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アーセナルはなぜ苦戦しながらも勝てたのか? 開幕戦で主導権を明け渡した原因と完封勝利の立役者【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

冴えわたったヨアキム・アンデルセンのフィード



 ボールを失っても即時奪還を目指すアーセナルのカウンタープレスがハマり、試合開始直後のクリスタル・パレスはビルドアップに苦しんでいた。そこで打開策を見つけたのがCBのヨアキム・アンデルセンだった。同サイドのジョーダン・アユー、逆サイドのウィルフレッド・ザハを狙ったフィードが面白いように繋がり、そこから何度もチャンスが生まれた。

 一方のアーセナル、前半は繋ぐ意識が高く、特にジンチェンコが加わった左サイドのビルドアップは流動的でクリスタル・パレス守備陣をかなり苦しませていたが、時間が追うにつれて低い位置でのボールロストを恐れて次第に前線へのロングボールが増えるなど、相手にボールを渡してしまう展開が続いた。

 58分に190cm越えの大型FWジャン=フィリップ・マテタが投入されたこともあり、後半はアンデルセンからのフィードがさらに脅威となり、そのこぼれ球を拾ったザハやエベレチ・エゼのドリブルや連係から決定機も生まれた。

 両チームはどちらも後半にロングボールを前線に蹴ることが増えたが、アーセナルはどちらかというと「蹴らされた」ロングボールであり、クリスタル・パレスは「狙った」ロングボールという明確な違いがある。「蹴らされた」と「狙った」では、前線の選手たちの準備が変わってくるため、結果的にアーセナルはボールロスト、クリスタル・パレスは自分たちの攻撃の起点にすることができていた。

【次ページ】勝ち切れた要因は…

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