アーセナルはなぜ、冨安健洋を右SB起用するのか? CBとSBの差異と満たすニーズ【真の現代CB像・前編】

2021年12月02日(Thu)10時57分配信

text by ジョナサン・ウィルソン photo Getty Images
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移籍直後にクラブの月間最優秀選手賞に輝いた日本代表DF冨安健洋の現状を分析しながら、真の現代CB像を浮かび上がらせる12月6日発売の『フットボール批評issue34』より「真の現代CBとは何か?」を発売に先駆けて一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:ジョナサン・ウィルソン、訳:山中忍)


「過保護」を必要としないだけの経験がある

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【写真:Getty Images】

 そこで、冨安である。188センチ・84キロの新DFは、最終ラインの中央でも見劣りしないだけの体格と、アウトサイドで上下動を行うための走力を兼ね備える貴重なCB兼SB。日本代表ではCBとして定位置を獲得しているが、クラブレベルでは、アビスパ福岡でユースから上がった当時から右のSBかストッパーでの起用が多い。

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 アーセナルで基本となっている4バックの中央で欧州のシーズンを戦ったと言える経験は、ボローニャでの2年間だけだ。プレミアの歴史には、SBとして始まったプロキャリアを一人前のCBとして終えた選手が少なくない。現在はテレビ解説者として活躍中で、冨安を「守備的DF」と評したジェイミー・キャラガーもその一人だ。

 しかし、アーセナルでの右SB起用の裏に、若いDFをトップレベルの水に慣れさせるには、CBよりもミスが致命的となりにくいSBが無難だとする一般的な思考があるとは思えない。確かに、23歳でプレミアに初挑戦中だが、「過保護」を必要としないだけの経験を、代表とセリエAのピッチで積んでいるCBが冨安でもある。

 ここ数年、アーセナルの補強には明確なロジックを見いだしにくいが、冨安のケースも、ベジェリンが移籍を望み、残る選択肢はセドリックとチェンバースというチーム事情の中で、最善と思われる選択肢が新DFの右SB起用だっただけのことかもしれない。

 しかし、理由はともあれ冨安は、右SBとしてチームのニーズを満たしている。移籍初戦となったノリッジ戦から、少なくとも及第点は与えられる約1時間のピッチ上。翌週、先発フル出場の皮切りとなった5節バーンリー戦(1対0)と、北ロンドンダービーを初体験した翌節トッテナム戦(3対1)では、10点満点で7点は与えられる出来を示した。3試合連続の零封勝利はならなかったが、冨安加入後の初失点は、地元ライバルに3点差をつけていた試合の終盤で被害は最小限だった。

『フットボール批評issue34』

<書籍概要>
定価:1650円(本体1500円+税)
教養としての現代サッカー
時期を合わせるかの如く欧州帰りの選手から「日本と欧州のサッカーは別競技」なる発言が飛び出すようになった。立て続けの印象が強いのは欧州から日本に帰還する選手が増えた証拠であろう。彼らが言いたいのは、欧州のサッカーは善、日本のサッカーは悪ではなく、欧州のサッカーは現代、日本のサッカーは非現代というニュアンスに近いのではないだろうか。もちろん、「組織」などのレンジの広い構造面も含めて……。
好むと好まざるとにかかわらず、現代サッカーの教養を身に付けない限り、「別競技」から「一緒の競技」に再統合することは断じてない。幸いにも同業界には現代サッカーを言語化できる日本人は少ないながらも存在する。攻撃的か守備的か、ボール保持かボール非保持かのようなしみったれた議論には終止符を打ち、現代か非現代か、一緒の競技か別競技かのような雅量に富む議論をしようではないか。

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【了】

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