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リバプール対マンU、頂上決戦で何が起きていたのか? ポグバが見せた野心と「良い兆候」【分析コラム】

プレミアリーグ第19節、リバプール対マンチェスター・ユナイテッドが現地時間17日に行われ、0-0の引き分けに終わった。首位攻防戦は白熱した展開に。首位をキープしたユナイテッドは、優勝争いの主役に恥じない試合を見せた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

歴史と伝統の頂上決戦

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【写真:Getty Images】

 イングランド史上最多となる20度のリーグ優勝を経験しているマンチェスター・ユナイテッドと、それに次ぐ19度のリバプール。イングランドで最もトロフィーを掲げてきた2クラブだが、互いがともに強かった時代はあまり多くない。群雄割拠のイングランドでは、お互いに栄枯盛衰を経験している。

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 1970年代からの約20年で11度のリーグ制覇を成し遂げたリバプールに対し、ユナイテッドは67年から26年間もの間、タイトルから遠ざかっている。しかし、1992年にプレミアリーグが発足すると、アレックス・ファーガソン監督の下で強さを取り戻す。ユナイテッドが21年間で13度のリーグ優勝に輝く一方、リバプールはプレミアリーグで1度も優勝できずにいた。

 しかし、ユルゲン・クロップがリバプールを立て直し、欧州制覇と30年ぶりのリーグ優勝を達成。ファーガソン退任以降優勝争いから遠ざかるユナイテッドも、ファーガソンが築き上げたDNAを継ぐオーレ・グンナー・スールシャール監督の下、かつての強さを取り戻し始めている。

 プレミアリーグは17試合を終え、ユナイテッドが2位リバプールを3ポイント上回っていた。そしてこの日、前半戦最後の大一番を迎えている。

進む各チームのリバプール対策

 ユナイテッドはさほど驚きのない11人を先発メンバーに起用したが、いつもとは配置が異なっていた。左サイドに置くことの多かったポール・ポグバを右に置き、左にはアントニー・マルシャル。エディンソン・カバーニをベンチに置き、マーカス・ラッシュフォードを1トップで起用している。

 怪我人の多いリバプールは若いリース・ウィリアムズやカーティス・ジョーンズをベンチに置き、ジェルダン・シャキリを中盤に、センターバックにはファビーニョの相棒としてジョーダン・ヘンダーソンを指名。経験値のあるメンバーで好調なユナイテッドに立ち向かっている。

 リバプールは3戦未勝利と苦しんでいる。フィルジル・ファンダイクの不在や連戦によるパフォーマンスの低下も指摘されるが、各クラブのリバプール対策が進んでいるのも一因である。

 リバプールは両サイドバックが武器であり、生命線でもある。右のトレント・アレクサンダー=アーノルドから精度の高いロングボールを左のアンドリュー・ロバートソンやサディオ・マネに送る。当然、各チームはこれを封じようとする。ロバートソンにマンマークを敷き、マネの対面には空中戦に強いサイドバックを配置。アレクサンダー=アーノルドの背後を取るために、突破力に優れるウインガーを左に起用するというのは常套手段になりつつある。

リバプールの得点力不足

 蓋を開けてみると、ユナイテッドの対応は通常のそれとは少し異なっていた。ポグバがサイドに流れるシーンは少なく、サイドはアーロン・ワン=ビサカに任せていた。サイドに流れたサディオ・マネに対してはワン=ビサカがついていき、中央ではヴィクトル・リンデレフが対応している。

 ラッシュフォードの1トップ起用はDFラインの裏を突くためだった。中盤を本職とする2人がセンターバックを務めるDFラインの裏を再三にわたって突いていたが、前半だけでオフサイドが4度。リバプールのラインコントロールが奏功している。

 ユナイテッドは両サイドバックの優れた対人守備と、両センターハーフの的確なカバーリングで、リバプールに隙を見せなかった。昨季から目覚ましい活躍を見せるフレッジとスコット・マクトミネイのコンビはこの日も輝いており、ピッチの至るところに顔を出して相手の攻撃を封じていた。

 リバプールは最後までゴールネットを揺らせず、未勝利は4試合連続となった。この3試合で45本のシュートを放って無得点。枠内シュートはわずか8本で、ウェストブロム戦の12分以来、6時間近く無得点が続いている。

ポグバの野心と「良い兆候」

 ポグバは試合前、「僕たちはプレミアリーグ王者を倒したい」とイギリス『スカイスポーツ』に対してコメントしている。

「もちろん、現時点で僕たちが彼らと同じレベルだとは言えない。彼らはプレミアリーグを勝ち取り、今も勝ち続けている」。ポグバはリバプールへのリスペクトを見せつつも、「ベストになりたければベストを倒すしかない」という言葉には、勝ちにいく姿勢が感じられた。

 これは試合後の指揮官の言葉にもつながる。「我々はもっとうまくプレーできると知っている。正直なところ、今はがっかりしていると言わざるを得ない」と悔しさをにじませている。「(試合)終盤は勝てるという気持ちもあった」とも語っている。

 プレミアリーグでの両指揮官の対決はこれが4度目となり、リバプールの1勝3分と拮抗している。これまではユナイテッドが防戦一方という試合も多かったが、この試合では明確に勝利を目指していた。ユナイテッドは確実に力をつけている。リバプールが連覇を目指すうえで、ユナイテッドは最大の敵になるだろう。

 リバプールは4位に転落。レスターが3位に浮上し、1試合消化が少ないマンチェスター・シティがユナイテッドを2ポイント差で追っている。昨季はリバプールの独走となったが、今季は激しいデッドヒートが繰り広げられそうだ。

「アウェイでの勝ち点1を残念に思っているのは良い兆候だ」。そう試合を振り返るスールシャールは「今の時期の順位はどうでもいい。大事なのは5月の順位だ」と前を向く。しかし、現役時代に6度のプレミア制覇を経験したスールシャールの言葉とは対照的に、ユナイテッドが優勝争いの主役になりつつあるのは間違いない。

(文:加藤健一)

【了】

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