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ジダン監督ではレアル・マドリードに未来はないのか? 指揮官不在で掴んだ大勝に希望が感じられない理由【分析コラム】

ラ・リーガ第20節、アラベス対レアル・マドリードが現地時間23日に行われ、1-4でレアルが勝利を収めた。ジネディーヌ・ジダン監督が新型コロナウイルスの影響で不在となる中、レアルは公式戦4試合ぶりとなる勝利を掴んでいる。しかし、ジダン監督を待ち構えるミッションは限りなく難しい。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ジダン解任論は強まる

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【写真:Getty Images】

 ジネディーヌ・ジダン監督の立場が危うくなっている。

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 ちょうどラ・リーガの折り返し地点となる19試合目、レアル・マドリードは降格圏に沈むオサスナに痛恨のスコアレスドロー。さらに、14日に行われたスーペル・コパ準決勝で、アスレティック・ビルバオに1-2と敗れてしまった。

 追い打ちをかけるように、20日のコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)ではセグンダB(3部)に所属するアルコジャーノと対戦し、延長戦の末に敗北。2つも下のカテゴリーの相手に敗れ、1週間で2つのタイトルを逃してしまった。

 現地メディアは解任論を展開。ジダン監督もアルコジャーノ戦の会見で、「いつだって、それ(去就)は負けたときに言われるものだ。今後数日で何が起こるか見なければならないだろう」とコメントしている。

 そんな中で迎えたアラベス戦は、まさにジダン監督の進退を左右する一戦になる予定だった。しかし、22日にジダン監督に新型コロナウイルスの陽性反応が出たことが発表された。症状が出ていないことは幸いだが、アラベス戦の指揮を執ることができなくなった。

 ジダン監督が指揮を執ってアラベスに敗れるようなことがあれば、その立場はさらに危うくなっていたかもしれない。しかし、不在となれば話は変わってくる。この結果如何で決断が下される可能性は限りなく低かった。

アラベス戦の快勝

カリム・ベンゼマ
【写真:Getty Images】

 蓋を開けてみれば、レアルはアラベスに快勝した。前半だけで3得点を挙げ、試合の大勢を早々に決めている。

 先制点は15分。トニ・クロースの右CKをカゼミーロが頭で合わせた。カゼミーロはこれが今季4得点目で、うち3得点は頭で決めている。セルヒオ・ラモスが怪我で不在の中、カゼミーロの空中戦の強さは頼りになった。

 41分にはカリム・ベンゼマがゴールネットを揺らした。負傷したダニ・カルバハルに代わって右サイドバックを務めるルーカス・バスケスが中央に低いボールを入れる。これをエデン・アザールがスルーすると、これを受けたベンゼマが右足を振り抜いた。

 決定的な3点目は前半アディショナルタイムに生まれる。アラベスのビルドアップにプレッシャーをかけてクロースがボールを奪うと、逆サイドに展開。DFラインの背後を取ったアザールが抜け出し、左足で決めている。

 アラベスは59分にCKから1点を返したが、反撃はそれだけ。70分には左サイドに流れていたベンゼマがルカ・モドリッチから正確なフィードを受ける。そこからカットインして右足を振り抜いて試合を終わらせている。

 レアルのパフォーマンスは素晴らしかった。4得点は10月31日のウエスカ戦以来、今季2度目。監督代行を務めたダビド・ベットーニ第2監督は試合後に、「チームの姿勢とプレーの様子にジダン監督はとても喜んでいた」と伝えている。

 ピンチを救ったのは、ジダン監督に信頼を寄せてきた選手たち。試合前のベットーニの言葉を借りれば、「団結したチームであることを証明した」試合だった。

希望のない大勝

 ジダン監督が不在の中で、レアルは勝利を収めた。とはいえ、ベットーニ第2監督は試合中にもジダンとコンタクトを取っていたことを明かしている。ジダンのチームが勝利したということに変わりはなく、「ジダンが不在でも勝てる」という論調には少なくともならないはずだ。

 とはいえ、問題は解決していない。むしろ、アラベス戦は逆説的にレアルの限界を露わにしている。

 コパ・デル・レイ敗退は、控え選手のパフォーマンスの低さが原因の1つとなった。アルコジャーノ戦ではベンゼマやクロースがベンチスタートとなり、イスコやマルセロ、マリアーノ・ディアスらが先発。前半に先制したが追加点を奪えず、80分に追いつかれた。主力を投入しても得点を奪えず、延長戦に退場者を出した相手に失点して敗れている。

 アルコジャーノ戦から中2日で行われたアラベス戦では、怪我から復帰を目指すセルヒオ・ラモスとカルバハルを除けば、ベストメンバーが起用された。アザールがおよそ3か月ぶりにラ・リーガでゴールを決めたのは朗報だが、目立った活躍を見せたのは結局ベテランたち。ベンゼマが2得点でクロースが2アシスト。局面を打開するパスを出していたのはモドリッチだった。

 2つのコンペティションに敗れたことで、今月は6試合と余裕のある日程となった。フレッシュな状態でプレーできるのであれば、ベテランたちが高いパフォーマンスを発揮できることは誰しもが知っている。アラベス戦で大勝したことで、結果的に主力と控えの実力差を大きく見せてしまった。

 レアルに可能性が残っているのはラ・リーガとUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の2つ。前者は4ポイント差の2位だが、首位を走るアトレティコは2試合も消化が少ない。レアルに取りこぼしは許されない状況となっており、ターンオーバーするのも難しくなるだろう。

 それに追い打ちをかけるように、2月からはCLが始まる。どちらも獲れなければジダンの未来はレアルにないかもしれない。しかし、頼れるのはベテランしかいない。ジダンにとっては限りなく難しいミッションが待ち構えている。

 アラベス戦の大勝はジダン監督の延命措置になったが、そこに希望はない。

(文:加藤健一)

【了】

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