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リーズは普通以下のチームに。リバプールとマンCには互角だったが…弱点を突いたウルブズの狡猾な戦法

プレミアリーグ第5節、リーズ・ユナイテッド対ウォルバーハンプトンが現地時間19日に行われ、0-1でウルブズが勝利を収めた。試合はリーズが主導権を握る展開が続いたが、2季続けて7位に食い込み、ビッグクラブ相手にも好勝負を演じてきたウルブズの試合巧者ぶりが光る試合だった。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

群雄割拠のプレミアリーグ

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【写真:Getty Images】

 トッテナムとマンチェスター・シティの台頭によりビッグ4はビッグ6へと移り変わったが、その呼称ももはや死語になりつつある。

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 プレミアリーグは5節を終え、エバートンが4勝1分で首位に立っている。昨季は17位で降格を免れたアストン・ヴィラが4戦全勝で2位につけ、レスターが4位にいる。チェルシーは8位、1試合消化が少ないマンチェスター・シティは11位、マンチェスター・ユナイテッドは――。

 プレミアリーグは過渡期に入った。昨季からその兆候を見せていたが、昇格したリーズ・ユナイテッドがそれに拍車をかけている。

 マルセロ・ビエルサに率いられるチームは開幕戦でリバプールと壮絶な打ち合いを演じ、シティにも互角に立ち合った。「リーズのように良く組織された情熱的なチームとの試合は最高だった」とユルゲン・クロップが賛辞を送れば、「ファンタスティックなチーム」とペップ・グアルディオラに言わしめた。

 現代サッカーで「認知」の重要性が語られるようになって久しい。

 選手がプレーを「実行」するまでには、ボールや味方、相手の位置などの情報の「認知」と、適切な選択肢を選ぶ「判断」というプロセスを経なければならない。

 体感としてリーズの実行までのプロセスは他のチームより速い。味方が動き出す前にどこに蹴るかの判断をしている。そして蹴る動作に移る間に味方選手は動き出す。味方が動き出すのを見てから判断しては遅い。チームとして判断の原則があるからそれが一致する。阿吽の呼吸はこうして生まれるのだと思う。

ウルブズの戦法

 リーズはプレミアリーグ屈指の難敵、ウォルバーハンプトンを相手に主導権を握っていた。前半のボール支配率は68.8%で、ほとんどの時間を相手陣内で過ごした。ウルブズの攻撃は単発で、前半はわずか2本のシュートに終わっている。

 リーズは試合を通じて13本のシュートを放ったが、枠内に飛んだのは2本でウルブズの3本を下回っていた。トランジションで優位に立ってボールを握り、アタッキングサードに入るまでは良かったが、決定機を作ることに苦労していた。

 ウルブズはボールを握られたが、リーズの攻撃を跳ね返し続けた。クリアの数は26を数え、3バックを中心にシュートブロックも4本をマーク。壁を築いたウルブズに対して、リーズは今季初めて無得点で試合を終えている。

 ウルブズは3節でウエストハムに0-4の大敗を喫したが、そこからフラム戦、リーズ戦をともに1-0で制した。フラム戦からは3バックの左を担当していたロマン・サイスをウイングバックに上げ、マックス・キルマンを最終ラインに起用し、守備の安定を図っている。

 クリア数は3節までが平均8.3本だったのに対し、フラム戦で25本、リーズ戦は26本と急増。フラム戦でもボール保持率で下回っていた。ポゼッションにこだわらず、相手にボールを預ける戦いがこの2試合では結果につながった。

リーズの集中力

 ある研究によると人間が集中していられる限界は90分だという。身体に強い負荷がかかるサッカーの試合ではもしかしたらそれより短くなるかもしれない。さらに、それが深い集中となると15分しか持続できない。

 リーズはフラム戦で3点をリードしながら、後半17分と22分に立て続けに2失点を許した。キックオフと同時にフルスロットルでプレッシャーをかけるサッカーは、後半のどこかで必ずエアポケットが生まれる。交代策はエンジンをかけ直す効果的な策だが、0-0が続いたウルブズ戦でビエルサはなかなか交代カードを切れずにいた。

 一方、ウルブズは65分にアダマ・トラオレを入れた。爆発的なスピードと強靭なフィジカルを持つトラオレは、カウンターのボールプッシュ役としてこの上ない存在である。決定的なシーンこそ作ったわけではなかったが、トラオレが攻め残りは、リーズの陣形を全体的に間延びさせていた。

 手堅い守りと的確な采配。ウルブズは狡猾な戦法で勝機を見出した。

 リーズは4試合で7失点と、守備が堅いチームではない。アグレッシブに敵陣に攻め込むビエルサのサッカーはエキサイティングであるとともにリスキーでもある。ここまでの失点パターンを見ると、深い位置まで攻め込まれたときが多い。

 シティ戦のラヒーム・スターリングのゴールと、この試合のラウル・ヒメネスのゴールは似ていた。サイドからカットインするボールホルダーに対してマーカーがついていけず、マークの受け渡しがままならずにフリーにしてしまった。

 リーズの守備は基本的にマンマークだ。サイドバックはウルブズの2シャドーを離すまいと逆サイドまで追う。しかし、例外的に、自陣のゴール前では4-1-4-1でゾーンを埋める。しかし、ゾーンの対応となるとリーズは普通以下のチームになってしまう。押し込まれる前にボールを奪回するか、ゾーンの守備を整理しなければ今後も苦しい戦いが続くかもしれない。

 魅力的なサッカーでプレミアリーグに風穴をあけるリーズと、試合巧者としての一面を持つウルブズ。ビッグクラブを相手にもタダでは倒れない曲者の両者の対戦は、とても見応えのある試合だった。

(文:加藤健一)

【了】

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