驚異のチームがある。多くが22歳未満、まるでポルトガルのチーム…ウォルバーハンプトンの哲学に迫る【謀略家ヌーノという男・前編】

「プレミアリーグ謀略者たちの兵法」と題してプレミアリーグの監督たちを特集した12/7発売『フットボール批評issue30』から、2年連続でプレミアリーグ7位に導き、2019/20シーズンにはペップ・グアルディオラ監督のマンチェスター・シティ相手にダブルを達成したウォルバーハンプトンを率いる監督ヌーノ・エスピーリト・サントにポルトガル人記者が迫った記事を、一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:ジョゼ・フレイタス)

2020年12月08日(Tue)10時00分配信

text by ジョゼ・フレイタス photo Getty Images
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長期的なプランで成長するクラブ

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【写真:Getty Images】

 中国の投資会社フォースン・インターナショナル(復星国際)は2016年7月、ウォルバーハンプトンをスティーヴ・モーガンから買い取った際、代理人ジョルジュ・メンデスとタッグを組むことにした。

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 復星国際はまずクラブのチェアマンにジェフ・シーを任命した。チェアマンのクラブに対する方針は、競争力を持ったチームとなり、順位を上げていくこと。プレミアリーグに復帰するために4500万ポンド(約63億円)の投資を行うということ。メンデスは中国企業の期待に応えようとした。そのために監督と数人の選手を紹介した。その監督こそがヌーノだった。

 ウォルバーハンプトンでは、バレンシアや、ポルトの時とは異なり、ヌーノはすぐに結果を求められるようなことはなかった。復星国際とメンデスがヌーノに伝えたクラブのプランとは中期から長期的な視野に立ち、その中で結果を出すことであり、ヌーノも自分の考えをチームに植え付ける時間があることを知ったのだ。

 2017年、ヌーノのウルヴス監督就任が決まると、UEFA監督ライセンスを取りにいったスコットランドで知り合った、ヌーノよりも10歳年下であるイアン・キャスロに連絡をとった。二人はスコットランド時代から友情を育み、キャスロはアシスタントコーチとしてリオ・アヴェからバレンシアに至るまでヌーノ監督に付き添っている。

 その後キャスロはスコットランドリーグ1部のハーツ(ハート・オブ・ミドロシアン)の監督を務めるが、ウォルバーハンプトンで再びヌーノとともに働くことになったのだ。ヌーノの監督としての成功を支えてきたコーチングスタッフはリオ・アヴェ時代に築いた信頼がもとになっており、クラブは変わっても同じスタッフメンバーで固められている。

クラブを変えた2人の名手

 資金の出所は中国企業であったが、ウルヴスはポルトガル人選手たちのチームと呼んでもよかった。ヌーノが監督に就任した2017/18シーズン、すでに7人のポルトガル人選手がいた。

 FWのエウデル・コスタとイヴァン・カヴァレイロ(彼はすでに前シーズンに加わっている)さらにロデリック・ミランダ、ルベン・ヴィナグレ、ルベン・ネヴェス、ペドロ・ゴンサウヴェス、ディオゴ・ジョッタ。

 多くの選手たちがまだ若い、22歳にも満たない選手たちである。ルベン・ネヴェスの躍動感溢れるプレーと、スピードがありゴールを決めるカヴァレイロとエウデル・コスタにより、ウォルバーハンプトンはチャンピオンシップで優勝を果たし、プレミアリーグへの昇格を決めた。

 プレミアリーグへの昇格を果たしたことで、要求がさらに大きくなるのも当然のことだった。復星国際とメンデスのコンビはクラブの野望に答えなければいけないヌーノに対して、彼が希望する選手を集めた。

 2018年夏にはポルトガル代表の2選手がクラブにやってくることとなった。GKのルイ・パトリシオとMFのジョアン・モウチーニョである。ルイ・パトリシオはポルトガルのスポルティング一筋でやってきた選手だが、そのシーズン、チャンピオンズリーグ出場を最終節の敗戦により逃したことで、練習場に暴徒化したファンによる襲撃を受けている。そのことで他のクラブへの移籍を望んでいた。

 またジョアン・モウチーニョはモナコで優勝を果たし、次なる挑戦を探しているところだった。二人とも過去においてイングランドでプレーするのが夢だと話している。そんな二人だったから、ジョルジュ・メンデスがウルヴスの話を持ちかけるとすぐに前向きになった。

(文:ジョゼ・フレイタス)

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30号_表紙_fix

『フットボール批評issue30』


定価:本体1500円+税
プレミアリーグ謀略者たちの兵法

≪書籍概要≫
監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。
BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。



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【了】

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