自らもプレーした「4番」へのこだわり
グアルディオラのチームにおいて、中盤3人の底に位置する「4番」としてプレーする選手は、ある種のプレッシャーを感じずにはいられない。何よりこのポジションは、グアルディオラ自身が選手としてのキャリアを通してプレーし、その位置の選手に求められる役割を再定義してみせたポジションである。
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伝統的にはこのポジションでプレーする選手は、純粋に守備的な選手だと見なされていた。相手チームの攻撃を食い止めるとともに、より前の選手にボールを回す役割が課されていた。
だが、サッカー界に存在する他の多くの事象と同じく、これを変えてしまったのはヨハン・クライフだった。「4番」が守備だけでなく攻撃時にもカギを握る存在となることに、クライフはとにかくこだわっていた。
グアルディオラは選手時代、ある時、「シングルボランチとダブルボランチのどちらでプレーしたいか?」と尋ねられた。中盤の底を一人で担当するか、もう一人別のMFと並んでプレーするかのどちらかだ。
彼の答えは、迷わず「シングルボランチ」だった。自分のいる位置と同じラインに2人目の選手がいれば、ボールを持った時のスペースが狭められてしまい、大事なパスコースが消されてしまうとグアルディオラは強く確信していた。一人のMFが中盤の底からコントロールすることに価値があるというこの信念を、グアルディオラは現役時代から監督時代に至るまで持ち続けてきた。
バルセロナのBチームで指導者としての修行を積んでいた頃、セルヒオ・ブスケツという若く才能ある「4番」がチームにいたことはグアルディオラにとって幸運だったという見方もある。だが、これを幸運だと考えるのは結果論でしかないかもしれない。ブスケツがそのキャリアを通してワールドクラスのMFに成長していったことに疑問の余地はないとしても、一方で彼の選手としての成長にグアルディオラが監督として及ぼした影響も無視するわけにはいかないからだ。
グアルディオラのゲームモデルを体現する存在とは?
バルセロナBでも、その後のバルセロナでも、グアルディオラの手元には天性の「4番」がいた。だが、バイエルンの監督就任当初は、この不可欠な役割に最適な選手を見極めるのに苦労することになった。
最初は同じスペイン出身のハビ・マルティネスが試されたが、グアルディオラはCBこそが彼にとって最適なポジションであることをすぐさま見抜いた。最終的にグアルディオラはある種のコンビネーション方式に落ち着き、シャビ・アロンソやラームといった選手がローテーションの形で「4番」を務めることになった。
ブスケツもアロンソもラームも、同世代の中でトップレベル中のトップレベルの選手だ。グアルディオラほどの戦術的見識を持った指揮官が、これほど能力の高い重要な選手を選んでこの役割を託したということ自体が、彼の戦術システムの中で「4番」が持つ重要度の高さを示している。
事実上、このポジションの選手は、ピッチ上でグアルディオラのゲームモデルを体現する存在となる。彼のチームにおいて「4番」はプレーのリズムを規定し、マイボール時の攻撃パターンを決定する選手となる場合が多い。より前のエリアに位置する創造的な選手の方が、決定的な仕事をして注目を浴びることが多いとしても、グアルディオラのチームで「4番」が果たす役割は軽視するわけにはいかない。
(文:リー・スコット )
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