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セリエA 4年前

ユベントス、楽しみな若手タレント続々確保。ピルロ新監督就任、唯一疑問が残るのは…【欧州主要クラブ補強診断(9)】

欧州の2020/21シーズンが開幕し、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、各国の主要クラブはそれぞれどんな動きを見せたのだろうか。今回は昨季のセリエAで優勝を果たしたユベントスの補強動向を読み解く。

シリーズ:20/21欧州主要クラブ補強診断 text by 編集部 photo by Getty Images

補強は概ね成功だが…

ユベントス
【写真:Getty Images】

 前人未到のセリエA10連覇を目指すユベントスは、マウリツィオ・サッリ監督と1シーズンで袂を分かち、トップリーグで指導経験のない新米監督にチームを託した。

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 新指揮官に就任したのはイタリアサッカー界のレジェンドにして、クラブOBでもあるアンドレア・ピルロである。

 監督としてのキャリアを歩み始めたばかりの新進気鋭は、さっそく改革に着手。高給取りのベテランを放出し、若返りを図った。

 契約破棄を拒否したとも言われるサミ・ケディラは残留するも、UEFAチャンピオンズリーグの登録選手リストから外れ事実上の構想外に。ゴンサロ・イグアインとブレーズ・マテュイディは、デイビッド・ベッカム氏がオーナーのインテル・マイアミCFに移籍し、北米MLSに新天地を求めた。

 また、ミラレム・ピャニッチはアルトゥールとトレードの形でバルセロナへ。高額な移籍金を設定しての取引はユベントスとバルセロナ両クラブの財政面の問題を先送りするためとも見られたが、結果的にはブラジル代表の若手有望株を獲得できた。

 シャルケから加入したクラブ史上初のアメリカ人選手、ウェストン・マッケニーはすでに飛躍の兆しを見せ始めている。豊富な運動量と積極性で中盤に活力を注入し、ピルロ新監督の信頼を勝ち取っているようだ。

 昨季のうちに獲得を決め、パルマに貸し出していたデヤン・クルゼフスキも本格的にユベントスの一員となった。すでに主力として起用され、スケールの大きなプレーで崩しにアクセントを加えている。

 移籍市場最終日にはフィオレンティーナからフェデリコ・キエーザを獲得し、前線の選手層は欧州屈指に。親子揃ってイタリア代表というサラブレッドはサイドを中心に複数のポジションをこなせるだけでなく、アグレッシブさとイマジネーションを兼ね備える、ピルロ監督が獲得を熱望していたタレントだ。

 ただ、アルバロ・モラタの獲得は失策だったかもしれない。シーズン中に36歳を迎えるクリスティアーノ・ロナウドは、まだまだ元気いっぱいだが、コンディションに気を遣いながら慎重に起用していく必要がある。そのためターンオーバー可能なストライカーの獲得は急務だった。

 ピルロ監督が望んでいたのはローマの主将エディン・ジェコだったが、取引は成立せず。一時はバルセロナで構想外になったルイス・スアレスの加入が決まりかけていたものの、イタリアの市民権を取得するためのイタリア語試験で不正が疑われるなど一悶着あり、獲得は失敗に終わった。

 つまりモラタは3番目以下の選択肢だったわけだ。スアレスのアトレティコ加入が濃厚になったことで自らの待遇に不満を示したとも言われ、玉突き的に4年ぶりのユベントス復帰が成立した。とはいえレアル・マドリード時代からクリスティアーノ・ロナウドとの相性が悪いことは広く知られており、同時起用は考えづらい。

 まもなく28歳になるスペイン代表FWは精神状態によってプレーの調子が乱高下するタイプで、扱いが非常に難しい。アトレティコからの移籍の経緯もそうだが、どこに行っても確たる自信を示してこられなかった煮え切らなさは、ストライカーとしてのブレイクスルーを阻害する要因にもなっているだろう。

 エースとの相性の悪さや精神面の脆さを克服できなければ、クリスティアーノ・ロナウド欠場時の穴埋め要員のままになってしまう。

 とはいえチーム全体の選手層や総合力では群を抜いており、今季もセリエA優勝に最も近い存在であることに疑いはないだろう。昨季はインテルに1ポイント差まで肉薄されたが、リーグ10連覇は現実的な目標のままだ。

 そして今季こそは、近年苦戦が続くUEFAチャンピオンズリーグのタイトルも獲得したいところ。序盤から攻撃時には3-4-3あるいは3-5-2、守備時には4-4-2となる挑戦的な変則システムを導入しているピルロ監督の手腕にも注目だ。

補強・総合力評価

ユベントス
ユベントスの20/21シーズン予想布陣

IN
GK:ステーファノ・ゴーリ(ピサ)
DF:トンマーゾ・バルビエリ(ノヴァーラ)
MF:アルトゥール(バルセロナ)
MF:ウェストン・マッケニー(シャルケ/期限付き移籍)
MF:デヤン・クルゼフスキ(パルマ/期限付き移籍から復帰)
FW:フェリックス・コレイア(マンチェスター・シティU-23)
FW:アルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリード/期限付き移籍)
FW:フェデリコ・キエーザ(フィオレンティーナ/期限付き移籍)

OUT
DF:ダニエレ・ルガーニ(スタッド・レンヌ/期限付き移籍)
DF:マッティア・デ・シーリオ(リヨン/期限付き移籍)
MF:ミラレム・ピャニッチ(バルセロナ)
MF:ブレーズ・マテュイディ(インテル・マイアミCF)
MF:シモーネ・ムラトーレ(アタランタ→レッジャーナ/期限付き移籍)
MF:ナウイル・アーマダ(シュトゥットガルト/期限付き移籍)
FW:ゴンサロ・イグアイン(インテル・マイアミCF)
FW:ドグラス・コスタ(バイエルン・ミュンヘン/期限付き移籍)
FW:ルカ・ザニマッキア(レアル・サラゴサ/期限付き移籍)

補強評価:B

 課題だった“9番”ポジションにモラタを迎えた他、各所に実力者を獲得した。全体的にやや若返り、マッケニーやクルゼフスキ、キエーザなど楽しみな素材も多い。一方で放出したのは、伸び悩んでいた中堅選手や高給のベテランが中心だった。現役時代のピルロともプレーした経験を持つような在籍の長い選手が多く退団したのは気がかりだが、それも新監督とともに次のサイクルへ入っていくというクラブの決意の表れか。

総合力評価:A

 序盤戦はダニーロが3バックの右で新境地を開拓しているが、負傷離脱中のマタイス・デ・リフトは前半戦のうちに復帰の見込みで、そうなれば最終ラインは盤石だ。クリスティアーノ・ロナウドが健在の前線は相変わらずの破壊力で、周りにはパウロ・ディバラ、キエーザ、クルゼフスキなど多様な武器を持つタレントが揃う。欧州制覇にも届きうる陣容が整ったと言えるだろう。

【了】

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