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セリエA 3年前

首位ミランはローマにも不可解な主審にも負けない。イブラヒモビッチ効果により輝く若き才能とは

セリエA第5節、ミラン対ローマが現地時間26日に行われ、3-3のドローに終わっている。開幕5連勝を狙ったミランだが、残念ながら勝ち切ることはできなかった。ただ、不可解な判定にも負けず、アンテ・レビッチ負傷により出番を得た男の活躍などもあるなど、決してネガティブなドローではなかった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

両者譲らぬ激しい展開

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【写真:Getty Images】

 リーグ戦4連勝中のミランと同2連勝中のローマによる一戦は、非常に激しい展開となった。両チーム合わせたシュート数は25本で、実に6つの得点が生まれている。

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 前半から動きのあるゲームだった。開始わずか2分にズラタン・イブラヒモビッチが先制弾をマークすると、14分にはGKチプリアン・タタルシャヌのミスを逃さなかったエディン・ジェコが得点。両チームのエースが、注目試合の立ち上がりを見事に彩ることになった。

 その後はミランがボールを保持。最前線のイブラヒモビッチを中心に攻撃を作り上げ、敵陣へ何度も侵入した。対するローマは推進力のあるヘンリク・ムヒタリアンとペドロ・ロドリゲスが起点となるカウンターでチャンスを創出。こちらの狙いも決して悪くなかった。

 激しい攻防を繰り広げた前半は1-1のまま終わったが、後半はさらに動きのある展開に。まずは47分、ミランはローマの右サイドを崩すと、最後はゴール前に飛び込んだアレクシス・サレマーカーズがゴールゲット。勝ち越しに成功した。

 その後は連戦による疲労の影響もあってか、行ったり来たりのオープンな展開が続いた。お互いにボールホルダーに対し強くプレッシャーに行けないため、中盤にはぽっかりとスペースが出来ており、両者ともにゴール前で耐えるという状況が繰り返されていた。

 そんな中、ローマ、ミランともにPKが与えられ、84分の時点でスコアは3-2。このままいけばミランが開幕5連勝を飾ることになったのだが、ローマが食らい付いた。コーナーキックを得ると、ニアサイドでイブラヒモビッチが痛恨のクリアミス。これをファーサイドのマラシュ・クンブラが押し込み同点に追いついた。

 最後まで白熱した展開となったが、試合は3-3のまま終了のホイッスルを迎えている。勝ち点1ずつを分け合う形となったが、この結果は妥当と言えるだろう。両者ともに素晴らしいパフォーマンスだった。

試合後の話題はイブラヒモビッチやジェコではなく…

 ただ、こうした好ゲームの話題が選手やチームではなく、主審のピエロ・ジャコメッリ氏に向いてしまったのは非常に残念と言える。

 これまでにも疑惑の判定でいくつかの話題を提供していたジャコメッリ主審だが、この日も試合を見事にぶち壊した。

 69分、ムヒタリアンのシュートをタタルシャヌが弾くと、こぼれ球にペドロとイスマイル・ベナセルが反応。先にベナセルが足を出し、ペドロがそれを踏む形で両者ともに倒れたが、なんとこれがPK判定。ミランの選手は猛抗議するも判定は覆らず、ジョルダン・ヴェレトゥがゴールネットを揺らした。

 先述した通り足を先に出したのはベナセルで、それをペドロが踏んだのは明らかだった。その瞬間はベナセルのファウルに見えたとしても、映像をスローで見ればペドロのファウルであることはすぐにわかる。ただ、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入もなくジャコメッリ主審はPKを与えた。誤った判定と言わざるを得ない。

 その後、ジャコメッリ主審はジャンルカ・マンチーニにハカン・チャルハノールが倒されたとしてミランにもPKを与えた。確かにマンチーニとチャルハノールは接触しており、直前にマンチーニが高く足を上げているという印象も良くなかった。ただ、そこまで強烈な当たりではなかったのが事実。微妙な判定だ。ミランにお詫びのPKを与えたと揶揄されても仕方ない。

 その後もイブラヒモビッチが競り合いの際にイエローカードを貰う厳しい判定を受けたり、首を傾げたくなるようなファウルがあったりと、とてもじゃないが冷静な判断を下せていたとは言い難い。改めて言うが、こうした白熱した試合で主審が悪い意味で目立ったしまうことは、非常に残念である。

レビッチ不在の影響を感じさせぬ左サイド

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【写真:Getty Images】

 さて、ここまで無傷のリーグ4連勝を飾っていたミランだが、5連勝とはならなかった。しかし、不可解な判定の数々にも負けずリーグ戦無敗記録は「17」に伸びている。ローマ戦ではミスから2点を失ってしまったが、それでもチームにポジティブな雰囲気が漂っているのは確かだろう。

 もちろん、選手個々の状態もいい。イブラヒモビッチはこの日も2ゴールをマークし得点ランキング単独トップに。シモン・ケアーやダビデ・カラブリア、フランク・ケシエなども随所で光るプレーをみせている。

 その中で、訪れたチャンスをしっかりとモノにしている人物がいる。それが、ラファエル・レオンだ。

 今季は2019/20シーズン後半戦に爆発したアンテ・レビッチの控えという立場にあった同選手だが、レビッチが第2節クロトーネ戦で左ひじを脱臼。それにより、ポルトガル人FWに出番が回ってきた。

 レオンは第3節スペツィア戦で2得点を奪うと、前節はインテルとのミラノダービーでアシストをマーク。対峙したダニーロ・ダンブロージオを置き去りにし、鋭いクロスでイブラヒモビッチの得点をサポートした。そして、今節は2アシストをマーク。このように、出場した試合で得点に絡み続け、レビッチ不在の影響を感じさせていないのだ。

 セリエAでも上位にあるだろうスピードはやはり魅力で、ポルトガル人らしい足元の技術も一級品。若さからくる積極的な仕掛けもストロングポイントだ。一方で、昨季は悪い意味でのエゴも目立っていた。パスを出すべき場面でもボールを持ち続け、最終的に手詰まり状態となってロストするなど、結果を求めるがゆえに個人プレーに走ってしまうことも少なくなかったのだ。

 しかし、最近は変にボールを持ちすぎることが減ったようにも感じる。とくに、神様イブラヒモビッチを意識しながらのプレー精度が高まった印象だ。キックの質もさることながら、より全体への意識が強くなったことがアシスト数の多さなどに繋がっていると言えるのかもしれない。

 まだまだ守備の意識が低く、怠慢さもなくなったとは言えない。このローマ戦がそうだったように、左サイドバックのテオ・エルナンデスと縦関係を築くと背番号19の攻撃力がいつもより発揮できないということが起きてしまう。レオンの守備負担をできるだけ少なくするためだ。

 このように、ディフェンスという部分に関しては向上させていく必要がある。ただ、攻撃面で着実に成長を果たし、それを結果としてチームに還元できている点は非常に大きい。レビッチの復帰も間もなくと思われるが、左サイドの争いは今後より白熱するかもしれない。

(文:小澤祐作)

【了】

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