デニス・ベルカンプはなぜ天才と呼ばれたのか? 究極に達したトラップの技術と芸術的ゴールの理由【アーセナル伝説の2トップ(3)】

アーセナルを特集した9/7発売『フットボール批評issue29』から、アーセナル史上最高の2トップに最新データで迫った結城康平氏の「ティエリ・アンリ&デニス・ベルカンプ」を、発売に先駆けて一部抜粋して全3回で公開する。今回は第3回。(文:結城康平)

2020年08月28日(Fri)10時20分配信

text by 結城康平 photo Getty Images
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圧倒的だった空間認知能力

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【写真:Getty Images】

 アンリの力を最大限に引き出しながら、自らも華麗なゴールで多くの伝説を残す。飛行機が苦手だったことから「飛べないオランダ人」というニックネームで呼ばれたデニス・ベルカンプは、記録だけでなく記憶に残る天才だった。

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 オランダでクライフに才能を認められた男は、アヤックスからイタリアの名門インテルへ移籍。インテルでは苦しんだが、1995年にアーセナルに加入すると圧倒的なポテンシャルを開花させる。2003/04シーズンは、当時34歳というベテランでありながら、アンリを的確にサポートしていた。

 単純なストライカーというよりもトップ下のようなポジションでボールを受けることを好んでいたベルカンプの存在は、アーセナルの流動的なフットボールにおける中心となっていた。

 彼のトレードマークとなった技術は「トラップ」だろう。浮き球を正確にコントロールするだけではなく、相手の読みを外す方向に浮かせる抜群の技術は、数多くのスーパーゴールを生み出した。

 圧倒的だったのはその空間認知能力で、ボールが落下する軌道を正確に計算。予測スピードを武器に、ボールを線ではなく点で捉えることを可能にしている。足下にピタリとコントロールするのではなく、動きながら次のプレーに移れるようにあえて浮かせたまま次のプレーに移行する技術を武器に、ベルカンプは新境地を開拓していった。

 そのトラップ技術に近付いたのはマンチェスター・ユナイテッドやトッテナム・ホットスパーで活躍したディミタール・ベルバトフだが、彼ですらベルカンプには遠く及ばない。自分の背後からのロングボールを背中に目がついているように正確に察知し、勢いを殺しながらボールをコントロール。ボールの衝突音を消してしまうようなトラップは、多くのファンを夢中にさせていた。

 ニューカッスル戦の「ベルカンプターン」は有名だが、常に芸術的なゴールを沈め続けた。シュートのパターンも多く、相手GKの位置を把握しながらのループシュートは絶妙。浮き球の認知技術を武器に、トラップすると見せかけてダイレクトでループシュートを狙うこともあった。

 ボレーシュートのイメージが強いが、エリア外からの強烈なシュートも得意技だ。俊足ではないがコース選択が巧みで、ドリブルで密集地を割りながら積極的に狙っていく。ボールタッチの質が高い選手は、当然シュートも様々なキックを使いこなすことが可能だ。

 フェイエノールトから20歳でアーセナルに加入したファン・ペルシーはベルカンプから練習意識の高さを学んだが、徹底的にミスを減らす姿勢は日々のトレーニングにも現れていた。

 のちにアーセナルのエースに成長し、マンチェスター・ユナイテッドでも活躍するファン・ペルシーは、ベルカンプを彷彿とさせる空間認知能力を武器としていた。W杯のダイビングヘッドは歴史に残るゴールだったが、斜め後ろからのボールに見事に飛び込んだシュートは彼の空間認知能力を象徴するようなゴールだった。

(文:結城康平)

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『フットボール批評issue29』


定価:本体1500円+税

≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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