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アーセナルはジリ貧状態。アルテタ監督の限界か、生みの苦しみか…、EL敗退で浮き彫りになる現状【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

UEFAヨーロッパリーグ準決勝2ndレグ、アーセナル対ビジャレアルが現地時間6日に行われた。試合は0-0の引き分けに終わったが、1stレグを2-1で勝利していたビジャレアルが決勝に進出。アーセナルは来季の欧州大会への出場が絶望的となった。(文:加藤健一)

理想的ではなかったが、悪くはない

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【写真:Getty Images】

 両者に明確な差があったわけではない。しかし、2試合を通して決勝進出に値したのはビジャレアルだったと思う。アーセナルが悪いとは言えないが、決勝に進むチームではなかった。

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 ハイプレスのコンセプトは1stレグの後半を踏襲していた。ビジャレアルのセンターバックがボールを持つと、アーセナルの3トップは相手の最終ラインの間にポジションを取ってパスコースを消した。ビジャレアルのダブルボランチに対しては、インサイドハーフが対応。アンカーのトーマス・パルティが余る形で自由を作らせないようにしていた。

 アーセナルはカウンターから何度かチャンスを作ったが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。キーラン・ティアニーとパブロ・マリは右サイドへのロングボールを積極的に蹴り、4-4-2で守るビジャレアルのブロックを横に揺さぶる。理想的な展開ではなかったが、悪かったとも言い切れない。

 しかし、最後の仕事をアーセナルはできなかった。ピエール=エメリク・オーバメヤンのシュートは2度もポストを叩き、エミール・スミス=ロウのチップキックもゴールの外に飛んだ。決めきれなかったのはビジャレアルも同じだが、ビジャレアルは0-0で良い。リスクをうまくコントロールして試合を閉じるのは、ウナイ・エメリ監督の得意とするところだった。

アーセナルはジリ貧

 アルテタ監督の就任からおよそ1年半が経った。昨季はシーズン途中で引き継いだ難しさがあり、プレミアリーグは8位。FAカップを獲ったので面目は保たれ、大型補強を敢行して今季に臨んでいる。

 しかし、今季の序盤戦でリバプールとマンチェスター・シティに敗れて上位争いから脱落。15位まで順位を落としたこともあった。4試合を残して勝ち点49、5位との勝ち点差は9ポイントで、UEFAヨーロッパリーグ出場権獲得は絶望的な状況にある。

「全員の仕事が精査されているだろう」

 アルテタ監督は試合後にそう述べている。もちろん、全員にはアルテタ監督自身も含まれる。EL出場権を逃せば、スカッド縮小や人員整理は避けられない。

 2015年10月にユルゲン・クロップ監督はリバプールに就任したが、リバプールは15/16シーズンを8位という順位で終え、翌シーズンの欧州の大会への出場権を逃している。しかし、リバプールはそこから2年連続で4位に入り、18/19シーズンは勝ち点97の2位でUEFAチャンピオンズリーグ優勝、昨季は30年ぶりの優勝を成し遂げた。タイトルを獲得するまでに、リバプールは生みの苦しみを味わっている。

 ELやCLへの参戦は財政的に大きな利益をもたらすが、チームビルディングを難しくさせる。特にELは木曜の夜に行われる。日曜にリーグ戦が予定されていれば、リーグ戦への準備はほとんどできない。アーセナルは4季連続でELに参加しているが、それがリーグ戦における苦戦に影響がないとは言えない。なんとかEL出場権は確保してきたが、ジリ貧状態に陥っていた。

 リバプールとクロップの前例は何も保証されないが、個人的にはアルテタ監督の続投が望ましいと思う。交代するのであれば、それ相応の代替案が必要で、首にするだけでは解決にならない。

(文:加藤健一)

【了】

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