無双状態→諸刃の剣…。潰される“5レーン“、次なる評価軸となるのは…【現代5レーン征討・後編】

2021年12月07日(Tue)10時30分配信

text by 龍岡歩 photo Getty Images
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好むと好まざるとにかかわらず、現代サッカーにおいて「5レーン」は定番化しつつある。ただし、進化が止まることを知らない欧州のシーンでは、5レーン対策が跋扈し始めているのもまた確かである。先月、『激レアさんを連れてきた。』に出演した著者が、次の一手「現代5レーン征討」を解説した発売中の『フットボール批評issue34』より「現代5レーン征討」を一部抜粋ぃて前後編で公開する。今回は後編。(文:龍岡歩)

プレミア最高勝ち点も「今は昔」に…

1206-マンC
【写真:Getty Images】

 つまりビルドアップの初手では[4-3-3]で対抗し、前線の5レーンまでボールを運ばれたらIHを一つ落として[5-2-3]へ可変させる。これでも前線には3枚の矢を残せているので自陣からのロングカウンターでも十分得点を狙えるだろう。実際に今季プレミア開幕戦におけるトッテナム対マンチェスター・シティがこの好例だった(試合はトッテナムが1対0で勝利)。

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 この試合でも[2-3-5]でボールを保持したシティだったが、失点シーンでは前線の5レーンにボールが入った瞬間、ボールサイドのSBメンディがオーバーラップを仕掛けている。メンディは中央に入って偽SBをやるよりもこのようにタッチラインを上下動するプレーが持ち味のSBだ。ペップとしてもこれは狙いの一つといえるプレーだったはずである。

図6
図6

 だが盤面で見れば前線が5レーン+SB(メンディ)となるので[2-2-6]の並びに変化。さらにメンディがクロスを上げようという瞬間、逆サイドで偽SBのポジションを取っていたカンセロがゴール前へ上がってきている。カンセロも極めて攻撃的なSBなのでこれはよく見られるプレーの一つだ。だが、この両SBの動きによりシティはクロスを上げた瞬間に[2-1-7]とでも言うべき並びになっていた(図6)。

 この局面、クロスが跳ね返された場合、セカンドボールには中盤で1枚になっていたフェルナンジーニョが対応するしかないのだが、すでに36歳を迎えたこのブラジル人アンカーにかつてのスペースカバーと鋭い寄せを期待するのは無理があった。[5-2-3]気味に守っていたスパーズはシティの2バックに快速自慢の3トップがカウンターで襲いかかり、最後はソン・フンミンがゴールを決めている。

 一時はその使い手の筆頭であるシティがプレミアリーグの最高勝ち点記録を塗り替えるなど無双状態だった5レーン戦術。しかし次第に対抗する守備戦術も進化している。もはや「諸刃の剣」にもなり得る状況が生まれ、拮抗してきているようにも見える。したがって今後の評価軸は5レーンができているか否か? ではなく、5レーンの攻守の運用バランスは適切か否か? に向けられるようになるだろう。

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<書籍概要>
定価:1650円(本体1500円+税)
教養としての現代サッカー
時期を合わせるかの如く欧州帰りの選手から「日本と欧州のサッカーは別競技」なる発言が飛び出すようになった。立て続けの印象が強いのは欧州から日本に帰還する選手が増えた証拠であろう。彼らが言いたいのは、欧州のサッカーは善、日本のサッカーは悪ではなく、欧州のサッカーは現代、日本のサッカーは非現代というニュアンスに近いのではないだろうか。もちろん、「組織」などのレンジの広い構造面も含めて……。
好むと好まざるとにかかわらず、現代サッカーの教養を身に付けない限り、「別競技」から「一緒の競技」に再統合することは断じてない。幸いにも同業界には現代サッカーを言語化できる日本人は少ないながらも存在する。攻撃的か守備的か、ボール保持かボール非保持かのようなしみったれた議論には終止符を打ち、現代か非現代か、一緒の競技か別競技かのような雅量に富む議論をしようではないか。

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【了】

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