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セリエA 2年前

ミランはあまりにも強すぎた。ボロボロだった3年前が嘘のよう…“王者の強さ”を取り戻せた理由は?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

今季のミランの強さの理由は?



 チャンピオンズリーグ(CL)では他クラブに力の差を見せつけられる格好となったが、今季のミランの国内における戦いぶりは実に安定していた。最後は6連勝フィニッシュ。その中の対戦相手がラツィオやフィオレンティーナ、アタランタなどの難敵ばかりだったことを考えれば、素晴らしすぎる成績だ。

 では、なぜミランは長く続いた暗黒期を抜け出すことができたのか。その主な理由は3つあると言えるだろう。

 まず今季に関しては守備陣の安定感が凄まじかった。ミランは決して得点力があるチームではないが、それでも安定してポイントを稼げたのは後ろがしっかりしていたからに他ならない。とくに、メニャン、トモリ、トナーリの貢献度は大きかった。

 しかし、やはり忘れてはならないのがカルルだろう。アレッシオ・ロマニョーリが不調、シモン・ケアーが長期離脱を強いられる中、彼の覚醒がなければミランのスクデットはなかったかもしれない。センターバックとしてあれだけのパフォーマンスを示したのは、ミランにとってビッグサプライズだった。

 そして2つ目はパオロ・マルディーニ氏、リッキー・マッサーラ氏、ジェフリー・モンカダ氏の存在だ。近年のミランは補強がことごとく当たっているのだが、その理由は彼らの“慧眼”に他ならない。彼らが能力を認めたテオ・エルナンデスやレオン、カルル、メニャン、トナーリといった選手は、今やチームには欠かせない存在。また若手だけではなく、ジルーやアレッサンドロ・フロレンツィといったベテラン選手も、チームに絶大な影響力を与えている。

 とくにミラン最高のレジェンドであるマルディーニ氏のフロント入りは、結果としてクラブを大きく変えたと言っていいだろう。サッスオーロ戦後にトナーリが「マルディーニは勝者。彼を見るとミランと勝利を思い出すんだ。素晴らしいマネージャーであり、人物でもあるよ。僕たち選手にとって、彼のような人たちが不可欠だ」と話していることからも、それは明らかだ。

 そして3つ目は、やはりイブラヒモビッチの帰還である。圧倒的なカリスマ性を持つ同選手は加入後すぐにチームを変え、それまで結果が出ず苦しんでいた若手に自信を持たせるキッカケを与えた。それが近年のミランの勢いを生んだことは間違いない。勝負の世界を知り尽くしてきたイブラヒモビッチがいなければ、ここまでの強さは取り戻せなかったはずだ。

 サッスオーロ戦後にイブラヒモビッチは「俺は復帰記者会見でミランをトップに戻すと言った。多くの人が笑ったが、今ここにスクデットがある。多くの犠牲を払ったが不可能なんてない」とコメントしている。この勝者のメンタリティーこそ、若いミランイレブンをガッシリと支えていたと言えるだろう。イブラヒモビッチとは、ただの選手の枠には収まらない存在なのである。

 スクデット獲得という形で、ミランはようやく暗黒期を抜け出した。ただもちろん、ここが終着点ではない。その先のセリエA連覇、そしてCL優勝に向けた歩みはここからスタートする。

(文:小澤祐作)

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