ビジャレアル、主役はカソルラから久保建英へ。EL出場権確保、攻撃的スタイルで低迷脱出【19/20シーズン総括(5)】

新型コロナウイルスという未曾有の脅威によって2度目の夏を迎えることになった、欧州の長い2019/20シーズンがようやく閉幕した。トラブルに見舞われ、新たな様式への適応も求められながら、タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な目標を掲げていた各クラブの戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回は久保建英の新天地となったビジャレアルの1年を振り返る。(文:編集部)

2020年09月01日(Tue)10時00分配信

シリーズ:19/20シーズン総括
text by 編集部 photo Getty Images, MutsuFOTOGRAFIA
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3連敗も…苦戦が続いた前半戦

サンティ・カソルラ
【写真:Getty Images】

 ビジャレアルの2019/20シーズンは「V字回復」という言葉で表せるのではないだろうか。

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 一度解任した監督を呼び戻すなどゴタゴタ続きで14位と低迷した2018/19シーズンの過ちを繰り返さない。そのうえで上位進出と欧州カップ戦出場権獲得を掲げ、ハビエル・カジェハ監督に継続してチームを任せた。

 ところが前半戦は苦しかった。サンティ・カソルラやジェラール・モレーノを中心とし、小気味よくパスをつないで崩す攻撃が機能した一方で失点がかさみ、なかなか勝ちが続かない。序盤戦は勝ち先行で進んでいながら、昨年11月には久保建英の1得点1アシストなどで3失点したマジョルカ戦から、セルタ戦、バレンシア戦と続く3連敗もあり雲行きが怪しくなった。

 ラ・リーガでは前半戦19試合を終えた段階で8勝4分7敗、勝ち点28の9位に沈んでいた。勝敗数を見ても分かる通り、ほとんど完勝か完敗かという大味なサッカーがビジャレアルの課題になっていた。

 とりわけボールポゼッション率を高められない試合で苦しい戦いを強いられ、失点するとバランスが崩れて止まらなくなってしまう悪癖もあった。マジョルカ戦からの3連敗があった後、13位まで順位を落としていた時期もあったほど安定感を欠いていた。

 一方で個々に目を向けると非常にポジティブなシーズンを過ごしていた選手が多くいたのも事実だ。2018/19シーズンはわずか8得点にとどまり、リーグ戦低迷の要因として槍玉に挙げられていたジェラール・モレーノが復活。2019/20シーズンは自身最多の18得点と気を吐き、ビジャレアルの前線をけん引しての「スペイン人得点王」獲得となった。

 シーズン中盤に35歳の誕生日を迎えたカソルラもリーグ戦35試合に出場して11得点9アシストを記録。左サイドからトップ下にかけてのエリアで躍動感あふれるプレーを披露していた。そして昨年11月にはスペイン代表で4年ぶりのゴールも奪った。

 イングランドのフルアムから期限付き移籍で加入したアンドレ=フランク・ザンボ・アンギッサは中盤の要として欠かせない柱になった。恵まれたフィジカルを活かした対人能力や豊富な運動量だけでなく、的確な状況判断力やユーティリティ性も備えており、1年間を通して安定したパフォーマンスを披露した。

カソルラ躍動。中断明けに巻き返し

 不安定だった最終ラインにはラウール・アルビオルとパウ・トーレスという頼もしいコンビが加わった。34歳の前者は6年ぶりの母国復帰でベテランらしい安定感を披露。23歳の後者はレンタル先のマラガから復帰してレギュラーポジションを射止め、攻守に鮮烈なパフォーマンスを続けてスペイン代表まで上り詰めた。

 こうしたチームの中心を担う選手たちが明確だったことも影響してか、後半戦になると徐々にチーム全体の戦いぶりも安定していく。もともと武器だった攻撃力が存分に発揮されるようになり、終盤にかけてどんどん上昇気流に乗っていった。

 3月にはシーズン2度目のリーグ戦3連敗があったものの、幸か不幸か新型コロナウイルス感染拡大にともなって突如公式戦の開催が中断され、悪い流れを断ち切ることができた。そして約3ヶ月におよんだ中断期間が功を奏したか、抜群の安定感で6月に再開したリーグ戦を戦い抜いた。

 再開後に敗れたのはバルセロナ、レアル・マドリード、レアル・ソシエダとの3試合のみ。格上の2強と高いポゼッション率を武器にするソシエダで、ボールを支配できない試合での脆さは変わらなかったが、7勝1分3敗で勝ち点22ポイントを稼ぎ出した。

 最終順位は5位で、2020/21シーズンはUEFAヨーロッパリーグ(EL)にグループリーグから参戦できる。前シーズンが14位だったことを考えれば、上々の結果を残しての目標達成と言えるだろう。

 後半戦の巻き返しにおいては、冬の移籍市場でボルシア・ドルトムントから加入したパコ・アルカセルも大きな役割を果たした。最終盤こそ負傷離脱を強いられたものの、リーグ戦13試合の出場で4得点2アシスト。ペナルティエリア内で力を発揮するワンタッチゴーラーとして存在感を発揮した。

 新ストライカーの加入によって後半戦は4-4-2も併用されるようになり、パコ・アルカセルとジェラール・モレーノが得点源として機能。右サイドは圧倒的な突破力を誇るサミュエル・チュクウェゼ が制圧し、左サイドから中央に進出して自由に振る舞うカソルラが中盤と前線のつなぎ役として躍動した。

久保建英も加わり新シーズンへ

久保建英
【写真:MutsuFOTOGRAFIA】

 ただ、2019/20シーズンでカソルラのカタール移籍が決まり、終盤に約3年ぶりの実戦復帰を果たしたキャプテンのブルーノ・ソリアーノも現役引退を表明した。フルアムからの期限付き移籍だったザンボ・アンギッサは移籍金が約2500万ユーロ(約40億円)と高額なことから完全買い取りが見送られた。

 極めつけはチームをEL出場権獲得に導いたカジェハ監督の解任である。苦しみ抜いた2018/19シーズンに比べ総得点は「49」をリーグ3位の「63」に増やし、総失点を「52」から「49」に減らすなど、チームを大きく好転させた指揮官に別れを告げた。新監督にはウナイ・エメリが招へいされ、すでに新たなチーム作りが始まっている。

 新体制の旗頭になる期待を背負い、エメリ監督の肝いりで獲得されたのが久保だ。レンタル先のマジョルカで一躍ブレイクを果たした19歳は、ELに出場できるビジャレアルでラ・リーガ2年目のシーズンを迎える。マドリーでプレーするきっかけをつかむためにも重要な1年になるはずだ。

 他にもバレンシアからダニエル・パレホとフランシス・コクランを格安で引き抜き、ハウメ・コスタもレンタルから復帰するなど、順調に補強を進めている。いまのところラ・リーガにおいてはビジャレアルが今夏の移籍市場で最も成功したクラブと言っていいだろう。

 セビージャ時代にELで3連覇を成し遂げるなど、「EL専門家」のイメージも強いエメリ新監督はどんなチームを作り上げるだろうか。組織的な守備をベースに、攻守の切り替え、ゴールまでのプロセスなどを緻密に組み立てる戦術家の腕が試される。

 そして久保がスペイン屈指の強豪クラブでレギュラーの座を勝ち取り、さらなる成長を遂げ、マドリーでプレーするのにふさわしい選手として評価を高められるかにも注目だ。

(文:編集部)

【了】

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