バルセロナは無策で何もできなかった。昇格組カディスがボール支配率18%で勝った方法は…【分析コラム】

ラ・リーガ第12節、カディス対バルセロナが現地時間5日に行われ、2-1でカディスが勝利した。バルセロナは82%のボール保持率をマークしながら、自滅のような形で昇格組のカディスに白星を献上した。今季5勝目を掴んだカディスは、レアル・マドリード戦に続くジャイアントキリングを達成。その勝利はもはや運とも偶然とも言えなくなっている。(文:加藤健一)

2020年12月06日(Sun)9時44分配信

text by 加藤健一 photo Getty Images
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カディスのプラン

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【写真:Getty Images】

 国内と欧州で異なる姿を見せることはよくあるが、今季のバルセロナはまさにその状態にある。UEFAチャンピオンズリーグは5戦全勝だが、ラ・リーガでは調子が上がらない。レアル・ベティスに大勝したかと思えばアトレティコ・マドリードに敗北。公式戦3連勝でアンダルシア州に乗り込んだが、昇格組のカディスに苦杯を舐めさせられた。

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 カディスのプランは明確だった。この試合はアンカーを置いた4-1-4-1だったが、縦幅をできるだけ圧縮するのはいつも通り。セットプレーから早い時間に先制すると、残りの82分間は集中して守り続けた。サイドハーフが横幅を埋める6-3-1の形、いわゆるバスを停めるというものだ。

 ラ・リーガやプレミアリーグでビッグクラブがつまずいている。オフの短さや毎週ある欧州カップ戦による過密日程もあるだろうが、交代枠が5枚になったことも大きい。交代枠を活用すれば、小さなクラブもビッグクラブに対抗できるようになってきた。

 以前であれば自陣に引きこもる戦略は90分続けるのが難しかった。長い距離を走る前線の選手が疲弊して、終盤に失点を喫するパターンが多く、ビッグクラブは苦しんでも勝ち点3を得ることができた。

 しかし、交代枠が増えたことで前線をそっくり交代させることができ、格下のクラブは90分間籠城することができる。カディスはこれが5勝目となったが、いずれの試合もボール支配率は30%を切っている。バルセロナ戦に至っては18%だった。

無策だったクーマン監督

 手駒は揃っていたはずだが、ロナルド・クーマン監督はカディスを崩すためのプランを持っていなかった。好調だったマルティン・ブライトバイテやウスマン・デンベレはスペースを消されて何もさせてもらえず。リオネル・メッシは1人で10本ものシュートを放ったが、得点になったのはオウンゴールにつながるジョルディ・アルバへのラストパスだけだった。

 バルセロナは相手がカウンターに転じたことでサイドハーフが上がっていたところの裏を返した。4バックの大外で左サイドバックのジョルディ・アルバが浮いていた。折り返しがDFに当たってゴールネットに吸い込まれるラッキーな形だったが、相手の崩していたことは間違いない。

 横幅を6人で守っていたカディスに対して有効だったプレーはあった。右サイドバックのセルジーニョ・デストがサイドバックの背後から斜めに走って裏を取る動きは何度かチャンスになっている。いくら横幅を埋めていたとしても、裏を取られれば相手DFは後ろ向きになるので、折り返したボールへの対応は難しくなる。大外からという点では得点シーンも共通点があった。

 チャンスにつながるプレーはおそらくこれだけだったが、交代策によって自らその扉を閉ざしてしまった。セルジーニョ・デストを下げてトリンコンを入れた。ウイングが本職のトリンコンは攻撃的な性能で見ればデストより上かも知れないが、相手のサイドハーフも対応しやすかった。低めの位置から上がってくるデストの方が相手にとっては嫌だっただろう。

無意味なデンベレの投入

 ハーフタイムの交代も効果はなかった。フィリッペ・コウチーニョを下げてウスマン・デンベレを投入。コウチーニョは内と外を使い分けていたが、デンベレはほとんど外に張るだけ。ジョルディ・アルバの上がるスペースを埋めてしまった。

 ハーフタイムにはデンベレとともにペドリを入れている。下がったのは21歳のオスカル・ミンゲサで、フレンキー・デヨングが最終ラインに回っている。

 カディスの1トップを務めたアルバロ・ヒメネスはミンゲサを常に狙っていた。数少ないカウンターのチャンスには、必ず左寄りにポジションを取ってミンゲサとマッチアップする。クレマン・ラングレより経験で劣るミンゲサを狙うのは自然な流れである。

 ミンゲサはなんとか対応していたが、本職ではないデヨングには難しいミッションだった。61分のシーンでは突破を許してピンチを招いている。2失点目はラングレのミスだが、デヨングが抜かれたプレーがきっかけだった。

 ワイドに張ったデンベレとトリンコンは何もできず、中央ではグリーズマンとブライトバイテが潰されていた。メッシは下がり目のスペースでペドリとともに前を向くが、前には9人のDFがいる。強引な打開からFKを得る場面こそあったが、集中を切らさなかったカディスの前にゴールを奪うことができなかった。選手を入れ替えるだけでは状況を変えることはできない。この試合で言えば、選手の問題より采配の問題だった。

 セルヒオ・ブスケッツは「この結果は確かに公平な評価だ。カディスは素晴らしいスタイルでゲームプランをやってのけた」と振り返った。カディスの2点目はラングレのミスだが、バルセロナの得点もオウンゴールだった。バルセロナは無策で、自滅ともいえる形で成す術なく敗れた。タイトル獲得など夢のまた夢だろう。

 戦力差があっても、アルバロ・セルベラ監督が4年半以上かけて築いてきた戦略で埋めることができる。カディスにとってはレアル・マドリード戦に続くジャイアントキリングとなったが、2度もやってしまえば偶然とも運とも言えない。

(文:加藤健一)

【了】

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