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そして、ウォルバーハンプトンはどう変わった? 絶大すぎる名手たちの存在感【謀略家ヌーノという男・後編】

「プレミアリーグ謀略者たちの兵法」と題してプレミアリーグの監督たちを特集した12/7発売『フットボール批評issue30』から、2年連続でプレミアリーグ7位に導き、2019/20シーズンにはペップ・グアルディオラ監督のマンチェスター・シティ相手にダブルを達成したウォルバーハンプトンを率いる監督ヌーノ・エスピーリト・サントにポルトガル人記者が迫った記事を、一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:ジョゼ・フレイタス)

text by ジョゼ・フレイタス photo by Getty Images

ジョアン・モウチーニョがもたらしたもの

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【写真:Getty Images】

 プレミア挑戦1年目にルイ・パトリシオという、ユーロ優勝を果たしたポルトガル代表の国際的なGKを得たことでウルヴスはプレミアリーグにおいてシーズンを通じて46失点に押さえることができた。この数字は20チーム中5番目に少ないものであり、失点数でウルヴスよりも少ないのはマンチェスター・シティ、リヴァプール、チェルシー、トッテナムの4チームだけだった。

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 また中盤に優れたヴィジョンとボールコントロールを持つジョアン・モウチーニョが加わったことで、中盤は安定しボールはよく回った。彼の経験が活かされ、これまで以上に高いクオリティを見せた。ルベン・ネヴェスは前シーズンもエリア外からの美しいシュートを見せ活躍していたが、モウチーニョが加わったことでさらに輝く存在となった。

 モウチーニョは公式戦46試合中44試合に出場。モウチーニョの存在は相手チームにより困難をもたらすことになった。小柄なモウチーニョはあたかも壊れやすく、相手はもろい存在にも感じたかもしれない。しかし、モウチーニョはチームの気持ちを映し出す鏡のような存在となった。つまり身体は小さくとも勝利に対する意欲はとてつもなく大きかったからだ。

 ディオゴ・ジョッタはいわゆるヌーノ・エスピーリト・サント監督とのパッケージとしてジョルジュ・メンデスがジェフ・シリ会長に売り込んだのでありヌーノとともに1年目はチャンピオンシップを戦っている。サイドアタッカーのみならずトップやトップ下もこなす。

 彼の長所はすでにパソス・デ・フェレイラ時代から示してきたが、スピードがあり、ドリブルがうまいが、DFライン背後へのフリーランニングも長けている。そしてシュートもうまい。初年度に18得点を挙げたが、プレミアリーグ昇格年にも10得点を決めてチームの最多得点者となっている。

絶大! ラウール・ヒメネスの存在感

 ポルトガル人ではないが、ポルトガルリーグで活躍してきたメキシコ人のラウール・ヒメネスの存在も大きい。彼はベンフィカのFWとして3シーズンプレーしている。ベンフィカにはブラジル人のジョナスがいて、ポジション争いを続けてきていた。3シーズンで31得点を決めていたが、彼自身もさらなる飛躍を希望したため、ウルヴスへのレンタルの話がでると即答でOKしたという。

 プレミア昇格1年目から加わったメキシコ人アタッカーは適応に少し苦労したが、時間とともにチームメイトとのコンビネーションもよくなりゴールを量産するようになった。その後の公式戦では20試合に出場し10得点。プレミアリーグでのチーム総得点47点のうち13ゴールを決める活躍を見せた。

 ラウール・ヒメネスの決定力は、ディオゴ・ジョッタではなく、もう1人のアタッカーであるスペイン人のアダマ・トラオレに支えられていた。トラオレはフィジカルが強くスピードのある選手だ。

 そしてまたヌーノ監督にとって秘密兵器的な存在でもあった。常に先発するわけではないが、ほとんどいつもベンチスタートで途中からピッチに立った。チームの重要な存在へとなっていった。

 トラオレは右サイドからセンタリングをしてチャンスを作り、それを多くの場合ラウール・ヒメネスが決めた。トラオレとともに、ディオゴ・ジョッタ、モウチーニョ、ルベン・ネヴェスによりウルヴスは攻撃のレパートリーを持つことになり、プレミアリーグでも有数の攻撃陣を構成するに至ったのだ。

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30号_表紙_fix

『フットボール批評issue30』


定価:本体1500円+税
プレミアリーグ謀略者たちの兵法

≪書籍概要≫
監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。
BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。



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【了】

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