アーセナルはついに希望を見つけた? 爆発した攻撃陣、“新境地”で輝いた主将の可能性【EL分析コラム】

ヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグB組第5節、アーセナル対ラピド・ウィーンが現地時間3日に行われ、4-1でホームチームが勝利している。アーセナルは立ち上がりから相手を押し込み、前半だけで3点を奪うなど早々に勝負を決めている。ここまで攻撃陣が爆発した理由はどこにあったのだろうか。(文:小澤祐作)

2020年12月04日(Fri)11時42分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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前半はパーフェクトな出来

アーセナル
アーセナルのラピド・ウィーン戦のスターティングメンバー

 エミレーツ・スタジアムに、およそ9ヶ月ぶりにサポーターが入った。まだ限られた人数(2,000人)とはいえ、彼らの拍手や歓声などに、どこか懐かしさのようなものを感じることができた。

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 そんなサポーターの目の前で、アーセナルイレブンはオーストリアの強豪ラピド・ウィーンを相手に最高のゲームを披露している。

 この日も若手中心で挑んだアーセナルは「キックオフの直後から、我々はボールを持っていない時も持っている時も本当にアクティブで攻撃的だった」というミケル・アルテタ監督の言葉通り、前半から数多くのチャンスを作り出している。エディ・エンケティア、リース・ネルソン、ニコラ・ペペの前線トリオが繰り出す攻撃は、若さゆえの凄まじい勢いがあった。

 こうしてラピド・ウィーンを押し込んだアーセナルは、10分に先制。この日のスタメンの中ではセドリック・ソアレスと並んで最年長だった29歳アレクサンドル・ラカゼットが豪快にミドルシュートを突き刺した。

 その8分後には、ネルソンの蹴ったコーナーキックをパブロ・マリが頭で合わせリードを2点に広げている。ラピド・ウィーンはグループリーグ突破のために勝ち点を持ち帰りたいところだったが、やはりアーセナルは強敵。攻守においてまったく歯が立たなかった。

 そしてアーセナルは前半終了間際にも追加点。テンポの良いパスで完全に相手守備陣を崩し切り、最後はエンケティアが仕上げた。

 前半、アーセナルは支配率71%を記録し、シュート数8本、その中で3点を奪った。対してラピド・ウィーンにはシュートわずか1本しか許していない。まさに文句のつけようがない、パーフェクトな45分間だった。

4点を奪っても攻撃の手を緩めず

 大量リードを得た迎えた後半、アーセナルは少しフワッとした入りをみせてしまった。そしていきなり押し込まれると、47分という早い時間に日本代表FWの北川航也に見事なボレーシュートを決められてしまった。これにはアルテタ監督も不満そうな表情を浮かべている。

 しかし、アーセナルはそこから大崩れすることはなかった。そしてスペイン人指揮官は63分にダニ・セバージョス、ウィリアン、エミル・スミス・ロウを一気に投入している。

 選手は変わったが、基本的な戦い方は変わらなかった。アーセナルはビルドアップ時、中盤底一角を担っていたモハメド・エルネニーが最終ラインに落ちて相手の2トップに対し数的優位を作っており、両サイドバックを高い位置に押し上げることで、ビルドアップを進めていた。そして中盤底もう一枚のエインズリー・メイトランド=ナイルズは高い位置でプレーし、攻撃に多く関与することはもちろん、ボールロスト時にハイプレスのスイッチを入れる役割を担っている。

 エルネニーが下がった後はセバージョスが組み立ての任務を引き継いだ。そしてラカゼットに代わって入ったスミス・ロウは、自由に動いた前者とは違い、よりトップ下というポジションを意識してのプレーに集中した。

 そして67分にダメ押し弾。高い位置にいたメイトランド=ナイルズがスプリントでボールホルダーを追い越しパスを引き出すと、最後は中央でフリーとなっていたスミス・ロウへグラウンダーのクロス。背番号32はこれを冷静に押し込んだ。

「恐らく我々はもっと多くの得点を奪うこともできただろう」。

 試合後にアルテタ監督が話した通り、アーセナルは4点を奪ってもなお攻撃の手を緩めることがなかった。結果的に5点目は生まれなかったが、その迫力は目を見張るものがあった。

 格の違いを見せつけたアーセナルはこれでグループリーグ5試合全勝。危なげなく首位通過を決めている。週末のトッテナムとのダービーマッチに向けても、良い弾みとなったのではないだろうか。

攻撃を活性化させた主将の存在

アレクサンドル・ラカゼット
【写真:Getty Images】

 この日の勝負は前半で決まったと言える。では、なぜアーセナルは最初の45分間だけで多くの点を奪うことができたのか。先述した通りエンケティアやペペといった若手の勢いも当然あるが、その大きな理由としては、この日キャプテンマークを巻いたラカゼットの存在が挙げられる。

 フランス代表FWはこのラピド・ウィーン戦で本職のセンターフォワードではなく、4-2-3-1のトップ下に入っていた。ただ、ゲームの中ではその位置に居続けるわけではなく、いわゆるフリーマン的存在としてプレー。幅広いエリアで自由にアクションを起こしていた。

 そのラカゼットが常に気を利かせてボールホルダーと良い距離感を保つことで、チーム全体のボールの動きはかなりスムーズとなっていた。ラピド・ウィーン側からしても、多くのエリアへ顔を出すラカゼットは捕まえにくかった。

 そしてもちろん、ボールを受けた後のアクションも秀逸。ラカゼットはドリブルで持ち運ぶことも当然できるが、とにかくタメを作るのが抜群に上手い。簡単には奪われないし、かといって無駄なタッチが多いわけでもない。そのため次のプレーに移るまでが非常にスムーズで、良いタイミングでパスが出る。エンケティアやペペ、ネルソンらのランニングが無駄になることは少なかった。

 前半終了間際の3点目の場面では、ボールホルダーと近い距離を保ちエンケティアの落としを貰うと、ツータッチ目で絶妙なスルーパスをサイドを走っていたペペへ供給。そこからエンケティアのゴールに繋がっている。まさに、上記したラカゼットの良さが結果という形になったシーンだった。

 最終的に63分までプレーしたラカゼットはデータサイト『Sofa Score』でチーム最高タイの「7.5」というレーティングが与えられている。シュート数は3本で得点1、パス成功率は83%、タッチ数46回はスタメンに入った前線4人の中で2番目に多い数字となっている。また、デュエルは7回中6回勝利。上手さだけでなく、力強さも示したと言える。

 ラカゼットはリーグ戦2試合連続でスタメンから外れている状況だ。しかし、エレガントなMFメスト・エジルがいない今、4-2-3-1で中盤と前線を繋ぐリンクマン的存在として最も期待できるのはやはり彼なのではないだろうか。まだ1試合を終えただけとはいえ、ラカゼットは不調に喘ぐチームに大きな可能性を示したはずだ。

(文:小澤祐作)

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なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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