アーセナルの獲得有力候補は? ターゲットのCBと決まれば奇跡のMFとは…【プレミアBIG6補強戦略(2)】

今夏は昨年までの移籍市場とは状況が違う。新型コロナウイルスの影響で、財政難に苦しむクラブが多く、売りたいチームが多い一方で、買い手側のクラブで資金が潤沢なのはごく一部。そのため多くの交渉が非常に難しい状況になっている。あるいは資金を準備できず、トレードでの移籍も増えそうな夏でもある。一方で補強の動きを止めれば、チームの新陳代謝が止まってしまう。各クラブ工夫を重ねて強化を成功させようとしている。そんな特別な夏におけるプレミアリーグBIG6の補強はどうなっていくのだろうか。今回はアーセナルを解説していく。(文:内藤秀明)

2020年08月29日(Sat)11時00分配信

シリーズ:プレミアBIG6補強戦略
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チーム状況

アーセナル
【写真:Getty Images】

 アーセナルは先日、新型コロナウイルスによる財政面の問題からクラブスタッフ55名を解雇したほか、フットボール面でのトップであるラウル・サンジェイを解任した。クラブの状態はまったくもって良いとは言えない。財政的にもチーム運営的にも苦しい状況なのである。
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 北ロンドンに拠点を置くクラブは、それでなくとも一部の選手の高額給与や様々な理由が原因で財政難と言われてきた。それに加えて、このコロナ禍で無観客試合になったダメージも大きかった。

 米メディア『The Athletic』によると、2018/19シーズンのアーセナルの試合日売り上げは9640万ポンド(約130億円)で、これは全体の収入の24.33%に相当し、プレミアリーグで最も高い割合を占めているそうだ。それが今やゼロになってしまっているのだ。

 財政面がより厳しくなったことは言わずもがなである。

監督の方針

ミケル・アルテタ
【写真:Getty Images】

 一方でピッチ内はネガティブなニュースばかりではない。ミケル・アルテタが監督に就任して以降、チームは5バックで守備的に戦うようになった。これ自体はポジティブではないかもしれないが、結果的にカウンターでピエール=エメリク・オーバメヤンが抜け出し、ワールドクラスの決定力で得点を重ねて勝ちきる鉄板パターンを確立したのだ。

 実際その戦い方で、マンチェスター・シティやチェルシーなどの強豪相手に勝利を収めて、FAカップを優勝することに成功している。

 しかしアルテタは、5バックでの守備的な戦い方から脱し、来季以降は4-3-3での戦いを望んでいるという。具体的にどのような戦い方になるかはわからないが、少なくとも昨季よりは前がかりな戦い方になることが予想される。

 アーセナルは本来、攻撃的な戦い方を志向することが多く、その方向展開に対しては多くのファンが賛意を示すことになるはずだ。

退団が予想される選手

 さて、そんなシステム変更を行っていく上で、資金確保のためにも、あるいは人員整理のためにも、アーセナルは補強の前に多くの選手を売却する必要がある。

一番の鍵を握るのが、元ドイツ代表MFメスト・エジルの去就だろう。週給35万ポンド(約4900万円)もするチーム一の高給取りであるエジルの行方次第で使える予算が大きく異なることとなる。

 仮にエジルが放出された場合は年間約1800万ポンド(約25億円)もの削減が可能となる。長年チームに貢献してきた選手ではあるものの、近年は居場所を失いつつあり、特に、昨季のリーグ再開空けは1試合も出場していない。

 しかし、米メディア『The Athletic』に語ったインタビュー内容によると、エジル側は残り一年の契約を全うする意向のようだ。加えて「監督の決断は全面的に尊重するが、采配はピッチ上で決定されるべきだ。リスタート後、僕は自分ができることを示すチャンスすら与えられなかった。悪いパフォーマンスなら起用されない決断を理解するものの、今回はそうではなかった」と発言。ピッチ外の理由で起用されていないことを揶揄している。

 これを受けてメディアなどではフロントとの軋轢を推測する声が多く上がるようになっている。いずれにしてもエジルを取り巻く問題は非常に複雑かつ難しい状況になっている。

 もう一人わかりやすく戦力外扱いされている主力が、フランス人MFマッテオ・グエンドージである。前任のウナイ・エメリ政権下で覚醒した21歳の若者は、素行不良などが原因で、スペイン人監督から見放されたと複数の現地メディアが報じている。

 またCB陣が非常に枚数が多い上に、来季3バックから4バックに変更すると、CBの枠が3枠から2枠に減少する。

 現在、原則的に4バックのCBを本職とする選手は、ダビド・ルイス、シュコドラン・ムスタフィ、ロブ・ホールディング、パブロ・マリ、ウィリアム・サリバ、ソクラティス・パパスタソプーロスなど6名いる。SBやボランチなどでも起用可能なカラム・チェンバースも含めれば7名。3バックの一角なら起用可能な選手に、キーラン・ティアニー、セアド・コラシナツらがいることを考えると、どう考えても飽和状態だ。

 少なくとも2~3人は、この中から売却する必要があり、メインの売却候補はホールディング、ムスタフィ、ソクラティスだと言われているが、資金難の状況を考えると、何が起こるかわからないが実情だ。

補強が必要なポジション

 さてこんなに最終ラインに人数が多いにも関わらず、現在の一番の補強ポイントはCBだろうか。昨季、高パフォーマンスを見せたダビド・ルイスの相方のファーストチョイスが不透明な状態なのである。サンティティエンヌから獲得し、ローンでそのまま古巣でプレーしていたサリバは、実質この夏にアーセナルに加入することになる。ただしプレミア1年目の上に19歳という年齢を考えれば才能は間違いないが即戦力にできるかは未知数だ。マリも昨季リーグ戦で2試合しか出場していないため計算しにくい部分もある。

 一方でムスタフィ、ソクラティス、ホールディングは不安定な守備を見せることがあり、実力不足という声が大きい。頼りのルイスも現在33歳といつまでトップパフォーマンスを維持できるのかわからないのが実態である。

 次に補強が必要なのが、中盤のポジションだ。報道の通り3センターで来季戦う場合、5~6枚の選手がいて欲しいところだが、本職の選手で戦力なのはルーカス・トレイラ、グラニト・ジャカのみである。

 もちろん、本職は2列目のジョー・ウィロック、本人の意向は中盤だがSBで使われることが多いエインズリー・メイトランド=ナイルズ、両ウイングと左SBだけでなくインサイドハーフでも起用可能なブカヨ・サカなど若手選手たちも中盤でカウントできる。チェンバースもローン先のフルハムで守備的MFとしてレーした経験がある。

 あるいはレアル・マドリードとローン延長を交渉しているセバージョスも加えれば枚数的には足りるかもしれない。ただし可能であれば本職の即戦力級をセバージョス以外にももう一枚獲得したいところである。

 最後にウイングの即戦力級である。右はニコラ・ペペ、左はオーバメヤンがレギュラーとして鎮座するが、控えがウィロック、リース・ネルソン、ガブリエウ・マルティネッリなど、20代前後の若手が多いことからできれば一枚獲得したいところだった。

獲得が決まった選手、噂になっている選手

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【写真:Getty Images】

 そんな中、一番に獲得が決まったのが、チェルシーの右ウイングとして7年間活躍したウィリアンである。正直、最優先ポジションではなかったものの、フリーで獲得できること、ウィリアン自身がロンドン内での移籍を探していたこともあり、スムーズに獲得が決まった。これでペペやオーバメヤンが負傷した場合の備えとしては十分だろう。

 さてそれ以外の交渉は現段階ではまとまっていない。まず中盤で気がかりなのが、スペイン代表MFダニ・セバージョスの去就だろう。セバージョス自体はジネディーヌ・ジダン監督の構想外と言われていることもあり、再獲得できる見込みはある。スペイン紙『AS』によると、ローン期間延長に対してマドリーは乗り気であるどころか、完全獲得のオプションもつけたい方針であるという。特に中断明けからはチームに欠かせない存在となったこのスペイン代表MFをアーセナルは引き止めたいところだ。

 他にもアトレティコ・マドリードに所属するMFトーマス・パーティがターゲットとして報じられることは多い。守備面でフィルターになれるパーティをアーセナルは是が非でも獲得したいところだが、アトレティコ側は契約解除金5000万ユーロ(62億5000万円)を支払わない限り放出しない姿勢を見せており、交渉は難航している模様だ。8月初旬以降は移籍の噂もめっきり減ってきており、可能性は小さくなっているのかもしれない。

 最後にCBに関しては数多くの選手の名前が上がっている。現段階で可能性がある選手でいうと、リール所属のブラジル人DFガブリエウ・マガリャンイスだろうか。『デイリー・メール』によると、移籍金は2200万ポンド(約28億円)と比較的安価で獲得可能なマガリャンイスは、左利きで足元も上手く、地上における対人戦でもボール奪取を得意とする。首を振りながらポジショニング修正することも怠らない非常に良いCBである。獲得実現できれば、22歳ながら即戦力として計算できそうだ。

最後に

 今の財政難の状況を考えると、ウィリアンの獲得が決まり、セバージョスも確保できれば最低限OK。マガリャンイスも獲得できれば合格、というのがこの夏のアーセナルの現実的な落としどころではないだろうか。パーティまで決まれば奇跡だ。理想を言えば、もっと補強したいポイントがあるのは間違いないが、これが今のアーセナルの現実である。

 多くの獲得を期待できなさそうだが、フロントとしても全く動く気がないわけではない。限りある資金でどこまでチームを強化できるかに注目だ。

(文:内藤秀明)

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『フットボール批評issue29』


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≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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