久保建英は輝きを失った。激しいゲーム展開の犠牲に、やってはいけなかった一つの対応とは?【分析コラム】

ラ・リーガ第20節、アスレティック・ビルバオ対ヘタフェが現地時間25日に行われ、5-1でホームチームが大勝している。日本代表MFの久保建英はこの日も先発出場。69分までプレーした。ただ、ビルバオ戦では直近2試合と比べて輝きを放てたとは言い難い。守備面でも課題は見つかった。(文:小澤祐作)

2021年01月26日(Tue)11時34分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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要塞サン・マメスで散る

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【写真:Getty Images】

 久保建英、カルレス・アレニャ加入後のヘタフェは今季初のリーグ戦2連勝を飾っている。「今冬の補強が大成功!」と決定づけるのは時期尚早だが、ホセ・ボルダラス監督が「彼らは早くもヘタフェを助けてくれている」と話す通り、バルセロナのカンテラ(下部組織)出身者二人が現時点でチームに少なからず可能性をもたらしているのは確かだろう。

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 と、調子が上向いてきたかに思えたヘタフェだったが、現地時間25日、今季のスーペル・コパを制したアスレティック・ビルバオ相手に厳しい現実を突きつけられることになった。

 バルセロナやレアル・マドリードが何度も苦戦してきた要塞サン・マメスに乗り込んだヘタフェは、開始わずか20秒で先制に成功。右サイドからのクロスをマルク・ククレジャが頭で押し込んだ。このシーンには、右サイドハーフで先発を飾った久保も絡んでいる。

 しかし、ビルバオもすぐに反撃。12分、イケル・ムニアインが左からクロスを送ると、ゴール前に飛び込んだラウール・ガルシアが右足ボレーでゴール左隅に沈め、同点に追いついた。

 その後しばらくはビルバオペースだったが、ヘタフェは29分にPKを獲得。しかし、ハイメ・マタが蹴ったボールはGKウナイ・シモンがセーブ。勝ち越しとはならなかった。

 このPKにより、流れは完全にビルバオへ傾いた。そして後半、猛攻を浴びたヘタフェの防波堤は無情にも決壊することとなったのである。

 50分にジェライ・アルバレスに得点を決められ逆転を許すと、61分にも失点。その後マルセリーノ・ガルシア監督の交代策も当たってしまい、ヘタフェは75分、そして82分にも失点を招くことに。リーグ戦7試合連続で複数失点なしだったヘタフェは、この試合だけで大量5失点を喫することになった。

激しい展開で久保の持ち味は出ず

久保建英
【写真:Getty Images】

 ヘタフェ加入後の2試合でビジャレアル時代に落とした評価を取り戻しつつあった久保も、ビルバオ戦ではほとんど仕事を与えられなかった。シュート数は0本に終わり、ボールタッチ数はGKを除いてスタメン中3番目に少ない45回。データサイト『Who Scored』のレーティングは「6.0」、『Sofa Score』ではチーム内ワースト2位の「5.6」という評価が与えられている。

 ビルバオ戦は久保にとって“得意分野”ではなかった。日本代表レフティーがピッチに立っていた69分間を改めて振り返ると、そう強く感じる。

 ヘタフェとビルバオに共通していたのは、ハイライン&ハイプレスがベースで、丁寧なパスを多く取り入れてのボール保持を基本とはしていないということだった(パス成功率は両者75%以下)。お互いにボールを奪ったらシンプルに相手のハイライン裏を狙う。つまり速攻だ。そのため、攻守の入れ替わりはかなり激しく、試合が落ち着く時間帯がかなり少なかった。

 その中で優勢だったのはビルバオだ。彼らには世界屈指のスピードを誇るスペイン代表FWイニャキ・ウィリアムズがおり、1本のパスで深さを作れる。ヘタフェからすると当然、深さを作られれば相手ゴールまでの距離は広がる。カウンターを繰り出すことが必然的に難しくなっていたのだ。

 たとえ相手のロングボールをカットしても、ビルバオはセカンドボールへの反応が非常に速い。ヘタフェとしてはもちろん自陣低い位置でボールを失うことは避けたいので、シンプルに前へ逃げるボールが増える。だが当然、そのボールがすべてカウンターへと繋がるわけはなく、相手に回収されてまたビルドアップされる。この繰り返しが非常に多かった。

 ここまでの流れでも分かる通り、そもそもヘタフェは攻撃陣にボールが収まる回数自体が少なかった。そうなると、スペースより足下で勝負できる久保が活きることも難しくなる。久保だけではない。同じく非凡な足下のスキルを持つアレニャの持ち味も発揮されにくい展開となっていたのだ(事実、アレニャのタッチ数は久保より少ない42回)。

 もちろん、ビルバオ戦の久保に関しては厳しい評価になる。直近2試合と比べて輝きを失っていたのは事実だし、ゴールやアシストといった結果も残せていない。しかし、ボールを持った際のアクションがそこまで悪かったとは言い切れず、チームとしてもっとうまくやれていれば…と感じたのもまた事実だ。攻撃面に関して全てをネガティブに捉えることはできないのではないだろうか。

疲労がたまる中どこまで強度を高められるか

 ただ、そんな久保にも指揮官の信頼を失いかねないプレーがあった。61分のR・ガルシアの得点、つまりヘタフェの3失点目だ。

 I・ウィリアムズがロングパスに反応し深さを作り、サポートにきたムニアインへパス。この時同選手には右サイドバックのダミアン・スアレスとセンターバックのダコナム・ジェネ2枚が対応していた。

 囲まれるムニアインの後方からは左SBのバレンシアガがサポート。実はこの時、バレンシアガはゆっくりと戻る久保の背後から出てきたのだが、久保はボールキープするムニアインに目線が行っており、バレンシアガの確認が遅れマークにつけず。その後、結局フリーとなったバレンシアガにボールが渡り、ムニアインに対応していたスアレスは間に合わずクロスを上げられた。

 この時の久保の問題点は2つある。

 まず、ムニアインに集中してしまいバレンシアガの確認が遅れたこと。

 もう一つはプレスバックがかなり遅かったことだ。

 反対サイド、久保と同じくサイドハーフに入ったククレジャはI・ウィリアムズにボールが渡った瞬間にスプリントして自陣深い位置へ戻っている。それに対し久保は自サイドにボールがあってもジョグしながら戻り、自身の背後から出てきたバレンシアガへマークに行くことすらなかった。

 クロス対応の甘さを見せた守備陣の責任もあるが、久保の反応一つでクロスを防げていただけに残念なシーンではあった。ビジャレアル時代にもウナイ・エメリ監督から「タケ!」と声が飛び慌てて戻る、といったことがあったが、疲れが溜まってくる中でどれだけ頑張れるかは久保の課題だろう。とくにヘタフェでは、守備意識の高さを十分に求められる。ボルダラス監督に起用され続けるには、そうした部分でもアピールしていかなければならない。とにかく3失点目のシーンの対応はやってはいけなかった。

 もちろん試合に絡めているのは良いことである。ゲームを重ねれば自ずと課題は見えてくるし、それを改善する力も身に付く。ビルバオ戦では厳しい現実を突きつけられたが、この経験をプラスに変えられるか。

(文:小澤祐作)

【了】

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