ)、ラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)、カルバート・ルーウィン(エヴァートン)、タミー・アブラハム(チェルシー)、ダニー・イングス(サウサンプトン)だ。

 プレミアリーグの実力者が揃っており、特にジェイミー・ヴァーディは継続的にゴールを決め続けているレスターのエース。サディオ・マネやモハメド・サラーは裏に抜け出すスピードに優れており、ショートカウンターからゴールを量産している。カルバート・ルーウィンやタミー・アブラハムは若いがチームの主軸となっており、成長著しい期待株だ。

 アンリは第二グループでも上位に位置するゴール期待値を記録しており、複数のシーズン得点王を争い続けた実力者に相応しい。当時の攻撃戦術が今以上に個に依存する傾向があったことや、現代と比べても対人守備に絶対の自信を誇るDFが揃っていたことを考えれば、数値以上に評価されるべきだという見方もあるだろう。

 同時に、アンリは「ポジショニングに優れたストライカー」という言葉で語り切れる存在ではなかった。シーズンのゴール期待値(オープンプレー限定)は累積で17ゴール程度となっており、実際のゴール数は期待値を大きく上回っている。特に中距離からのシュートと角度のない左サイドからのシュートを正確にゴールに突き刺す技術を備えていたことで、アンリは一般的な選手が決められない位置からでもゴールを量産した。

 最終的にはオープンプレーから27ゴールを決めており、ストライカーは全盛期を謳歌していた。中央でストライカーとしてプレーする際にはスルーパスを受けながらトップスピードに乗り、ゴール期待値の高い場面を創出しながらゴールを量産。逆に相手が引いた局面では、ゴール期待値の低い角度や位置からでもゴールを狙う意識を忘れない。

(文:結城康平)

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『フットボール批評issue29』


定価:本体1500円+税

≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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