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セリエA 2年前

ミランはあまりにも強すぎた。ボロボロだった3年前が嘘のよう…“王者の強さ”を取り戻せた理由は?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

凄まじかったのは…



 先述したことからも分かる通り、ミランは前半で勝負を決めた。その理由として挙げられるのは、凄まじいプレス強度である。

 アレッシオ・ディオニージ監督率いるサッスオーロは、ボールポゼッションを大事にする集団だ。これは前任者であるロベルト・デ・ゼルビによる影響が大きく、実際今季セリエAにおける平均ポゼッション率で、サッスオーロはナポリやインテルなどに次いで全体5位という高い位置につけている。

 そのサッスオーロに対し、ミランはいつも通りハイプレスを仕掛けた。しかしその強度は、優勝を掴みかけていたことも影響しているのか、普段以上に凄まじいものがあったと言える。

 7分には後ろ向きでボールを受けたマテウス・エンリケに対しサンドロ・トナーリがしつこくプレッシャーにいき、詰まらせたところでジルーがサンド。敵陣深くでボールを奪いきり、最後はラファエル・レオンの決定機に繋げていた。

 その後ミランは3点をマークするのだが、これは全て相手のボールを奪ったところから生まれている。

 1点目はマキシム・ロペスに対しラデ・クルニッチが寄せて外側に追い込んだところでレオンが詰めてボール奪取。そのままゴール前に侵入し、最後はジルーのゴールをお膳立てしている。

 そして2点目は、深い位置でボールを持ったジャン・マルコ・フェラーリに対しレオンがプレスを与えボール奪取。そこからドリブルでボックス内に侵入し、またもグラウンダーでジルーの得点を演出したのである。

 そして3点目。サッスオーロがGKコンシーリまでボールを下げると、ジルーが猛ダッシュでプレッシャー。そこからボールはM・ロペスに繋がるのだが、ここにクルニッチが詰めたことでまたも外に追い込む。この時点でトナーリ、レオン、そしてダビデ・カラブリアは目の前の敵を捕まえることができていたので、追い込まれたM・ロペスからすると逃げ場がない状態。そうこうしているうちにクルニッチがボールを奪いきり、右サイドを駆け上がったレオンにパス。そして最後はグラウンダーのクロスをケシエが押し込むことになった。

 ボール支配を基本とする相手に対し、まずはマンマークで制御し、詰めたところで2人目が素早く反応し奪いきる。ミランのこの強度は、サッスオーロにとって脅威でしかなかった。

 もちろんそれを可能にしたのは、前線の選手だけの頑張りに留まらない。最終ラインもしっかりと連動し、全体を間延びさせなかったことでサッスオーロを窮屈にさせた。実際、トモリとカルルの両センターバックは下がった位置でボールを引き出そうとするジャンルカ・スカマッカを何度も捕まえていた。

 先述した通り後半はさすがにペースが落ちていたが、前半で3点を奪えればそれも大きな問題にはならない。最初の45分間におけるミランは、本当に最強だった。

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