暴言合戦…ミラン対インテルで何が飛び交った? イブラヒモビッチとルカクの激しい口論はなぜ起こったのか【分析コラム】

コッパ・イタリア準々決勝、インテル対ミランが現地時間26日に行われ、2-1でホームチームが勝利している。後半途中までは互角の展開となっていたが、ミランは退場者を出してから防戦一方となり、無念の敗退。試合を壊してしまったのはズラタン・イブラヒモビッチだった。(文:小澤祐作)

2021年01月27日(Wed)11時45分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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エリクセンの鮮やかFKに沈む

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【写真:Getty Images】

 3日前にサン・シーロで行われたアタランタ戦はミランにとって屈辱的な試合だった。ヨシップ・イリチッチに無双されて内容でも結果でも相手を大きく下回り、ゲーム後にはアタランタMFマルテン・デ・ローンに動画付きの煽りツイートもされている(後ほど詳細を記載)。

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 そのアタランタ戦の苦い記憶を消し去るためにも、現地時間26日のコッパ・イタリア準々決勝、インテル戦では何としても勝利を手に入れたかった。しかし、ミランはここでも屈辱的な敗戦を喫してしまうことになった。

「コッパ・イタリアは重要視すべき大会。優勝を狙っている」と話したステファノ・ピオーリ監督はこの試合でも4-2-3-1システムを採用。アタランタ戦のトップ下起用が不発に終わったスアリオ・メイテをダブルボランチの一角で使い、最前線にはズラタン・イブラヒモビッチが入ることになった。

 ミランは立ち上がり、高い位置からボールを奪いに行く姿勢を貫き丁寧なビルドアップを狙うインテルを苦しめた。その後シモン・ケアーがプレー続行不可能となるアクシデントに見舞われたものの、32分に先制弾を奪取。アレクサンダル・コラロフの甘い守備対応を見逃さなかったイブラヒモビッチがゴールネットを揺らしている。

 1-0のまま後半に入ることができたミランだが、58分に悲劇。イブラヒモビッチがまさかの退場処分となったのである。

これで数的不利な状況に追い込まれたミランは、インテルの猛攻を浴びることに。そして69分にPKを献上すると、これをロメル・ルカクに冷静に決められ同点に追いつかれた。なお、ルカクはこれでインテル加入後のミラン戦すべてで得点を記録するという結果に。新たなミランキラーと言っていいだろう。

 その後ミランはGKチプリアン・タタルシャヌのビッグセーブもあり何とか1-1のスコアを保っていたが、アディショナルタイムに被弾。途中出場クリスティアン・エリクセンに鮮やかなフリーキックを沈められてしまった。

 ピオーリ監督は最後まで選手に声をかけ続けたが、同点に追いつく時間も気力も残っていなかった。ミランは準々決勝敗退、公式戦はこれで2連敗となっている。

イブラヒモビッチの退場がすべて

ミラン
【写真:Getty Images】

 ここまで試合を簡単に振り返ってきたが、やはりこの日の大きなポイントとなったのは58分、イブラヒモビッチの退場だろう。好セーブを連発したタタルシャヌが「残念ながらイブラの2枚目のイエローが試合を変えてしまった」と話し、ピオーリ監督も「11人対11人であれば、どんな結果でもおかしくない試合だった」と振り返った通り、戦術云々ではなく、これがすべてだった。

 スタメン出場したイブラヒモビッチはこの日も素晴らしかった。最前線におけるパワーとオーラは相変わらず別格で、32分にはコラロフの詰めが甘いとみると迷わず右足を振り抜きゴールネットを揺らしている。インテルにとって間違いなく危険人物となっていた。

 しかし、前半終了間際に起こったルカクとの口論が原因で提示されたイエローカードがあまりに余計だった。

『フットボール・イタリア』などの複数メディアによると、口論の発端はイブラヒモビッチにあったようだ。アレッシオ・ロマニョーリにアフターチャージを受けて怒りを露わにするルカクをイブラヒモビッチは笑みを浮かべながら見ていた。それに対しルカクは「笑うのをやめてくれ」と言ったようだが、イブラヒモビッチがこれに反撃したとのこと。

 イブラヒモビッチはルカクに「ブードゥー(教)でもやってろよ」と発言。この時ルカクのことを「ロバ(Little Donkey)」と言っていたようだ(ちなみにブードゥー教は宗教と規定されることもあるが、教義や教典などもないため民間信仰といった方がいいらしい)。

 ルカクが激怒した理由は「ロバ」を人種差別的な意味として解釈したこと、そして「ブードゥー」というワードにある。

 ルカクはエバートン在籍時、クラブからの契約延長オファーを断っているのだが、その理由が「ブードゥーのお告げ」によるものだと報道されていた。同選手がアフリカへ巡礼に出かけていた母親に電話をしたところ、ブードゥーのお告げとして「エバートンを退団し、チェルシーと新たに契約すべきと言われたようだ」と、当時エバートンの株式49.9%を保有するイラン人のファラド・モシリ氏がメディアに話したのである。

 しかし、ルカク側はこれを全否定。そもそもベルギー代表FWはカトリック教徒であり、ブードゥーによる影響は皆無だとし、モシリ氏に対しては法的措置も検討中と明かしていたなど、当時は問題となっていたのだった(事実、ルカクはチェルシーではなくマンチェスター・ユナイテッドに移籍)。

 つまりルカクにとって「ブードゥー」と発言されることは自身だけでなく、母親もバカにされているのと同じこと。そのためルカクはイブラヒモビッチに対し我を見失ったように怒ったのである。なお、ルカクはイブラヒモビッチに対して「お前とお前の嫁をf**kしてやる!」などと言っていたようだ。

 こうしてルカクを挑発した結果イエローカードを貰ったイブラヒモビッチは、後半に入りファウルを犯して退場。この日は試合を壊してしまった。

 イブラヒモビッチは相手を挑発することもあるし、その挑発に乗っかることも良くある。先日のアタランタ戦ではドゥバン・サパタに「そんなにPKが欲しいか」と言われ、「お前のキャリアよりも多くのゴールを決めている」と返している。なお、冒頭で記したデ・ローンの動画ツイートはそのコメントを残したイブラヒモビッチを煽るものである。

 ただ、試合中の舌戦は珍しいことではなく、むしろイブラヒモビッチの返し、いわゆる「イブラ節」が好きな人も多いはずだ。挑発したり、挑発し返したりすることもある意味サッカーの一部なので、それ自体がすべて悪いとは思わない。

 しかし、今回の挑発はさすがに度が過ぎた。本人は発言に人種差別の意図はないとしているが、人によってはそう捉えても不思議ではない内容であることは確かである。今回の件はそこまで大事にはならなそうだが、これまでピッチ内で輝かしい成績を残してきたイブラヒモビッチだけに、少し残念な結果となった。

 なお、イブラヒモビッチは試合後にチームメイトに向け謝罪している。

(文:小澤祐作)

【了】

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